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第1章 欲望の目
汝ら、我が声に従え
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「何見てるのよ。私のことを気にしないで早く食べなさい。話さなきゃならないことがあるのよ。」
「......ん?あぁ。ぼーっとしてた。いただきます!......話さなきゃならないこと?」
俺は麺を一口啜って彼女にまた、話しかけた。
「そういえばお前、こんな時間まで家に帰らなくていいのかよ。召喚士と言えどまだ未成年だろ。」
「お気遣いどうも。でも、今日からはここに泊まるから。」
妙に『今日から』という単語のイントネーションに圧を感じた。衝撃的な発言を耳に、俺は絶句する。その数秒後に変な汗と一緒に声が出る。
「なな、何言ってんだお前!?家に帰れよ!親御さんが心配するだろうが!」
「帰れないわよ。召喚士を見つけたのに、殺さなかったなんて事がバレたら大惨事よ。ダイスを勝ち取るまではここで寝泊まりするから。」
ダイス。──アーティファクト「輝くトラペゾへドロン」をニャルラトホテプが改造して作った、欲望を叶える多面体の黒水晶。
こんなのを奪い合って生涯を戦争に費やすなんて、俺には想像できないのだが。
「ははっ。それはそれは。って知らねえよ!お前の勝手な都合だろうが!貧乏学生には厳しいのだが?」
そう、こいつら召喚士は基本、元が貴族身分のやつがほとんどで、金に不自由していない。だが俺は保険金と補助金で生きる学生。人を扶養する金などどこにもない。
「こっちこそあんたの事情なんて知らないわよ。それじゃ私、お手洗いに行ってくるから。」
話を聞かないのにも会って数時間で慣れてきた。だが、これからの生活に一物を抱えながら啜るカップ麺は、まるで味がしなかった。
お手洗いから帰ってきた彼女は人を蔑むような態度で俺の前に立っち、屈んで顔を近づけてきた。
「あんた、本当に召喚士として落ちこぼれなのね。」
「だからそう言ってるだろ。俺みたいなのを警戒してもなーんも意味ないの、分かっただろ?」
彼女は深くため息をついて、体勢を戻した。
「そうね。それよりすぐそこに、あんたか私を狙って来た召喚士がいるわよ。ここまでの到着は正味20秒ってところかしら。」
彼女は今きっと「他の召喚士の気配すら感じとる能力すらないのか」と俺を哀れんだのだろう。
「今日お前と出会って、俺が今までどれだけ奇跡的に生きて来れたかを実感してるよ。」
一日に二度も召喚士との戦闘になるなんて。落ちこぼれでも召喚士として、俺はもう後戻りはできないらしい。俺がこの戦争を終わらせるためには、まずこの敵の襲来を防がなければいけない。
彼女が予言したのとほぼ同じ時間。稲妻のような閃光が一瞬カーテンを貫通する。その光から遅れて凄まじい破裂音が鼓膜を揺さぶった。
「あんたは隠れてなさい。そこらの召喚士になら、私は負けないから。──」
俺はこの子の優しさだと分かっていても、これを承認することはできなかった。
「──ふざけんな生意気娘が!
俺には確かに何もできないかもしれないし、お前は強いのかもしれない。でも、これ以上目の前で死にゆく人間は見たくない!」
彼女は唾を飲むと、「勝手にしなさい。そのかわり......あんたこそ死んだら承知しないから。」そう言って彼女は部屋の明かりを消し、真っ暗な玄関に一本の蝋燭を立て火をつけ、右手を胸に当てた。
「ウスゴス・プラフム・"ダオロス"・アスグイ......!来れ、あぁ汝よ、視界のヴェールを払い除け、彼方の実在を見せる者よ......」
彼女の詠唱は、速度・正確性・発音において全く狂いがなかった。
やがてろうそくの微弱な火が揺れ動いた。
「召喚には多少なりとも時間がかかるのは......流石に知ってるわね。いい?ここからはこの陣の防衛戦よ。私の流派の主『ヴェールを剥ぐ者』が召喚に応じるまで耐えるの。」
彼女はそう言うと、外へ駆け出していった。俺も彼女の後を追って走った。その合間、俺は彼女の流派であるダオロスについて脳内検索を始めていた。
ダオロス──世界のベールを剥がし、真実を見せる邪神。その身は複雑に絡み合う半球体と可塑性の金属で構成されており、中心の眼を覗いてもただ空間が見えるだけであるという。
彼女の流派『ダオロス』は不規則な彼女自身の性格を体現しているようだった。
「......ん?あぁ。ぼーっとしてた。いただきます!......話さなきゃならないこと?」
俺は麺を一口啜って彼女にまた、話しかけた。
「そういえばお前、こんな時間まで家に帰らなくていいのかよ。召喚士と言えどまだ未成年だろ。」
「お気遣いどうも。でも、今日からはここに泊まるから。」
妙に『今日から』という単語のイントネーションに圧を感じた。衝撃的な発言を耳に、俺は絶句する。その数秒後に変な汗と一緒に声が出る。
「なな、何言ってんだお前!?家に帰れよ!親御さんが心配するだろうが!」
「帰れないわよ。召喚士を見つけたのに、殺さなかったなんて事がバレたら大惨事よ。ダイスを勝ち取るまではここで寝泊まりするから。」
ダイス。──アーティファクト「輝くトラペゾへドロン」をニャルラトホテプが改造して作った、欲望を叶える多面体の黒水晶。
こんなのを奪い合って生涯を戦争に費やすなんて、俺には想像できないのだが。
「ははっ。それはそれは。って知らねえよ!お前の勝手な都合だろうが!貧乏学生には厳しいのだが?」
そう、こいつら召喚士は基本、元が貴族身分のやつがほとんどで、金に不自由していない。だが俺は保険金と補助金で生きる学生。人を扶養する金などどこにもない。
「こっちこそあんたの事情なんて知らないわよ。それじゃ私、お手洗いに行ってくるから。」
話を聞かないのにも会って数時間で慣れてきた。だが、これからの生活に一物を抱えながら啜るカップ麺は、まるで味がしなかった。
お手洗いから帰ってきた彼女は人を蔑むような態度で俺の前に立っち、屈んで顔を近づけてきた。
「あんた、本当に召喚士として落ちこぼれなのね。」
「だからそう言ってるだろ。俺みたいなのを警戒してもなーんも意味ないの、分かっただろ?」
彼女は深くため息をついて、体勢を戻した。
「そうね。それよりすぐそこに、あんたか私を狙って来た召喚士がいるわよ。ここまでの到着は正味20秒ってところかしら。」
彼女は今きっと「他の召喚士の気配すら感じとる能力すらないのか」と俺を哀れんだのだろう。
「今日お前と出会って、俺が今までどれだけ奇跡的に生きて来れたかを実感してるよ。」
一日に二度も召喚士との戦闘になるなんて。落ちこぼれでも召喚士として、俺はもう後戻りはできないらしい。俺がこの戦争を終わらせるためには、まずこの敵の襲来を防がなければいけない。
彼女が予言したのとほぼ同じ時間。稲妻のような閃光が一瞬カーテンを貫通する。その光から遅れて凄まじい破裂音が鼓膜を揺さぶった。
「あんたは隠れてなさい。そこらの召喚士になら、私は負けないから。──」
俺はこの子の優しさだと分かっていても、これを承認することはできなかった。
「──ふざけんな生意気娘が!
俺には確かに何もできないかもしれないし、お前は強いのかもしれない。でも、これ以上目の前で死にゆく人間は見たくない!」
彼女は唾を飲むと、「勝手にしなさい。そのかわり......あんたこそ死んだら承知しないから。」そう言って彼女は部屋の明かりを消し、真っ暗な玄関に一本の蝋燭を立て火をつけ、右手を胸に当てた。
「ウスゴス・プラフム・"ダオロス"・アスグイ......!来れ、あぁ汝よ、視界のヴェールを払い除け、彼方の実在を見せる者よ......」
彼女の詠唱は、速度・正確性・発音において全く狂いがなかった。
やがてろうそくの微弱な火が揺れ動いた。
「召喚には多少なりとも時間がかかるのは......流石に知ってるわね。いい?ここからはこの陣の防衛戦よ。私の流派の主『ヴェールを剥ぐ者』が召喚に応じるまで耐えるの。」
彼女はそう言うと、外へ駆け出していった。俺も彼女の後を追って走った。その合間、俺は彼女の流派であるダオロスについて脳内検索を始めていた。
ダオロス──世界のベールを剥がし、真実を見せる邪神。その身は複雑に絡み合う半球体と可塑性の金属で構成されており、中心の眼を覗いてもただ空間が見えるだけであるという。
彼女の流派『ダオロス』は不規則な彼女自身の性格を体現しているようだった。
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