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しおりを挟む「はぁー、風呂まで一緒に入れるとかほんとイかれてんな。どんだけ警戒されてんだよ」
ゲイルの言葉通り、彼と私は私の部屋に隣接するお風呂で共に入浴している。向かい合って、彼がいつ何かをしようとしても対応できるように。見張っていなきゃいけない立場なのに、服越しでも何となく分かっていたが肉厚で筋肉質な体を直視できない。
「ヴァレリアも災難だな、これもハルフォード家に生まれた運命か」
彼は全てを諦めるように湯に体を預けるように湯船の縁に手や頭を倒した。復讐は果たせない、味方もいない、ただ一人ぼっちで能力のために無理矢理村に拘束されて…彼の過去を聞いてしまっては私はなかなかかける言葉が見つからない。”運命ってもんはしょうがないことの連続だしな”…そう言った彼の本当の心情はどんなものだったのだろう。そんな私の様子を見ると笑ってぐしゃぐしゃと頭を撫でた。
「なんつー顔してんだよ、お前も被害者だろ。お前を責めようなんて微塵も思ってないよ。それより悪かったな、俺ら家族が出て行ってなければ…いや、そもそも俺が生まれてなけりゃお前が好いたやつを諦めることもなかったのに」
そんな悲しいことを笑いながら言うものだから私はぐっと彼の胸に拳を押し当てた。
「そんなこと言わないでよ…」
「ヴァレリア?」
「私は…っ、お父さんが認めなくてもゲイルのこと家族だと思ってる。だから…っ、生まれてなきゃなんて言わないでよ」
彼の体に抱きつくと彼が息を呑むのが聞こえた。そしてその広くて逞しいはずの体は壊れ物でも扱うように弱々しく私の背中に手を回した。
「ごめん、ごめんな…ヴァレリア…だから泣くな」
「泣いてない…っ」
言葉で強がって鼻をすすりながら体を離すと甘い香りが広がった。よく見るとお風呂の水面は溢れんばかりにピンク色の花弁で満たされている。
「あの、これは…ゲイルが?」
「あぁ…俺のこの力は感情に左右されることが多いんだ。だから、たまらなく嬉しいとこうなる。お前は…こんな俺を家族だと言ってくれるんだな」
そう言ってゲイルは私の手を取ると甲に軽く触れるような口づけをした。
「我が愛しき主よ…私は一生あなたに尽くすと誓います、あなたを決して裏切ったりしない」
ゲイルの視線があまりにも真っ直ぐで情熱的で…そんな様子を見せたことない彼に真っ赤になって手を離した。ゲイルは元々美形だし…まるで絵本に出てくる騎士みたいだ…なんて思って首を振った。
「ああああああるじって!!!ゲイルと私は対等な従兄妹関係で…っ!」
「ヴァレリアは分かってないな…俺は裏切り者の息子で、お前は正当なる後継者で俺の手綱を握っている。対等なんてとんでもない、だけど…たまには噛みつくことは許してくれよ?」
首筋にちゅう、と吸い付かれて反射的に彼の能力を使って彼の体を突き放した。
「ゲ、ゲイル…っ、なんか、変だよ…っ、どうしたの?」
「変?好きになった女にこうやって触れることはおかしいか?」
「す、好きって…」
私の首にかかる髪をかきあげられると満足そうにそこを指で触れた。
「この花が俺の気持ちだ、お前といると感じたこともない幸福で胸が溢れる。」
恋人にも言われたことのないプロポーズみたいな言葉は聞いていられない。顔が熱く、火照って、意識が…遠のいた。
目を開けるとすぐ近くにはゲイルがいて私と目が合うとふにゃりと顔を緩ませ、私の頭を撫でた。
周囲を見回すと寝室に移動されていて体にはバスタオルが巻かれて下着は身に着けていない状態だ。
「湯船でのぼせて倒れたからそのまま運んできた。体拭くときに体は…どうしても見てしまったがむやみに触れたりはしていない…から、安心してくれ」
「あ、りがと…」
お風呂に入った時から感じる熱を持ったゲイルの視線に落ち着かない。そういえば好きになったとか聞き捨てならないことを言われたような気がする。恋人と別れたばかりだっていうのになんだか強めなアプローチをかけられている気がするし、いけないと思いつつそれに絆されてしまっている私もいる。
「それよりヴァレリア…俺たちは衣食住…少しも離れられないってことだが」
「ほ、ほんと困っちゃうよね!お父さん心配し過ぎっていうか!お腹すいたし夕飯でも…っ!」
この甘い空気感を壊すためにわざと騒ぐようにしてそう言ったがそれは効かないようで、ゲイルの腕が私の体を包み込んだ。
「それってもう…特別な関係と変わらなくないか?」
「え、あ…?」
「俺が死ぬまで、お前は俺のそばで…監視し続けるんだろう?お前の代わりは誰もいない。着替えも、食事も、風呂も寝るのさえも…お前と一緒だ」
そのまま体にまわった腕が体を巻くタオルを解かれて丸裸にされてしまう。慌てて身体を隠すも、ゲイルは片手で私の手首を掴んで押さえつけ、近くに畳まれていた下着を手に取った。
「俺がこうして毎回…着替えさせてやろうか?」
「なっ、なにすんのよーーーーーッ!!!」
あまりに艶を含んだ声でとんでもないことをしだすものだから私は耐えきれなくなって彼を植物で雁字搦めにした。
「俺と衣食住共にするってことはどういうことか、少しは身に染みたか?」
拘束されているというのにクックッと喉を鳴らすようにして笑う彼が憎たらしい。ゲイルを信用して、四六時中植物で拘束するのはやめようと思ったのに、それを撤回したくなる。でも確かに彼の言葉通りだ。片時も離れられない相手がいる中で到底恋人なんて作れっこない。自分から見張りを申し出たのに彼の処分を免れることばかり考えてこんなこと一切考えていなかった。
「こんなことし続けたらゲイルのこと好きになることなんて絶対ないから…っ」
「はぁ…それは確かに困るな」
着替えながらそう言うとゲイルから先ほどの悪戯っぽい笑みは消え失せて、息をついた。
「じゃあ真剣にお前を口説くとしよう」
「ほんとに…っ、そういうのいいからッ!」
懲りてない彼に一喝するが、その後も甘ったるい言葉を連発される。その日の夕飯はその状態のまま彼の口の中に無理やり食事を突っ込むのだった。
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