裁縫の御所

Nick Robertson

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14あ

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私はしかし何か気にかかりました。
おかしい。
何かがおかしい。
そうです、何故アンコウは、口で息をするなんて奇抜なことを考えたのでしょう。
確かに生きたかったのでしょうが、他のみんなはどうすれば良いか分からなくなって死ぬのに。
どうして。
私は猫に頼んで引き返しました。
泉を見つめます。
そういえば、塩辛かったような…海に通じているのかもしれない。
私はそう考えました。
私はもういてもたってもいられなくなってざぶんと飛び込みました。
下へどんどん潜ります。
やはりありました。
穴です。
私はタチを思いながらくぐりました。
向こう側はそれは広い海です。
私は目を見張りました。
大きな渦が巻いています。
私は元をたどりました。
そこには裂け目がありました。
大きな大きな裂け目はその空間から物をひきづりだしてめちゃくちゃにするのです。
早くしなければ空間が破壊されるところだった。
私は早速閉めようとしましたが、空間から出て行く力が強すぎます。
ややもすると、私まで外に放り出されてごみくずになりそうです。
私は決心をして、大きく息を吸い込みました。
それはあんまり凄かったので、出て行こうとしていたものは全てこちらに流れ出しました。
空間の外にあるものも引き寄せようとしましたが、外に出た途端いろんなものに混ざり合ってごちゃごちゃになるようで無理でした。
そこで私は息を吸い込みながら蝶々結びをしっかりして息を今度はぶくぶくと吐き出しました。
先ほどまで大量に吸い込んでしまった海水もみんな出しました。
そうして穴から戻ってきました。
アンコウはあの渦から呼吸法の着想を得ていたのでした。
私はやっと安心して猫に乗って進みます。
肩の傷はもうすっかり治ったようでした。
横を歩いていた猫が不意に「ひたい」と言いました。
私は額を触りました。
するとどうでしょう、なんだか丸い穴がぷつりと開いて、そこから眩いばかりの光が溢れているようなのでした。
私が感じ入っていると、起きなさいという声がしました。
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