【完結】『ルカ』

瀬川香夜子

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三章

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 ジッとこちらを見る視線がリアの横顔に突き刺さる。何かしてしまったかと思っても特に心当たりはない。
 今日だって朝はハリスに面倒をかけずに自分で起きたし、いつもと同じように朝食を食べた。珍しくハリスの髪に寝癖が付いていたが、何も言わずに微笑ましく見ていたら不機嫌そうな目で見られたぐらい。
 それだけでこうも執拗な視線に晒されるとは考えられない。
「あの、ハリス……俺の顔に何かついてますか?」
 もしかしてリアにも寝癖があったりするかと髪を撫でつけてみるがそれでも変わらず突き刺さる視線に耐えきれず、とうとう口に出して聞いてみた。
「いや、何もついてないが」
 なぜ?とでもいうようにハリスが首を傾ける。その仕草をしたいのはリアの方だ。
「いえ、ずっと見てくるのでどうしたのかなって思って……」
「ずっと?俺が?」
「はい……」
 まさか自分でも無意識だったというのか。リアの驚きはどうやら本当のようで、ハリスは自分の口を手で覆って「まさか」なんて言っている。
 その台詞も、言いたいのはリアの方だ。
 ずっと何かやってしまったかと心中で顔色をコロコロと変えていた自分に謝ってほしいぐらいだ。それぐらい、神経を使っていた。
 でも、そんなこと言えるはずもない。好きな人に悪態をつくことなど出来ない
「疲れてたの?」
 なんて冗談めかして言うのが精々だった。
「そうかな……?」
 ハリスも困った顔でそのままリアの言葉に乗った。これで仕切り直しだと前を向いて再び街を歩こうとした時、隣―――詳しくはハリスの前方から小さな悲鳴が上がる。
 ぱっと見下ろした先には尻餅をつく子供の姿。イツキよりもさらに幼い、ハリスやリアの腰ほどの背丈の少女だ。
 きっとハリスの足にぶつかってそのまま後ろに引っくり返ってしまったのだろう。少女は何が起きたのかわからないと言うように眼をしばたたかせてハリスを見上げた。
 リアが屈んで声をかける前に、低い穏やかなものが届く。
「怪我はないか?」
 片膝をついたハリスが優雅な動作で少女に手を差し出す。パチリと大きな瞳が一度瞬いてコクリと丸い頭が頷く。
 小さな手がゆっくりと伸びて重なるとハリスは優しく握り返して少女を起き上がらせる。
 見たところ怪我はなさそうだ。転んだ時に手をついたせいか、小さな両手には細かい石がいくつか張り付いていてハリスの大きな手がそれを一粒ずつ取り除く。
 少女は円やかな曲線の頬を薔薇色に染めて目の前のハリスを見つめていた。
(初恋かあ……)
 昨夜ハリスと語った言葉が胸に蘇る。
 今のリアからしてみたら初恋はハリスだ。目の前の少女と同じように、自分もハリスの傍にいる時はあんな風に顔色を変えているの少し心配になる。
 「ルカ」の作者は、明確な誰かを想像してあれを書いたのだろうか。もし、そうだとしたら春から冬までの一年を通した相手の表情を、作者は知っているのか。
(俺だって、出来ることならハリスと一年間ずっと一緒にいたい)
 冬の終わりに出会った。まだあの頃は寒さが残っていたけれど、今は半袖でも過ごせる程度には暖かくなった。それなら、また寒さに身を震わせる季節までハリスとの思い出が欲しい。
 そうすればこの旅が終わっても。一緒にいた頃の記憶を振り返って生きていける。いつの季節にいても、ハリスのことを思い浮かべることが出来る。
(なーんて……欲が深いよなぁ……)
 少女が何かに気付いて振り返る。「ママ」と叫んで幼い体が駆け出した。数メートル先に立っていた女性の足に抱き着いて、こちらを振り返りながら控えめに手を振る。
 ハリスと一緒に手を振り返す。親子の姿はすぐに人ごみに紛れて見えなくなった。
(あの子の記憶の中で、ハリスはどうやって残るのかな)
 この数分の邂逅は、その内ハリスの顔も声も忘れてしまって、時々そういえば優しくしてくれたお兄さんがいたな、なんてそんな風に柔らかな少女の記憶の一部になるのだろうか。
 そんな暖かさだけが残るなら、どれだけ羨ましいことだろう。
「……なんだい」
 ジロリと見上げてくる赤い双眸にふふっと笑って首を振る。照れくささと罰が悪く拗ねた様子を混ぜた初めて見る顔。
 あなたと一緒にいればいる程、忘れられないことが増えていく。過ごす時間が長くなるだけ、深く心に刻み込まれる。
 幼い少女のように、リアは忘れることは出来ない。
「いいえ、イツキくんの時も思いましたけど……ハリスは子供の相手が上手ですよね」
 意外だという一言は心にしまった。
「知り合いの真似をしてるだけだよ」
 凪いだ瞳の横顔に、「それがあなたのルカ?」とは言えなかった。聞いたところで自分が傷つくだけだからグッと呑みこんで胸の奥に閉じ込める。
「行きましょっか」
「ああ」
 ハリスが立ち上がったのを見計らってまた歩き始める。今日でウノベルタともおさらばかと思えばそうでもない。
 部屋を出る時に荷物は最小限でいいと言われて置いて来たし、まだチェックアウトをすませていない。
 また一日、ハリスといられる時間が伸びた。
 二人で市場に繰り出しておきながら特に目的がある訳ではない。ふと気になった店に立ち寄り、覗いてみてはまたフラフラと足を進める。
 借りた本はすでに返却してしまったのでもうここに留まる必要もないのに、ハリスはまだウノベルタを出ようとはしない。
 するりと手を握られて「へ」と高い音が漏れた。
「ハリ、ス?」
 触れ合う手とハリスの顔を忙しなく視線が行き来する。ハリスは渋い顔で「見ていただろ」と。
 何のことだと思ったが、数秒経ってもしや先ほど見送った親子のことを言っているのかと考えつく。別に仲良く手を繫いでいたことを羨んでいたのではないのに。
 勘違いだと言う前に、手を引かれてしまう。いつもより大きい一歩で早足で歩かれるものだからついていくので精一杯。
 自分で繋いだくせに、どうしてそんな怖い顔してるのさ。
 そんなリアの文句は、ついぞハリスには向けられなかった。

 たまたまた立ち寄ったのは路地を入ったところに小さく佇んでいたジュエリーショップ。
 ハリスが立ち止まったと思えばふらふらとその店に吸い込まれていき、必然とリアも後に続くしかない。
「どうしたの、ハリス?」
 珍しいとも思ったが、今までリアが知らなかっただけで、実はこういう物を見るのが好きなのかもしれない。
 ハリスの伸びた手が、マネキンの首元を飾っていたネックレスに触れた。
 シルバーの鎖に、小さな装飾の付いたもの。華美なものではないが、落ち着いた美しさのあるそれをジッと見下ろしている。
(そんなに気に入ったのかな……)
 こういうシンプルなデザインの物が好きなんだろうか。リアも横から覗き込んでいれば、ふいに振り返ったハリスと視線が交わる。
「な、なに?」
 痛いほどの視線が注がれて、尻込みしながら問う。ハリスは尚もリアのことを見据えて、さっきまでネックレスに触れていた手で今度はリアの頬を撫でた。
「同じ色だ……」
「えっ?」
 急にどうしちゃったんだろう。あんなに熱心に見ていたくせに結局ハリスは何も買わずに店を出てしまった。
(結構似合うと思ったんだけどな)
 ただ、装飾の石は青よりも赤の方がハリスらしいとは思うが。
 その後も色々な店を見たものだがハリスは何も買わなかった。様子が変だから何か声をかけようともしたが、手が離れていくのが惜しくてリアはただ後ろをついて回る。
 今日のハリスはいつも以上にわからない。考え込んでいる時もあれば急に動き出す。そして、普段よりもリアのことを見ている時間が長い。その眼が、何だかいやに真剣なものだからリアはその度に緊張で身を固くした。本当にどうしたというのだろう。

「今日は、一緒に寝てもいいか」
「え、一緒に……?」
 ベッドに上がってもう寝ようかと体を休める準備をしていたら、突然降って来た衝撃に口が開きっぱなしになる。
 自身の耳を疑っていれば、ハリスは普段からは考えられない強引さを見せて布団に入り込んでくる。
 それに驚きつつ詰めて場所を開ければ、結局狭いベッドの上で向き合うように横になった。
(何かあったのかな……)
 昼間のことといい、今日のハリスの言動はおかしな点が多い。しかし、何て問いかけたらいいのか。
 体調が悪そうにも見えない。落ち込んでいるとも違う気がする。無難に何かあったの?とでも聞くべきか。
 すぐそばで閉じられた瞳がある。そこから意識を反らす目的もあって云々と悩んでいれば、またハリスに手を取られた。
(今日はやけに手に触るなぁ……)
 赤い双眸は閉じられたまま。繫ぐと言うよりは一方的に手を掴まれるように触れ合う。少しの隙間でも許さないと強い力が加わって少し骨が軋んだ。
「リア……暖かいな……」
「そりゃ、生きてるから……」
「……そうだな……君は生きてる……」
 人肌が恋しくなってしまったのかな。閉じた目は、体温をより感じ入るためだったりして、と胸中で軽口を叩きながらリアもハリスの熱を感じていた。
「ハリスも暖かいよ」
「そうか……」
「うん」
 眠いせいか普段よりも口調が幼い。指先には痛いほど力が入っているが、ハリスの表情はリラックスしていて同じ年のそれなりに大きな男なのに可愛らしかった。
(あ、睫毛も赤いんだ……)
 少し顔を傾ければ額や鼻先が触れてしまうほどの距離で、ジッと見据えていれば照明の光に透けてハリスの睫毛が赤みを帯びた。
 こんなに近くで見たことはなかったから初めて気づいた。ハリスが少し身を捩ったせいで髪が落ちて顔にかかってしまう。
 細く長い睫毛も隠れてしまって(あっ)と反射的に自由な方の手で髪を掬って耳にかけた。リアの指がハリスの頬を掠める。閉じられていた瞼がゆっくりと押し上げられて赤い煌めきが覗く。
 薄く開いた瞳。それがリアを見つめていた数秒が永遠に感じられた。ハリスは引き結んだ唇をへの字に曲げて鼻頭に皺を寄せると、今度は腕を回してリアを体ごと抱き寄せる。
 肩や腰に触れた指が皮膚に食いこむ。
「今だけ……頼む……」
「は、はい……」
 ハリスの肩の窪みに頭を預けていれば、吐息と共に小さな音が鼓膜を揺らす。
「やっぱり、無理か……」
 絞り出すようなその声が、ハリスの苦悩を思わせる。奥歯を噛みしめる音が聞こえた。更に腕の力が強くなって体が悲鳴を上げる。
 ハリスが何に悩んでいるのかわからない。けれど、こうしていることで少しでも心が安らぐのなら、いいかなって思えた。
 痛いとリアが零せば、ハリスはすぐにその身を引いてしまうから。だからリアは痛みを享受する。苦しささえも、愛おしかった。
 背中に回っている手が震えている。
 リアは少しの間逡巡してから、いつの日かイツキにしたようにハリスの背中をさする。
 大丈夫。大丈夫だよ。
 根拠もなくそう繰り返す。ほとんど音になっていないそれがハリスに届いていたのかはわからない。
 大丈夫、ハリス……今なら俺が傍にいるから。何にも怖くないよ。


 翌朝。昇ったばかりの陽の中でハリスの身支度の様子を後ろから眺める。スッキリとした青空が広がる爽やかな空気が、昨日のことはリアの見た夢ではないのかと思わせる。
 それぐらい、昨夜の出来事は隔離された二人だけの世界だった。
「今日、ここを出るから……忘れ物には気を付けろ」
「うん」
 ああ、終わりかと気づかれないよう嘆息する。数日だけだったが最後にいい思い出が出来た。
 昨日とは違い、早朝で人の少ない歩いた市場を抜ける。住宅街を通り過ぎれば建物が無くなって街の境に出る。遠くに見えるのがカルタニアだろう。
 あそこに行けば、二人の旅は終わってしまう。
 いつか訪れることだとわかっていた。それがついに来ただけだ。
 足を進めて数歩。隣にいつもの赤い彼がいないことに気付く。
「ハリス……?」
 振り返れば、先ほどの位置からハリスは動いていない。俯いて、拳を握っている。
 息の吸い込む音がして、顔を上げたハリスが知らない人に見えた。
(あれ、こんな顔してたっけ……)
 憑き物が落ちたような、昨夜の悩ましげな物とは正反対の顔つき。何か答えでも見つけたのか、その瞳には迷いがなかった。
「リア」
 一歩、ハリスが近づく。
 その瞳から逸らすことが出来なかった。
「もう悩むのは止めた」
 また一歩、距離が詰められる。
 ハリスの雰囲気に引きつけられて言葉を発することも出来ない。
「どうか、一緒に来てほしい……このまま、二人で」
 最後の一歩が踏み出されて二人の影が重なる。
 そして、次の瞬間―――
「お待ちしていましたわ、神子よ」
 早朝には似つかない女性の柔和な声が響いた。
「ハリスもご苦労だったわね」
 揃って勢いよく音の出所へと顔を向ける。
 いつからそこにいたのか、何もない草原には不釣り合いのドレスを身に纏った女性。その傍らには馬車が一台控えている。
 長い赤い髪は緩くカーブを描き、朝の風にさやさやと揺れる。緩やかに上げられた口元とこちらを見つめる赤い瞳はひどく既視感を覚えさせた。
(ハリスと、同じ……?)
 いつも、その色を見ていたのだ。間違えるはずがない。
 あれは誰なのかと隣のハリスを見遣る。
「かあさま……」
 呆然と立ち尽くすハリスの戦慄とした声が届いた。
「どうしてここに」と音もなく唇が動く。
 女性―――ハリスの母はにっこりと笑みを深めて瞳を細くした。
「迎えに来たのよ」
 赤い瞳がリアを捉えた。ハリスと同じ色なのに、背筋にスッと冷たいものが走って恐ろしいと思ってしまった。
「ずっと、首を長くしてお待ちしてましたのよ」
―――神子さま。
 紅を引いた真っ赤な唇が確かにそう言った。


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