木の実と少年

B.Branch

文字の大きさ
上 下
35 / 45
第1章

いろんな実。

しおりを挟む
『ウィル、これ食べてみてくれる?』

ハチミツもどきの入った毒の実を差し出す。
待ちに待った味見役です!

「え、こ、これ?」

毒々しすぎる見た目に、ウィルがドン引きしている。
だよね!
でも、ご安心を!キリによる毒味済みだから、これは純粋な味見だよ!

『うん、中に蜜が入ってるよ』

「ウィル、僕も食べてみたけど、美味しい蜜だったよ。あと、剥くと煙が出てくるけど無害だから」

「そ、そうなんだ・・・」

ウィルはキリの言葉にやっと安心したのか、恐々毒の実を剥いている。

「あ、ホントに蜜だ」

外見とは真逆の綺麗な琥珀色の蜜が毒の実から出てくる。

「・・・美味しい!!すっごく、美味しいよ!!」

でしょ!(食べたことないけど・・・)そう思った!(食べれないけど・・・)
絶対、いつか食べてやるからね!待ってろ蜜!

『よし、じゃあ、毒の実の次は、トゲの実を食べてみて!』

ウィルに持つだけで痛そうなトゲのある実を差し出す。

「カリン・・・なんか、怒ってる?フィーユ姉ちゃんを怒らせた時と同じ感じがするんだけど・・・」

怒ってないよ。蜜が食べられないからって・・・チッ、なんて思わないよ!
そんな、心の狭い女じゃないよ!
よし、トゲの実の次は、涙の実だね。
これは、近づいただけで、目つぶしのごとく目に染みて涙が止まらくなるけど、食べると(キリへの聞き取り調査の結果)甘いメロンの味がする実だよ。
怒ってないでしょ?

『みんな美味しい実だよ?ね、キリ』

「はい・・・ウィル、僕が割るね」

『・・・・・・』

あえてノーコメントでこっちをじっと見てくるレンちゃんの視線が何か言われるよりも心に刺さりますね。
高等テクニックを覚えたね!レンちゃん!
いえ、はい、ゴメンナサイ。

「これ中身フワフワしてるね」

そう!!トゲの実はホントに美味しいのだ!!
なんと中身は、見た目とキリの感想によると、シフォンケーキ(っぽいもの)なのです。
もう、毒の実の蜜とのコラボで激ウマ!!らしい・・・

「ウィル、蜜をかけてみて」

キリの言うとおりに蜜をかけて食べた瞬間、ウィルが動きを止めた。

「な、なにこれ!!う、美味すぎる!!」

甘味の乏しいこの世界では、ケーキどころか蜜も貴重品だろう。
どうも、王侯貴族でもないと、滅多に甘いものは口にできないみたいだ。
ウィルは余程気に入ったのか、トゲの実を夢中で食べている。

気に入ってくれて良かったよ。
あと、お米の感想も聞きたいんだけど、炊かないとダメだからな~
精米までは出来たから、炊けば終わりと言えば終わりなんだけどね。

フフ、実は丸投げ計画とは別に、お米の精米には成功しました。
我が家には精米機がいたのです!!

そう、その名は「キリ」!!
黄金スライムのキリの中に稲穂を入れると、あら不思議、精米されたお米が出てくるのです!!
この他にも作れるものはあると思います。
小麦粉、お茶・・はどうかな?取り敢えず、加熱の必要のない処理ならできます。

因みに砂糖はなんと私が作れました!!
糖分は光合成で植物の中で自然に生成されるものなので、体内でたくさん蓄えるように意識したらできました。
これは、デンプン(片栗粉)もできるな。あ、樹液って糖分多ければ蜜になる?

植物ってすごいね!!
もしかしたら、木の実に転生して良かったのかもしれない!?
神様ありがとう!!

『千歳なの~』

レンちゃん・・・
木の実、嫌だ~~
しおりを挟む

処理中です...