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こりゃ終わったな。特殊部隊の銃撃を避けるすべがなくなった。
よし、奇跡を待とう。この世界でツいているということは、今までの経験から実証済みだ。いや、カレンを敵に回したのはかなり運が悪いとも言えるが………。

とにかく、俺はそう簡単に死ぬような体の構造になってないのだ。

「……フフフフ、ハハハハハハ」
ほら、また変なのが来た。これで俺は助かったも同然だ。

「君達は全く面白いねぇ。ほぼ全員が稀有の特殊能力を持っている。追い詰めるのに苦労するわけだよ」
……ボスっぽい人だな。

「誰だ」
「私の名前は前川 弘。娘の楓がお世話になったようだね。いや、君からするとカレンか……。うん、ピーマンに比べたら、なかなかセンスあると思うよ。おい、カレン、出て来なさい」

弘がそう言うと、その背中からおずおずとカレンが顔を出した。父親にピッタリ隠れていたらしく、今の今まで全然分からなかった。凄い。

「最初は君を殺して、その事実を揉み消すことにしていたのだがねぇ。考えが変わったよ。君達、私と手を組まないか?」

なんか言い出したぞ。

「……手を組む?」
「そう。協力するってことさ。分かるだろ?」
「どうして?」
「うん、理由はね、やっぱりその技だよね。君達みたいに強力なのは、国中探してもなかなかいないと思ってたんだがね」
「まさか、ミスターエックスをやっつけちゃおうの会は……」
「そう。隠れた人材を発掘しようと私が考えたものなんだよ。と言うことは、ミスターエックスは私の指導する組織ってことになるね。ハッハッハッハッ」

おぉう、ミスターエックスの頭領が自分から名乗り出てきたぞ。大丈夫かよ。

「ところで、そこのお二人は転移者だそうじゃないか。つまり特殊能力は持ってないんだよねぇ。だから……」

ジャキッ
小さな黒い銃が俺に向けられた。するとすぐさま、協会長が庇うように出てくる。

「…ハハハ、冗談だよ。ピーマン君は強い人を引きつけてくる才能があるようだし、コソ君は術を使えないながらに今まで警察から逃げきってきた優秀な人材だからね。キョウカ君の特殊能力はまだ見ていないが、やはり相当なものを持っているような気がする。全員、私が欲しいと思っている力を十分に秘めている」

ククク、と笑いながら、弘はカレンを前に突き出してきた。

「…もう一度言おう。私に協力してくれ。カレンには今ここで頭を下げさせるから」

そう言われて、カレンはハッと目を見開き、父親を睨みつけたが、すぐに前を向き直る。

「………さぁ」
彼は両腕を広げる。

「やめときなよ。この人、人使いが荒いし」
「シッ、聞こえちゃうよ」
横の方でコソコソと喋り声が聞こえた。
いや、俺だって断りたい。でも、断ったところで、って感じなんだよなぁ。
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