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すっかり食べ尽くした後で、ボスが歩み寄ってきた。
「ご馳走になった。それで、だな。お前はどうしてこんなところにいるのだ。ここらの住民ではあるまい」
「いかにも。俺は、鬼退治に行くのだ」

ボスが少し首をかしげる。
「お前のように小さな奴が『俺は』などというとなんだかおかしいような気になるな」
「そう?やっぱまずい?」
「いやいや、これは結構結構」
ボスが笑う。
「うむ、気に入った。俺も連れてってくれ」

「ちょ、カシラ!あんまりと言えば!」子分たちが反対する。
それを横目に見て、ボスは俺に「どうだろう。こいつらに何日か分の食べ物を分けてやってはもらえんだろうか」と聞いてきた。

冗談じゃない。俺は節約主義者なんだ。でもガタイのいい犬がいるとずいぶん心強いのも確かだ。うーん、どーしよ。
俺は悩んだ。悩んだが、いい方法を思いついた。
「よし、分かった。」

俺はキビダンゴを一つ取り出して土に埋めた。
周りのみんなは何が始まるのかと見ているが、これだけだ。
「よし、今、キビダンゴを植えた。あと何日かしたら、いや、あと二日で、キビダンゴの実がなるので、それをもいで食べて欲しい」
俺がそう言うと、みんなオーと言って感動していた。

騙すのは気がひけるが、ま、いっか。
俺はボスとキジを連れて、頭を地面に擦り付けてありがたがってる子分を背中に受けて坂を降りだした。
もう、海が向こうの方でちらちら揺れる。


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