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「な、中の様子は?」
「いる、いるよ。人だ。中からカンヌキが掛かってるよ。どーする?」
「う、開けてくれ」
「よし」

キジは、壁の上にすまして立つと、その後落下するように飛んで行った。
ガチ
音がする。

「今だよ」ボスが唸るように言う。
そんなこと分かってる。
俺は返事をする代わりにその小さな体の全体重を前にかけて頭まで門に引っ付けて押した。

ギギギ
俺が門を開けている時。
バァーンと音がする。
まずい!銃声だ!キジ!

俺はわずかに開いた隙間に体をねじ込むようにして門をすり抜ける。
ああ、遅かった。
キジはヒックリがえって地に落ちていて、背中から煙が細く上がっている。

と、脚をバタつかせ出した。
そうか、よし、背中だな?セーフだ。それはセーフだ。
背中にはまだキビダンゴガードがひっついている。
そのままではこの食いしん坊はガードを食いつくしてしまうと思っていたが、背中についているものは自分にもどうしようもないらしい。好都合だ。首は背中までは届かないのだ。

さて、俺は前を見据えた。
そこには薄黒く汚れて、ヒゲも髪も無茶苦茶で、裸の男たちがいた。
手にはまた、汚い酒を下げている。
顔は異様に赤い。
酒を飲み過ぎてるのだ。
「これが赤鬼…」俺は驚いてしまった。

そうしている間にその人達は銃を構え出した。まずい、このままでは。
ばっとみんな飛び出した。
ボスは尻に噛みつきに、キジは頭を突っつきに、ハナは顔を引っ掻きに、俺はダンゴを投げつけに走ったのだ。

しかし効果はなかった。
まずボスの歯やキジの嘴、ハナの爪よりその人達の皮膚の方がよっぽど硬かったのだ。
カピカピで、特にハナの引っ掻きなどは気持ち良くなってしまっている。
一撃お見舞いするごとに少し汚れを取るのだ。
おかげでキジの自慢の嘴はたちまち真っ黒になるし、ボスは鼻を押さえてのたうちまわり、ハナは相手に引っ張りだこだ。
俺はというと、これまた好評で、「こんなもの食ったことねえ、いつぶりなんだ、ちゃんとした飯は」とか言いながらばくばく食べている。

いい具合に体の痒いところを掻いてもらって、それに食べ物までもらうんだから、さぞかし満足だろうよ。

「ふー、満足、満足」そう『鬼』達は言った。
「ああ?でももう終わりか?」
俺たちはもうすっかり戦意喪失してしまっていた。
もうどうにでもなれといった感じだ。

「もう用済みなのか、しゃあねーな」
鬼達は銃を構える。
ダメだ、やられる。

俺はとっさの判断でキビダンゴガードを一瞬でピラミッド型に積んだ。
銃弾が次々ガードに突き刺さっていく。

「なっ」鬼が驚愕してる。
俺は得意になる。
「どーだ、参っ…」
ちょっと前を見れば鬼は必死の形相で飛んでくる。
は、早い!もう反撃に…

鬼はものすごい勢いでキビダンゴを頬張り始めた。
「ああ!そゆこと!ダメダメ!これ無くなっちゃう!」俺はもおっと速いスピードで片づけた。

鬼は不服そうだ、ブーブー言っている。
「なんやなんや!くれるんとちゃうんかーい!」
かー、俺こいつら倒せねーわ。強すぎるというかなんというか。


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