能力なしの転移は人運でどうにか

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「……お呼びでしょうか」
「呼んでねぇよ」
いつの間にか後ろから受付の人が覗き込んでいた。

「…その通りです」
「何がだよ」
「セナ様の能力判定をした時、天井から63kgのダミー人形が落ちてきたんです。だから、『惰眠』と分かりました」
「…………」

ダミーニンギョウを縮めてダミン、だって？

俺は首をブンブン降ってペンを持った。
『身体強化』

ほどなくして、字が消え、説明が出てくる。

『身体強化
身体能力を上げる。いくつか段階がある。
透明の玉に手を乗せると、玉の内部が白く光り、たまに玄関のチャイムが鳴って新鮮な鯛が京香というアルバイターによって運ばれてくる、という反応が見受けられる』

？？？？

「…その通りです」
「は？」
「あの人も測定をしたことがあるんです。すると、玉の内部が白く光りました」
「それは俺も見たよ。玉が割れたのも見れた。でも、新鮮な鯛って何だよ」
「私はその場に居合わせることができましたよ。だいぶん前ですが、何度目かの測定中に協会のチャイムが鳴り響きました。私が戸を開けてみると、そこには配達物を持った女の人がいまして、その名札には『京香』と」
「新鮮な鯛を届けにきたのか？」
「ええ」
「頼んでたのか？」
「いいえ。結局、彼女は『届け場所を間違えました。すみません』と言いながら戻って行きました」

マジかよ。どういう仕組みなんだ？
京香は何者なんだろう。スパイか何かだろうか。
それにしても、新鯛京香……身体強化…・・。
秋も深くなり、肌寒い季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

『…おいピーマン！いるんなら返事しなさい！！』
「えへぇはいっ！！」
唐突に手の中の本から叫ばれたので、俺は返事はしたものの、それを落っことしてしまった。

『……連絡を気長に待ってたのに遅過ぎじゃない？！』
「か、カレンか……」
『何よ！私じゃ嫌なの？』
「俺、そんなこと言ったか？」
『…お嬢様、では私が代わりに出ましょうか？』
『あんたは黙ってなさい！！』

………もしこの光景を誰かが見てたら通報されそうだ。…あっ、でも、俺は警察のトップクラスの奴らと戦ってたんだっけ。じゃ、大丈夫だな。

『ピーマン！あんたは人材集めしか能がない男なんだからしっかりしてよ！早く一人くらい捕まえてみせて！』
「人材集めの能力があったら十分だろ」
『だから、今すぐ街へ出かけてそこら辺の子をかっぱらってきなさい！』
「そんな子に才能があると思うか？一般人だぞ？」
『隠れた技を持ってるかもしれないでしょ！』
「無茶な」

俺が笑って拒否しようとすると、髪の毛を引っ張られた。

「いでででで……」
「『さらって来い』って言ってんの！」

カレンは後ろ髪に体重をかけて俺を倒す。

「…分かった？」
「………そこにいるならわざわざ本から話しかけてくることないだろ」
「返事だけしとけば良いのよ！バカァ！！！」

スパーン！と張り手が飛んだ。全くもって意味不明。