転生先がハードモードで笑ってます。

夏里黒絵

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ハードモードすぎて辛い。

前世でBLノベルゲームプレイしたことある気がする俺。

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結局の所、最後まで読んだ。ぶっ通しで夜中に読んだ。
普通に面白かったのだ。

「不覚にもキュンとした…」

いや俺何言ってんの、無いから、全然ありえないから。
何とも自分のチョロさにため息がでる。

あれ、前にも確かこんなことがあったような。なんだっけ、思い出せ俺……







「ん、なんだこれ。」

たまたま学校が休みだった春乃は、朝ポストを確認すると何か入っているのを発見した。

「王立エリアス魔法学園!ネバーランド物語……?なんだそれ、やたらとカタカナと漢字を混ぜるじゃないか。」

どうやら学園物のノベルゲームの様だ。
春乃は暇だったのでそのゲームをプレイしてみることにした。

「うぅ、なんて良い奴なんだ!王子ぃ!こんな俺を褒めてくれるのかぁ!」

この男、泣いている。ちょろい。
主人公がどんなに失敗してもカバーをし、慰めてくれる。成功したらそりゃもう信じられないくらい褒める。
春乃のメンタルはほぼ死んでいた。忙しい家族に心配かけまいと普通にしているが、一人の時は完全な鬱だった。
そんな彼に、全肯定してくれる王子は刺さる。

「俺男だけど、王子惚れたよ!ん、まてよ?俺、男、主人公の一人称、俺…」

今までなんの違和感も感じていなかったが、今になって気がついたようだ。
そう。王子も、主人公も、皆男である。

「……BLゲーム、?」

衝撃を受けた。
今まで乙女ゲームだと思っていた。
随分とボーイッシュな主人公だと思っていた。
まぁ、面白かったのは事実なので気にするのを辞めることにした。

「にしてもこの悪役令息、救いようがないな、頭弱そうだし。典型的な当て馬って感じ。」

そんなことを考えていたら、下の階が騒がしい。
何かあったのかと思ったら、誰かが階段をのぼってきて俺の部屋のドアを叩いた。

「お兄ぃ!開けるよ!」

なんとも慌てた表情でドアを開けたのは妹だった。
両者の間に気まずい空気が流れる。
まぁそうだろう。なんたって自分の兄がBLゲームをプレイしていたわけだ。
気まずい。非常に気まずい。

「お、お兄ぃ、そのゲーム、お、面白かった…?」

恐る恐る口を開く妹。
もしかしたらこれは妹のゲームだったのかもしれない。

「そうだね。面白かったよ。特にこの王子。俺は好きだよ。」

春乃は意地でも可愛い妹の前では、爽やかなイケメンのイメージを崩すまいと爽やかに返した。
この男、シスコンである。
春乃の返事を聞き、どこかほっとした様子の妹を見て自身も一息つく。

「そ、そっかぁ!お兄ぃはヴィクトル王子が好みなのかぁ!い、意外だなぁ!」

その後も妹は早口で語る。
どうやらヴィクトル王子は王道キラキラ王子様なため、属性完全丸かぶりな兄とは合わなさそうだ。と言う事らしい。
しかし春乃の本質は、キラキラ王子なんかと程遠い、根暗なメンヘラとでも言っておこうか。とりあえずキラキラしてるのは人前だけである。

「そう言う綾音は、誰が好みなんだい?」

少し気になったので聞いてみた。
そしたらこちらも意外な返事が。

「わ、私はリンシャ様が好きだよ!まぁ、王子ルートしかやってないお兄ぃには理解し難いかなw」

その後も妹はブツブツとリンシャ様とやらの事を話している。隠しルートが~、とか、元がいいから痩せたら死ぬほど美人で~、とか、声が小さかったのであまり聞こえなかった。
しかし驚いた。あの白豚が好きだと、妹もしかしてデブ専だったの!?とか考えてしまった春乃。
直ぐにそんな考えを捨て去る。

「そうか、綾音の好きなキャラクターならさぞかし素敵なキャラなんだろうね。」

「そ、そうだね!ま、まぁなに?、それ私のなんだけどお兄ぃがまたやりたいならまた貸してあげるよ!うん!なんなら持ってて!」

そう言い残して妹は春乃の部屋を出ていった。

「綾音、いわゆる腐女子ってやつだったのか……?」

そんなことを考えながらキャラ紹介に目を通す。そんな事をしていたら寝落ちしていた。









「あの後結局学校忙しくなっちゃって、ゲームの続き、やれなかったな。」

そんな前世を思い出し、元の世界に帰りたいなと感傷に浸る俺。
しかし数秒後、俺は後悔する。なんでしっかりあのゲームをやらなかったのかと。

「ん?王立エリアス魔法学園?白豚リンシャ?……えええ!!!」

今更になって気がついた。6年間もその事に気が付かずに生活していた自分が恐ろしい。
そう、俺は前世でプレイした事のあるBLゲームの世界に、しかも悪役令息に転生していたのである。
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