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第29話 現代ダンジョンの異変
しおりを挟む異変は、
数字として先に現れた。
◆
「……この被害報告、
おかしくないですか?」
探索者ギルド本部。
分析室。
雨宮かなえは、
タブレットを指でなぞりながら言った。
◆
「死亡率は低い。
でも――」
「負傷者の内訳が、
偏りすぎてる」
◆
ライムは、
画面を覗き込む。
◆
「回復役……
支援職ばかりだな」
◆
「ええ」
かなえは、
頷く。
「前衛や攻撃職より、
明らかに狙われている」
◆
「偶然、
とは言えない」
百瀬くるみが、
短く結論づけた。
◆
「魔物が、
学習している可能性がある」
◆
「……そんなこと、
今までなかっただろ」
佐野すすむが、
眉をひそめる。
◆
「普通は、
目についた相手を
襲うだけだ」
◆
「普通、
ならな」
ライムは、
静かに答えた。
◆
出動要請。
場所は、
都市近郊・第三十二ダンジョン。
◆
「中層以降で、
回復役が集中的に
狙われています」
◆
「支援職同行、
必須任務です」
◆
マリルは、
説明を聞きながら
小さく息を吸った。
◆
「……狙われる、
ということは」
◆
「俺たちが、
脅威だと
認識されたってことだ」
ライムは、
はっきり言った。
◆
ダンジョン内部。
空気が、
重い。
◆
「視線を、
感じます」
ひまわりが、
小声で言う。
◆
壁の影が、
不自然に揺れる。
◆
「来るぞ」
◆
魔物出現。
だが――
前に出ない。
◆
距離を保ち、
左右に散る。
◆
「包囲?」
佐野が、
驚いた声を上げる。
◆
「違う……
誘導だ」
ライムは、
マリルを見る。
◆
魔物の視線は、
明らかに
彼女を追っていた。
◆
「マリル、
俺の後ろ!」
◆
雷が、
空間を走る。
だが――
魔物は、
回避した。
◆
「……避けた?」
◆
「やっぱり、
学習してる」
くるみが、
歯噛みする。
◆
突然。
床が、
崩れた。
◆
「下から来る!」
◆
地下から飛び出した
魔物が、
一直線にマリルへ。
◆
「――っ!」
マリルが、
後退する。
◆
だが――
逃げない。
◆
「生命の流れを、
遮断」
◆
光が、
刃のように走る。
◆
魔物の動きが、
止まる。
◆
「今!」
◆
ライムの雷が、
落ちた。
◆
一体撃破。
だが――
まだいる。
◆
「数が……
増えてます!」
◆
「撤退準備!」
ライムが、
即断する。
◆
「深追いするな!」
◆
撤退中。
背後から、
圧を感じる。
◆
「……来る」
ライムが、
振り返った。
◆
そこにいたのは――
魔物ではなかった。
◆
“歪み”だ。
空間が、
ねじれている。
◆
「……境界反応?」
かなえが、
息を呑む。
◆
「まさか……
このダンジョン、
向こう側と――」
◆
「繋がりかけている」
マリルが、
静かに言った。
◆
「異世界の……
気配がします」
◆
一瞬。
向こう側の影が、
見えた気がした。
◆
それは、
ドラグではない。
だが――
同質の“意思”。
◆
「……引くぞ」
ライムは、
雷を放ち、
歪みを押し返す。
◆
帰還。
ギルドは、
緊急会議を開いた。
◆
「魔物の行動変化、
境界反応」
ギルドマスターが、
重く言う。
◆
「偶然とは、
思えません」
◆
「……始まってるな」
佐野が、
呟く。
◆
「第二章の終わり、
って感じじゃ
ないですね」
ひまわりが、
苦笑する。
◆
ライムは、
黙ってカードを見た。
――――――――
名前:ライム
レベル:62
職能:雷魔法士
称号:世界を守った存在
――――――――
◆
「……世界は、
まだ落ち着かない」
◆
だが、
恐怖はない。
彼には、
仲間がいる。
この世界で、
生きると決めた理由がある。
◆
ダンジョンは、
現代に適応し始めている。
ならば――
探索者も、
進化するしかない。
次の雷は、
試練ではない。
選ばれた戦場で、
鳴る。
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