我儘女に転生したよ

B.Branch

文字の大きさ
42 / 50

散策終わり

「と、とまらない、、、」

「そうだね、こりゃあ、やめられないね」

「サクサクです!」

「う、美味い!俺こんなに美味いもの食べたことないよ!カール、お前あるか?」

「ある訳ないだろ!ああ、俺、旅に着いてこれて本当に良かった!ケーキといいコレといい美味すぎる!」

小隊長、市場のおばあさん、そして、ヴィアベルや騎士達が、口々に感想を述べながらも目の前のお菓子に伸びる手はとまらない。

皆、気に入ってくれたみたいで良かったです。
今私達は、図々しくも市場のおばあさんの家に押しかけている。
こっそり護衛として着いてきていた騎士のドミニクとカールも合流し、即席の試食会が開催されている。

小隊長や騎士達は私服の為、あまり仰々しさはないが、おばあさんは少し気後れしているようだった。
幾ら私服と言えども、彼らの物々しい雰囲気は隠しきれていなかったので、仕方のない事ではあった。

そんな気後れも、お菓子を一口食べた途端吹き飛んだようで、皆で同じお皿を突きつつ、我先にと口に運んでいる。
皆、笑顔で「美味い。美味い」と言い合って和気藹々とした様子が微笑ましい。
それにしも、カール、、、旅の喜びがお菓子なんですね。しかも小声でフラクスブルベ家の家臣になれて良かったって呟いてたし。公爵家に勤められた喜びはそこじゃないような?まあ、いいですけどね。

今食べているエビせんはおばあさんが作ってくれました。
後で私が調理した事がばれたら(ベルタに)怒られそうなので、私は手順を説明するに留めた。
と言っても工程は至極簡単で、刻んだ干しエビと小麦粉、塩、水を混ぜてこねる。そして、適度なサイズに切って揚げるだけで完成だ。

「それにしても、あの雑魚がこんなに美味いものになるとは驚いたよ!あんた凄いね」

おばあさんが感心したように言う。

頼まれてもいないのに押しかけて迷惑を掛けましたが、喜んでくれいるようで良かったです。
何処からともなく現れたドミニクとカールを見た時は、おばあさんの不審度マックスでしたからね。街の警吏とか呼ばれなくて良かったです。本当。

「ありがとうございます。因みにこれはスープなどに入れても美味しいですよ」

「そうなのかい?じゃあ、やってみるよ!」

おばあさんと会話していると、スカートの裾がツンツンと引っ張られた。
見下ろすと、可愛いヴィアベルの円らな瞳がこちらを見上げている。

「お母様、あ!さん、お菓子、なくなっちゃいました」

机の上のお皿に目を向けると、ヴィアベルの言う通りお皿は見事に空っぽになっていた。
騎士達は名残惜しそうに塩味の付いた指を舐めている。

「あら、本当ね。じゃあ、そろそろお暇しましょうか。おばあさん、突然押しかけてご迷惑をお掛けしました」

「いや、こっちこそ美味いもの食べられて感謝してるよ。また店に寄っておくれ」

「はい、失礼します」

「おばあさん!またね!」

私が軽くお辞儀をすると、ヴィアベルは元気におばあさんに手を振った。
笑顔のおばあさんに見送られ、私達はまた散策に戻ろうと広場に向かった。

「あれ?ドミニクとカールはまた隠れちゃったの?」

「ええ、私達を守ってくれているのよ」

彼らは人混みに紛れ、私達に近付こうとしている不審者やスリなどを事前に発見し、排除してくれている。

「また、お礼にお菓子をあげないといけませんね!」

「そうね、料理長に作り方を伝えておきましょう。でも、とまらな過ぎて食べ過ぎるのも良くないので、注意しておかなくちゃいけないわね」

塩分の取り過ぎは体にあまり良くないですからね。
大量の塩が入っている訳ではないけれど、食べ過ぎたら腎臓とか血圧とかに良くなさそうです。
騎士達を早死にさせたらクリストハルト様に叱られてしまいます。

それに、何だか騎士達って肉ばっかり食べていそうなイメージですし。
そこにジャンクフードを加えたら、確実に成人病に真っしぐらな気がします。
まあ、運動しているから大丈夫なのかも知れませんが、野菜も摂るように言った方がいいですね。

「兄さん、お野菜は好きかしら?」

「は?い、いや、あまり好きではないかな」

ですよね!だと思いました!
よし、では、騎士達への感謝の気持ちは野菜を美味しく食べさせる・・・事にしましょう!
え?頼んでない?ありがた迷惑?そんなはずないよ!喜ぶよ!、、、多分?

「兄さん!私に任せてくださいね!」

「え?いや、何が、、、」

私は力強く小隊長に向かって頷いた。

小隊長は訳が分からないながらも、嫌な予感がするのか、戸惑いと不信が混じったような表情を向けてくる。
小隊長!大船に乗った気持ちで任せてね!泥舟じゃないよ!悪しからず!

王都に帰ったら、料理長と色々相談しなければいけませんね。
マッチョな男の人が好きな野菜ってなんだろう?サラダや野菜ジュースが好きだとは間違っても思えない。
ん~、悩みますね。旅の間、ゆっくり考えてみましょう!まあ、無理なら無理やり食べさせればいいだけだし!問題ないよね!フッ!

「ミ、ミリィ?何だか笑顔が怖いのだが、、、」

小隊長がこちらを見て、顔を引きつらせている。

おっと、失礼。善い行いをしようしているのに、なぜか悪巧み顔になっていたみたいですね。不思議です。

は!ヴィアベルにも見られた!?
ハッとしてヴィアベルを見ると、市場に夢中でこちらは見ていませんでした。ああ、良かった!お母様、怖いとか言われたら泣いちゃいますからね!立ち直れません!

「兄さん、何が怖いのですって?」

「い、いや、すみません」

私が取って置きの聖女スマイルを向けると、小隊長からはなぜかさらに怯えた表情が返ってきました。
なぜに?WHY?慈愛に満ちてたでしょ?

「と、ところでそろそろ帰った方がいいのではないかな?調理などしていたので、かなり予定よりも遅くなっているようだ。ベルタ殿も心配しているだろう」

「あら、そうね。ヴィ、そろそろ帰りましょう」

「はい、、、また来れますか?」

ヴィアベルが名残惜しそうに広場を眺める。

「ええ、次を楽しみにしましょう」

「はい!今日は楽しかったです!」

そうですね!ヴィアベルと散策できて楽しかったですし、今日はいい拾い物もしました。
干しエビもですが、ワカメ料理の事を思うと、楽しみで仕方ありません。

ワカメサラダの事はお祖母様にもお教えしなくてはなりませんね。
ワカメは低カロリーですし、栄養素も豊富だと思います。しかも、食物繊維も豊富なので、美と健康に良い食材と言えるでしょう!

お城の料理長に伝えれば、喜んで調理してくれるでしょう。
お祖母様のお陰でサラダは今貴族の間で人気の食べ物になっているようですし、ワカメサラダもきっと受け入れられて人気が出ると思います。

あ、でも急に人気が出て皆が買い求めようとしたら、漁師さん達が混乱しちゃうかな?
ここは先にベッカーに伝えて漁師さん達に迷惑が掛からないように調整してもらった方がいいかも知れません。
大店おおだなのベッカー商会ならお手の物でしょう。儲け話にベッカーがニヤリと笑う顔が想像できますね。
まあ、貴族には高く売りつけてもいいですが、漁師さん達からは暴利を貪らないように釘を刺さないといけませんね。市場のおばあさんが困るので独占もやめてもらいましょう。

そんな事を考えながら歩いていると、程なく私達の泊まっている宿が見えてきた。

「奥様!ヴィアベル様!」

宿に入ると、心配そうなベルタが迎えてくれる。

「ただいま、ベルタ。変わりなかったかしら?」

「はい、こちらは特に問題ございません。奥様もヴィアベル様もご無事そうで安心いたしました」

「ありがとう。こちらも特に問題なかったわ」

私がそう言うと、小隊長と騎士達がちらりとこちらを見た。

何?私が何か嘘でも言いましたか?言ってないよね?
特になんのトラブルもなく順調で楽しい散策だったと思います。でしょ?
ヴィアベルも満足そうで言う事なしです。

「、、、カール?服に何か付いていますよ」

ベルタは私達を不審そうに見た後、カールの服に付いた何かのかけらに目を移した。

「え?あ!これは、、、」

カールが自分の服に付いているものの正体に気付いて固まってしまう。

「よく分かりましたわ。皆様からよーくお話をお聞きしなければならないという事が!お話はお部屋に行ってゆっくりといたしましょう。ゆっくりと」

私と騎士三人の今の心境は確実に「全くゆっくりしたくないです!」というものだったが、逃げ出す訳にもいかず、とぼとぼと部屋に向かうしかないのでした。
私を止められなかったのは仕方ないにしても、嬉々としてお菓子を完食した彼らに明日はあるのでしょうか?

それにしても、ベルタは目ざと過ぎます!
服に付いた小さなお菓子のかけらに気付くなんて!小姑って言われちゃうよ!
ヒッ!ベルタの背中から負のオーラが!?
荒事が得意なはずの騎士達もビクッとしています。

駄目だよ、ベルタ!そんな事じゃ、婚期逃しちゃうよ?ルーヘンが嘆きますよ。
ヒッ!も、もう余計な事は考えません!はい!

あなたにおすすめの小説

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。