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第1話 最底辺冒険者、今日もダンジョンを歩くだけ
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◆ 1.朝のギルドで
「相川ユウト、Fランク依頼の更新に来たぞー!」
朝のギルドは今日も冒険者で騒がしい。
パーティ勧誘、素材の持ち込み、クレーム、悲鳴……混沌の見本市だ。
その喧噪の中、ゆるい笑顔で受付に向かっていく青年がひとり。
彼が――Fランク冒険者、相川ユウト(19)。
「ユウトさん、おはようございます。……今日も散歩、ですか?」
受付嬢のミユキが苦笑しながら書類を差し出してくる。
「うん。ダンジョンの空気吸うとなんか落ち着くんだよね」
「……普通は緊張する場所なんですけどね」
Fランクがダンジョンに行くこと自体は容認されている。
だが無理は禁物だ。ギルドも何度も注意してきた。
「まあ、気をつけてくださいね。
昨日も“深層で休憩していたFランクがいる”って保安隊から連絡きて……」
「へえ、怖い人もいるもんだなあ」
「あなたのことです」
「え、俺?」
ミユキのため息が深い。
◆ 2.ダンジョン入口へ
ダンジョンゲート前は朝の冒険者ラッシュで混んでいた。
ユウトは群れから少し離れて、スニーカーの紐を結び直す。
「さて、のんびり歩きますか」
Fランクの証である青銅色カードをゲートにかざすと、光の膜が揺れて通路が開いた。
入った瞬間、ひんやりとした空気と弱い魔力の流れが肌を撫でる。
「やっぱ、この匂いが落ち着くんだよなぁ」
他の冒険者は武器を構えながら慎重に進む場所だが、
ユウトは散歩道の公園にでも来たような顔で歩き始めた。
その後ろで――。
ガサッ。
薄青色のスライムが飛び出してくる。
普通の新人なら焦る距離だ。
スライムはぷるん、と跳ねてユウトの頬へ一直線に――。
すっ。
ユウトが軽く横にズレた。
意図したわけではない。ただ、歩くリズムを変えただけ。
スライムは空を切り、そのまま後ろの壁にぶつかって弾けた。
「……あ、スライムいたんだ。気づかなかった」
相変わらずの無自覚。
◆ 3.迷宮の奥で
しばらく歩くと、小さな広場に出た。
天井の光苔が淡く光り、泉がぽちゃんぽちゃんと水音を立てる。
「お、いい場所じゃん。弁当食うか」
布を敷いて腰を下ろし、のんびりと弁当箱を開く。
中身は、昨晩の残り物と、ユウト自作の“ダンジョン産ハーブ入りおにぎり”。
「はー……最高だ」
彼がのんきに食べていると――。
ガタ……ガタン!
背後の通路で石壁が崩れ、巨大な影が姿を現した。
体長三メートル。漆黒の甲殻。赤い眼。
本来は中層ボスの護衛個体として出現するはずのモンスターだ。
〈グルゥ……〉
ユウトは振り返り、ぽかんとした。
「あれ、カブトさん? こんな浅い場所に珍しいね」
〈……?〉
敵意を向けられたのかどうか、モンスターの赤い眼が揺れる。
威嚇しようとして一歩踏み出すが――。
ユウトはその前に、おにぎりをひょいと差し出した。
「ほら、いる? ハーブ効いててうまいよ」
〈……〉
〈……グルゥ〉(おそるおそる受け取る)
食った。
その瞬間、甲殻の光沢が一段階増し、全身がぐるりと震えた。
魔力の波動が強まり、壁の苔がぱらぱらと落ちる。
ユウトは気にしない。
「やっぱり旨いよな、このおにぎり。素材がいいと違うわ~」
モンスターはおにぎりを平らげると、ユウトを見つめて頭を下げ、
どこかへ去っていった。
◆ 4.ギルドの騒ぎ
その少し後??。
ギルドの警報が鳴り響いた。
「重大報告! “中層守護カブト”が浅層に出現したとの情報あり!」
「しかも……誰かに懐いた形跡がある!!」
受付嬢ミユキは青ざめながら言った。
「これ、絶対ユウトさんだ……!」
◆ ◆ ◆
「まあ今日もいい散歩だったなぁ」
ユウトは鼻歌交じりに帰宅する。
まさかその影で、ギルドの調査班が大騒ぎになっていることなど知らずに。
―そして、ユウトの“まったり無自覚無双”は、さらに加速していく。
「相川ユウト、Fランク依頼の更新に来たぞー!」
朝のギルドは今日も冒険者で騒がしい。
パーティ勧誘、素材の持ち込み、クレーム、悲鳴……混沌の見本市だ。
その喧噪の中、ゆるい笑顔で受付に向かっていく青年がひとり。
彼が――Fランク冒険者、相川ユウト(19)。
「ユウトさん、おはようございます。……今日も散歩、ですか?」
受付嬢のミユキが苦笑しながら書類を差し出してくる。
「うん。ダンジョンの空気吸うとなんか落ち着くんだよね」
「……普通は緊張する場所なんですけどね」
Fランクがダンジョンに行くこと自体は容認されている。
だが無理は禁物だ。ギルドも何度も注意してきた。
「まあ、気をつけてくださいね。
昨日も“深層で休憩していたFランクがいる”って保安隊から連絡きて……」
「へえ、怖い人もいるもんだなあ」
「あなたのことです」
「え、俺?」
ミユキのため息が深い。
◆ 2.ダンジョン入口へ
ダンジョンゲート前は朝の冒険者ラッシュで混んでいた。
ユウトは群れから少し離れて、スニーカーの紐を結び直す。
「さて、のんびり歩きますか」
Fランクの証である青銅色カードをゲートにかざすと、光の膜が揺れて通路が開いた。
入った瞬間、ひんやりとした空気と弱い魔力の流れが肌を撫でる。
「やっぱ、この匂いが落ち着くんだよなぁ」
他の冒険者は武器を構えながら慎重に進む場所だが、
ユウトは散歩道の公園にでも来たような顔で歩き始めた。
その後ろで――。
ガサッ。
薄青色のスライムが飛び出してくる。
普通の新人なら焦る距離だ。
スライムはぷるん、と跳ねてユウトの頬へ一直線に――。
すっ。
ユウトが軽く横にズレた。
意図したわけではない。ただ、歩くリズムを変えただけ。
スライムは空を切り、そのまま後ろの壁にぶつかって弾けた。
「……あ、スライムいたんだ。気づかなかった」
相変わらずの無自覚。
◆ 3.迷宮の奥で
しばらく歩くと、小さな広場に出た。
天井の光苔が淡く光り、泉がぽちゃんぽちゃんと水音を立てる。
「お、いい場所じゃん。弁当食うか」
布を敷いて腰を下ろし、のんびりと弁当箱を開く。
中身は、昨晩の残り物と、ユウト自作の“ダンジョン産ハーブ入りおにぎり”。
「はー……最高だ」
彼がのんきに食べていると――。
ガタ……ガタン!
背後の通路で石壁が崩れ、巨大な影が姿を現した。
体長三メートル。漆黒の甲殻。赤い眼。
本来は中層ボスの護衛個体として出現するはずのモンスターだ。
〈グルゥ……〉
ユウトは振り返り、ぽかんとした。
「あれ、カブトさん? こんな浅い場所に珍しいね」
〈……?〉
敵意を向けられたのかどうか、モンスターの赤い眼が揺れる。
威嚇しようとして一歩踏み出すが――。
ユウトはその前に、おにぎりをひょいと差し出した。
「ほら、いる? ハーブ効いててうまいよ」
〈……〉
〈……グルゥ〉(おそるおそる受け取る)
食った。
その瞬間、甲殻の光沢が一段階増し、全身がぐるりと震えた。
魔力の波動が強まり、壁の苔がぱらぱらと落ちる。
ユウトは気にしない。
「やっぱり旨いよな、このおにぎり。素材がいいと違うわ~」
モンスターはおにぎりを平らげると、ユウトを見つめて頭を下げ、
どこかへ去っていった。
◆ 4.ギルドの騒ぎ
その少し後??。
ギルドの警報が鳴り響いた。
「重大報告! “中層守護カブト”が浅層に出現したとの情報あり!」
「しかも……誰かに懐いた形跡がある!!」
受付嬢ミユキは青ざめながら言った。
「これ、絶対ユウトさんだ……!」
◆ ◆ ◆
「まあ今日もいい散歩だったなぁ」
ユウトは鼻歌交じりに帰宅する。
まさかその影で、ギルドの調査班が大騒ぎになっていることなど知らずに。
―そして、ユウトの“まったり無自覚無双”は、さらに加速していく。
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