夏期床の草 完

1

私は、こんな、うだるような夏は嫌いだ。
汗が吹き出るようにして出てきて、水の量は減っていき、シャツの下のベトベトで全身がむずがゆい。
私はそんな中歩いて友達の家に向かう。
今日遊ぶ約束のその家は、街の中の方にあって、人も多い。
「弱っちゃうんだよなあ」私はつぶやきながら歩く。
こんな暑苦しい中、多くの人とすれ違うことは、全く気持ちの悪いものだ。
友達の家に着くと、私はゆっくりチャイムを鳴らした。
ピンポーンという音が、少しだけ私の背筋を伸ばす。
友達のキコはすぐにでてきて、私に「入って入って。うっわ、汗べっとべとじゃん」と促してくれる。
その言葉に押されるように家に入った。
クーラーはいい程度に効いていて、私は「生き返るわあ」と腰を下ろした。
「まあそんなに汗かいてたらね。私なんか寒いくらい」
「なにそれ。夏に寒いなんて、贅沢」
そんなことを話しながらうだうだと時間を過ごす。
「えっとお、今日はここに泊まるんだっけ？」
「うん、そう。」
「親は？」
「家でのんびりしてるはずだよ」
「うっそお。仕事あるでしょー？」
「まあね」
ピンポーンとまたチャイムが鳴る。
「あ、やっば」と言いながらキコは玄関に走る。
男子が三人入ってくる。
私は驚いて、「え、みんな泊まるの？」と聞くとキコは「そうだよ」となんでもなさそうに返す。
私はキコに近づいて小さな声で「聞いてないんだけど」と苦情を吐く。
「いいじゃん楽しくて」
「いやいやいや、なんで男子よ」
「なんだっていいでしょ」キコは意味ありげに目尻を笑わせた。
何か、ある。
私はそう直感した。
しかし、それが何なのか、さっぱり分からない。