最底辺冒険者のまったりダンジョン散歩

塩塚 和人

文字の大きさ
3 / 10

第2話  Fランク、ダンジョンで迷子を拾う

しおりを挟む
◆ 1.ギルドの大騒ぎの翌朝

翌朝。
ギルドはまだ昨日の“浅層に中層ボスが出た事件”でざわついていた。

「犯人は絶対近くにいるはずだ!」
「モンスターを懐かせるなんて、どんな裏技を……」
「誰か変なことした奴はいなかったか!」

そんな中、ユウトはのんびりと受付に向かう。

「おはよー。今日も散歩してくるねー」

受付嬢ミユキ
「……あなた、本当に何もしてないんですよね?」

ユウト
「うん。おにぎり食べてただけ」

ミユキ
「その“だけ”が一番危険なんですよ!!」

ギルド職員が一斉に振り返る。

「おにぎり!?」
「まさか、モンスターに与えたのでは!?」
「料理スキル使いの冒険者か!?」
「捕まえろ!!」

ユウト
「えぇ……なんで?」

◆ 2.今日もダンジョン散歩へ

逃げるようにダンジョンへ向かったユウト。
ゲートを潜っただけで、外より落ち着くのだから不思議な男だ。

「はぁ……やっぱ静かで良いなぁ」

そう言いながら歩いていると、背後から小さく震えた声が聞こえた。

「……ひ、ひぃ……た、たすけ……」

「ん?」

振り返ると、
青いマントを羽織った少女が通路の隅で震えていた。

年齢はたぶんユウトより少し下。
顔は泥だらけ、髪はぼさぼさだ。

「大丈夫? 迷子?」

少女は震える声で叫んだ。

「ち、ちかづかないでっ! あなた……モンスターよね!?」

「え、俺が? 人間だよ?」

「だ、だって……! さっきスケルトンがあなたを見た瞬間、逃げていったの……
 も、もう……見たことないくらい全力で……!」

(あー、また何かやっちゃったのかな)

ユウトは心の中でため息をついた。

◆ 3.とりあえず保護

「とにかく、安全な場所まで案内するよ。ほら、立てる?」

少女は警戒しながらも手を取る。

「……わ、私はミナ。Fランクで、初めてのダンジョンで……」

「あー、初心者か。じゃあ余計に怖かったよね」

「う、うん……。あの……あなた、本当に人間……?」

「しつこいなぁ。ちゃんと血も通ってるよ」

ユウトが手をひらひら振った瞬間――。

ドゴォォォン!!

通路の奥で爆裂音が響く。
大男の冒険者たちが逃げながら叫んでいた。

「ヤバいぞ! Bランク武闘熊(ベア)だ!!」
「なんでこんな浅層に!? 誰か怒らせたのか!!」
「だ、誰だ!? ベアの縄張りにおにぎり置いた奴は!!」

ユウト
「あ……昨日の余り、置きっぱなしだったかも」

少女ミナ
「犯人……あなたじゃない!!」

◆ 4.武闘熊との遭遇

次の瞬間、通路の奥から巨大な影が現れた。
筋肉の塊、岩のような肩、裂けた牙。

〈グオオォォ!〉

冒険者たちは悲鳴を上げて逃げる。
ミナは震えながらユウトの背中に隠れる。

「あ、ベアさん。昨日のおにぎり、やっぱ気に入った?」

〈……グル〉(頷く)

ベアがユウトの足元に座り込む。
巨大な熊が“おかわり”の顔をしている。

「……可愛いなぁ。はい、もう一個」

〈グルッ〉(嬉しそうに受け取る)

周囲の冒険者
「可愛いじゃねぇよ!!」
「なんでベアがペットみたいになってんだよ!!」
「おにぎりひとつでBランクが懐くな!!」

少女ミナ
「……すごい……。なにこの人……」

ユウト
「え? ただのFランクだけど?」

ミナ
「ど、どこが!?」

◆ 5.ギルドに帰還

その日の夕方、ギルドに戻ると――。

ミナ
「こ、この人に助けてもらいました! 命の恩人です!」

ギルド職員
「ユウトさんが!? Fランクのあなたが!?」
「いや、その……どうやって助けを……?」
「まさかまた“おにぎり”ですか?」

ユウト
「うん」

職員全員
「やっぱりか!!」

ミユキ
「……あなたの危険度、Aランクより高い気がします」

ユウト
「えぇ……」

少女ミナはキラキラした目でユウトを見つめていた。

「ユウトさん……弟子入りさせてください!!
 わ、私も……ダンジョンで散歩できるくらい強くなりたいです!」

「いや、散歩できるようになるのに強さいらないよ?」

「……この人、“自覚”がない……!」

◆ ◆ ◆

こうしてユウトは、
なぜか“弟子希望者”を連れた状態でダンジョンに通うことになる。

もちろん本人は、
自分がギルド内の要注意人物に認定されたことなど
露ほども気づいていない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...