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千鶴が倒れた。
ナンダナンダと思うと軽い熱中症らしい。
入道雲の下で働いてるからだ。

おじいさんは「こんなもん、放っときゃ治らあ」と言い、また実際その通りだったのだが、俺は始終千鶴の裾に抱きついて泣きじゃくっていた。
一時間も眠ってるともう元気だという。
俺に「ありがとうよ」と言ってまた仕事を再開する。
ただそれだけのことだった。

ザアアッという激しい音が聞こえる。
ゴロゴロゴロ…ピシャン
「あ、こりゃいかんわ」千鶴は大急ぎで外に飛び出る。
洗濯物も干してあるし、畑も、泥が跳ねないように?よく分からないが準備が必要ということだった。

俺はなんとも変に気まずくて晴れてすぐにしずくのしたたる道を駆け出した。
途中で派手に転んだ。
それでも立って走り続けた。
木、木はあそこだ。
俺が到着しても花はいなかった。

まあ、あんな雨の中はさすがにいないか。
俺は苦笑する。
子供の苦笑だぞ。えへん。

「ああ、早いんだな」花の顔がひょこっと出る。
「ハナ!」
「おう、桃太郎。で、何の用?」
俺は手をひらひらさせながら「なあんにもナイ」と答えた。
「ふうん?」花はこちらに近づいてくる。

「よし、じゃあ今日は向こうの山の方まで行くか?」
「え、なんで?」
「理由?なあんにもナイ」花は俺の真似をして手を引いてくる。
綺麗な手だな、と思う。
いつも黒ずんでいるけれど、爪も伸びているけれど、それでもいいと思えるほどに、惹きつけるものがあった。
なんだろう。俺はそれが、脱力して俺の手をゆったり握っている花の力加減にあると気がついて、なぜか顔が赤くなる思いがした。
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