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「っはあ、はあ、やっと着いたか…」
俺は今山の上だ、やっほー。
続くやまびこは無い。これ程までに小さな山だとやっぱりダメか?

久しぶりにここに来た。
小さい頃、と言っても二、三年前まではよく来てたんだけどなあ。
小学校も卒業して、別れた友達もいるし、それにこの頃は何だかみんな走ったりする事に乗り気じゃないからなあ。
一人で実行することは、やっぱり少し気が引ける。寂しい。

それでもここまで来たのだ。
低い低いといくら言われたって、山だ。だいたいそんなこと言う奴のほとんどは、登ったことすらないと知っている。

ここまで青い雲にツンと香る風。光る太陽に緑の草木。
いいだろう、いいだろう?
俺は深呼吸を一つしてまた歩き始める。
確かにここが最も景色がいい。でも、てっぺんとは言えない。

俺は木陰の中にすっぽり入ってしまう。涼しいし、さわさわという音が心地いい。
苔の生えた石階段を踏みしめる。
この上に、ほら、鳥居が見える。
久しぶりのそこは、少し湿っていて、俺の疲労も大きかった。

「ふー」
俺はぺたんと尻を地面につけた。
木漏れ日がおかえりなさいと言っている。
「ただいま」俺は空に呟いたあと、くすぐったくて笑ってしまった。
光はやっぱり優しい。

鳥居の奥には小さな祠がある。
そこには特別なものも、何もない。
でもこれがいい。神社なんかが建っていたら、好感が薄れそうだ。なんでだろうなあ。

俺はその祠に触れて、山を降りようと思った。
手に触れたそれは、ひんやりとして、俺は身震いした。
そして帰ろうと手を離したとき。
ぐいと俺の手に力が加わる。
見れば、いつもきっちり閉まっているはずの祠の扉が開いていて、そこから黒い手がにゅっと俺を掴んでいたのだ。
「わわっ、何こっ…」
俺は何か言い終える前に、黒い手に引きずり込まれていた。
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