木の実と少年

B.Branch

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第1章

親になりました。

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私(黄金の実)は黄金だけに輝いている。
桃っぽいフォルム(隣の実参照)だが、見た感じ皮ごと食べられそうな表皮だ。
美味しそうだけど、共食いはまずいかな。

分かってます。口ないです。
何も食べれません・・・・・・
肉も食べれません・・・・・・
肉・・・・・・

こんなに心残りがあるのにどうして地縛霊とかにならなかったんだろう。
異世界はあっても幽霊はいないのかな。
不思議です。

もちろん心残りは肉オンリーな訳ではありません。
父母兄姉。
親不孝な子でごめんなさい。
踊って転けて死ぬとか馬鹿過ぎ。
悲しませて、ごめんね。
私は異世界で頑張って生きていきます。
木の実だけどね。

今の私の親的な木は黄金の実がなっているだけあって、とても神々しい。
神秘的ってやつだ。
どうやら私たち実はある程度育つと成長が止まる。
熟れすぎて腐ったりしない。
もぎ取られるまで新しい実はならない。

パタパタパタパタ
虫がこちらに向かって飛んでくる。
半透明に透けた羽を一生懸命に動かす愛らしい幼女。
うん、あれは妖精ですね。

そうです。あの蕾から生まれちゃいました。
明け方、ゆっくりと蕾が開き始めたので眺めていると、中から!!
全身半透明だったのが、だんだん色彩を帯びて羽や手足を伸ばし羽化しました。

そして現在、めっちゃ懐かれてます。
私が魔力を与えたと認識しているようで、同じような実が並ぶ中から私を見分けて引っ付いてきます。

『ママ~』
『ママじゃないよ』
『マミィ~』
生まれたばかりのくせに、ちょっと呼び方変えてみる知能まであるようです。
賢い子です。親バカでしょうか?

そう!!お気付きですね!会話ができます!
念話ってやつでしょうか。
『マム~』
また変えてきましたね。
実は小馬鹿にしてる?賢過ぎますね。

『マムでもないよ。私の名前は・・・ん~果林にします』
『カリン?』
『そうだよ、そしてあなたは蓮です』
『カリン、レン』
レンが嬉しそうにへにゃっと笑う。

家族ができちゃいました。
やったね!!
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