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第5章:「子爵になって、神の使徒になって、婚約もして。あ、魔の森の開拓もありました。貴族って、こんなに忙しいものなんですか?」
第65話「王都への報告・前編」
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第65話「王都への報告・前編」
開業から1週間後。
グリューンヴァルト領。
朝。
ダンジョン・タワーが、今日も活気に満ちている。
スピーカー機能の完成
18階。
監視ルーム。
グンターが、最終確認をしている。
「全ドローン……スピーカー機能、実装完了です」
グンターが、レンに報告する。
「設置型カメラへの音声発信機能も……全ボス部屋、全踊り場、全安全地帯……完了しました」
「ありがとうございます、グンター」
レンが、深く頭を下げる。
「テストしてみましょう」
グンターが、監視ルームの通話装置を操作する。
「1階のドローン……起動」
ドローンが、ダンジョン1階を静かに飛ぶ。
冒険者たちには、見えていない。
グンターが、通話装置に話しかける。
ドローンのスピーカーから、声が出る。
1階にいた冒険者が、きょろきょろと周りを見回す。
「声が……どこから……?」
「見えない……」
冒険者たちが、戸惑う。
「問題ありません」
グンターが、レンに報告する。
「音声は明瞭で、隠密魔法陣も正常に機能しています。声は届くが、ドローンの姿は見えない」
「完璧ですね」
レンが、満足する。
「ボス部屋前の安全地帯への設置型カメラと通話装置も……全て確認しました」
グンターが、続ける。
「戦闘中は扉が開かない。扉が開いた後の冒険者に、すぐ声をかけられます」
「ありがとうございます、グンター。本当に助かります」
レンが、再び頭を下げる。
「担当者の皆さん」
レンが、監視ルームの職員全員を見渡す。
「今日から、スピーカー機能が使えます。危険な状況の冒険者……特にボスを倒した直後に先へ進もうとしている冒険者を見つけた場合は……すぐに声をかけてください」
「はい!」
担当職員たちが、声を揃える。
「ただし……使いすぎは禁物です。本当に危険な状況に限って、使ってください」
レンが、続ける。
「マルク・ベルガーさんのような……見えていたのに、止められなかった……そういう状況を、防ぐためのものです」
「……はい」
担当職員たちが、真剣な表情で頷く。
開業1週間の総括
朝の報告。
1階のギルドエリア。
「開業から1週間の総括です」
エドガーが、前に立つ。
「1週間の総来場者数……1,847名」
「!」
全員が、驚く。
「1日平均、264名です。開業初日の163名から、着実に増えています」
「死者:3名」
場が、静まる。
「マルク・ベルガー様を含む3名です。全員、自己の判断により安全階層を超えての挑戦によるものです。ご遺族への連絡は、全員完了しています」
「怪我人:延べ187名。全員、6階の治療院で治療完了」
「ショップ街全体の売上は、開業当初より順調に伸びています」
「魔石換金も、日々増加しています」
「ドローン・設置型カメラへのスピーカー機能は、本日より稼働開始です。グンター様のご尽力に感謝します」
エドガーが、報告を締めくくる。
「ヴィクトール殿、追加職員の件は?」
レンが、ヴィクトールに聞く。
「本部に申請しています。追加で30名……2日以内に到着予定です」
「よろしくお願いします」
レンが、頷く。
「では……」
レンが、続ける。
「今日から、私は王都へ向かいます」
「!」
全員が、レンを見る。
「辺境伯様と共に参ります。数日、留守にします。その間……ヴィクトール殿とスチュアートさんが、指揮を執ります」
「はい、閣下。お任せください」
ヴィクトールが、力強く答える。
「エドガー」
レンが、エドガーに向く。
「はい、レン様」
「お前も連れて行きます」
「はい」
エドガーが、頷く。
転移魔法で辺境伯邸へ
午前中。
30階。
レンの執務室。
辺境伯ヴォルフガングが、到着している。
「レン殿、準備はよいですか?」
辺境伯が、言う。
「はい。では……参りましょう」
レンが、辺境伯とエドガーを見渡す。
アラクネが、レンの肩に乗っている。
「キュルル~」
「辺境伯様、エドガー……傍に寄ってください」
レンが、静かに言う。
二人が、レンの隣に立つ。
レンが、目を閉じる。
転移魔法を発動する。
一瞬。
光が、三人を包む。
次の瞬間――
辺境伯邸の執務室。
「着きました」
レンが、静かに言う。
「うむ……」
辺境伯が、窓の外を確認して頷く。
慣れたものだ。
辺境伯邸執務室での相談
執事長セバスチャンが、すぐにお茶を運んでくる。
「ご苦労様です、セバスチャンさん」
レンが、頭を下げる。
「恐れ入ります、レン様」
セバスチャンが、下がる。
「さて……」
辺境伯が、お茶を一口飲む。
「今日の謁見……整理しておきましょう」
「はい」
レンが、頷く。
「エドガー、報告事項を」
「はい」
エドガーが、書類を取り出す。
「謁見の間での報告事項です」
「一つ……ダンジョン・タワーの開業報告。来場者数、運営状況、概要」
「二つ……死者の報告。マルク・ベルガー様のことを、正直に報告します」
「以上が、公の場での報告事項です」
「うむ……」
辺境伯が、頷く。
「謁見の間には、他の貴族も同席します。機密事項は……謁見の後、陛下と私的な場で話しましょう」
「はい」
レンが、答える。
「ゲートのこと、転移魔法のこと……」
レンが、続ける。
「電話でも話せることかもしれませんが……直接、顔を合わせてお伝えすべき重要な内容です。そう判断しました」
「そうですな」
辺境伯が、頷く。
「陛下も……そのように受け取ってくださるでしょう」
「侯爵の件も……今日の謁見で話が出るかと思います」
レンが、続ける。
「ダンジョン・タワーの完成をもって……という約束でしたから」
「うむ……タワーは完成し、開業も果たした。約束は十分に果たされています」
辺境伯が、微笑む。
「叙爵されれば……王都での拠点も必要になりますね」
レンが、続ける。
「そうですな……宿では、侯爵として少々……」
「その点も、陛下にご相談できればと思っています」
「良いでしょう」
辺境伯が、立ち上がる。
「では……参りましょうか」
馬車の準備が、既に整っていた。
さすが、セバスチャンだ。
「セバスチャンさん……ありがとうございます」
レンが、頭を下げる。
「恐れ入ります、レン様。道中、お気をつけて」
セバスチャンが、丁寧に見送る。
馬車で王城へ
馬車の中。
辺境伯とレンが、向かい合って座っている。
エドガーが、隣に控えている。
「緊張していますか?」
辺境伯が、聞く。
「……少し」
レンが、正直に答える。
「大丈夫ですよ」
辺境伯が、微笑む。
「陛下は……レン殿のことを、信頼しておられます。正直に……全てお伝えすれば、陛下は必ず理解してくださいます」
「……そうですね」
レンが、頷く。
馬車が、王城の門をくぐる。
謁見の間
謁見室。
重厚な空間。
王座に、カール3世が座っている。
宰相。
将軍。
財務大臣。
複数の貴族が、両側に控えている。
辺境伯が、先に入る。
「ヴォルフガング・フォン・アドラー辺境伯、謁見の栄を賜り、光栄に存じます」
続いて、レンが入る。
レンが、膝をつく。
「グリューンヴァルト伯爵、レンアスカ・フォン・グリューンヴァルト……陛下にお目通りいただき、光栄です」
「面を上げよ」
国王が、穏やかに言う。
「久しいな、レン。ダンジョン・タワーの開業……聞いておるぞ」
「はい、陛下。本日は、正式なご報告に参りました」
レンが、立ち上がる。
「まず……ダンジョン・タワーの開業についてです」
レンが、報告を始める。
「開業から1週間で、延べ1,847名の来場者がありました。冒険者ギルドの職員50名が駐在し、武器・防具・ポーション等のショップ街も稼働しています。治療院も設置し、負傷した冒険者への対応も行っています」
「ほう……1週間で1,847名か」
国王が、感嘆する。
「全国から……冒険者が集まっているのだな」
「はい。日々、来場者数は増え続けています」
「して……死者は?」
国王が、率直に聞く。
「……3名です」
レンが、正直に答える。
謁見室が、静まる。
「全員、自己の判断により、安全な階層を超えての挑戦によるものです。ギルドでの注意事項の説明、サインによる同意……全ての手順を踏んでいます。しかし……防げませんでした」
「……」
国王が、黙っている。
「3名のご遺族への連絡は、全員完了しています。今後……監視体制の強化、システムの改善を続けていきます」
レンが、深く頭を下げる。
「うむ……」
国王が、静かに頷く。
「ダンジョンとは、命がけの場所だ。死者が出ることは……避けられないかもしれん。しかし……お前が誠実に対応していることは、分かった」
「ありがとうございます、陛下」
国王が、座り直す。
「レン……」
「はい」
「ダンジョン・タワーの完成……当初の約束を、覚えておるか」
国王が、静かに言う。
「はい、陛下。ダンジョン・タワーの完成と運営開始をもって……侯爵への叙爵をご検討いただける、と」
「検討ではない」
国王が、力強く言う。
「叙爵する」
「!」
謁見室が、ざわめく。
「タワーは完成し、開業も果たした。1週間で1,847名……全国から人が集まっている。グリューンヴァルト領の発展は……目を見張るものがある」
国王が、続ける。
「約束は、十分に果たされた」
「陛下……」
レンが、言葉を失う。
「今日、この場で……叙爵の儀を執り行う」
宰相が、前に出る。
「グリューンヴァルト伯爵、レンアスカ・フォン・グリューンヴァルト」
宰相が、厳かに言う。
「その卓越した功績により……」
「ダンジョン・タワーの建設・開業という、王国史上前例なき偉業を成し遂げたことにより……」
「国王陛下カール3世の御名において……」
「汝を、侯爵に叙す」
「……ありがとうございます」
レンが、深く、深く頭を下げる。
「グリューンヴァルト侯爵として……この国のために、引き続き力を尽くしてくれ」
国王が、言う。
「はい。全力を尽くします、陛下」
レンが、膝をつく。
謁見室に、拍手が広がる。
辺境伯が、誇らしそうに頷いている。
(侯爵に……なれた)
レンが、静かに噛み締める。
(でも……まだ、やることがある)
第65話 完
次回予告:第66話「王都への報告・中編」
開業から1週間後。
グリューンヴァルト領。
朝。
ダンジョン・タワーが、今日も活気に満ちている。
スピーカー機能の完成
18階。
監視ルーム。
グンターが、最終確認をしている。
「全ドローン……スピーカー機能、実装完了です」
グンターが、レンに報告する。
「設置型カメラへの音声発信機能も……全ボス部屋、全踊り場、全安全地帯……完了しました」
「ありがとうございます、グンター」
レンが、深く頭を下げる。
「テストしてみましょう」
グンターが、監視ルームの通話装置を操作する。
「1階のドローン……起動」
ドローンが、ダンジョン1階を静かに飛ぶ。
冒険者たちには、見えていない。
グンターが、通話装置に話しかける。
ドローンのスピーカーから、声が出る。
1階にいた冒険者が、きょろきょろと周りを見回す。
「声が……どこから……?」
「見えない……」
冒険者たちが、戸惑う。
「問題ありません」
グンターが、レンに報告する。
「音声は明瞭で、隠密魔法陣も正常に機能しています。声は届くが、ドローンの姿は見えない」
「完璧ですね」
レンが、満足する。
「ボス部屋前の安全地帯への設置型カメラと通話装置も……全て確認しました」
グンターが、続ける。
「戦闘中は扉が開かない。扉が開いた後の冒険者に、すぐ声をかけられます」
「ありがとうございます、グンター。本当に助かります」
レンが、再び頭を下げる。
「担当者の皆さん」
レンが、監視ルームの職員全員を見渡す。
「今日から、スピーカー機能が使えます。危険な状況の冒険者……特にボスを倒した直後に先へ進もうとしている冒険者を見つけた場合は……すぐに声をかけてください」
「はい!」
担当職員たちが、声を揃える。
「ただし……使いすぎは禁物です。本当に危険な状況に限って、使ってください」
レンが、続ける。
「マルク・ベルガーさんのような……見えていたのに、止められなかった……そういう状況を、防ぐためのものです」
「……はい」
担当職員たちが、真剣な表情で頷く。
開業1週間の総括
朝の報告。
1階のギルドエリア。
「開業から1週間の総括です」
エドガーが、前に立つ。
「1週間の総来場者数……1,847名」
「!」
全員が、驚く。
「1日平均、264名です。開業初日の163名から、着実に増えています」
「死者:3名」
場が、静まる。
「マルク・ベルガー様を含む3名です。全員、自己の判断により安全階層を超えての挑戦によるものです。ご遺族への連絡は、全員完了しています」
「怪我人:延べ187名。全員、6階の治療院で治療完了」
「ショップ街全体の売上は、開業当初より順調に伸びています」
「魔石換金も、日々増加しています」
「ドローン・設置型カメラへのスピーカー機能は、本日より稼働開始です。グンター様のご尽力に感謝します」
エドガーが、報告を締めくくる。
「ヴィクトール殿、追加職員の件は?」
レンが、ヴィクトールに聞く。
「本部に申請しています。追加で30名……2日以内に到着予定です」
「よろしくお願いします」
レンが、頷く。
「では……」
レンが、続ける。
「今日から、私は王都へ向かいます」
「!」
全員が、レンを見る。
「辺境伯様と共に参ります。数日、留守にします。その間……ヴィクトール殿とスチュアートさんが、指揮を執ります」
「はい、閣下。お任せください」
ヴィクトールが、力強く答える。
「エドガー」
レンが、エドガーに向く。
「はい、レン様」
「お前も連れて行きます」
「はい」
エドガーが、頷く。
転移魔法で辺境伯邸へ
午前中。
30階。
レンの執務室。
辺境伯ヴォルフガングが、到着している。
「レン殿、準備はよいですか?」
辺境伯が、言う。
「はい。では……参りましょう」
レンが、辺境伯とエドガーを見渡す。
アラクネが、レンの肩に乗っている。
「キュルル~」
「辺境伯様、エドガー……傍に寄ってください」
レンが、静かに言う。
二人が、レンの隣に立つ。
レンが、目を閉じる。
転移魔法を発動する。
一瞬。
光が、三人を包む。
次の瞬間――
辺境伯邸の執務室。
「着きました」
レンが、静かに言う。
「うむ……」
辺境伯が、窓の外を確認して頷く。
慣れたものだ。
辺境伯邸執務室での相談
執事長セバスチャンが、すぐにお茶を運んでくる。
「ご苦労様です、セバスチャンさん」
レンが、頭を下げる。
「恐れ入ります、レン様」
セバスチャンが、下がる。
「さて……」
辺境伯が、お茶を一口飲む。
「今日の謁見……整理しておきましょう」
「はい」
レンが、頷く。
「エドガー、報告事項を」
「はい」
エドガーが、書類を取り出す。
「謁見の間での報告事項です」
「一つ……ダンジョン・タワーの開業報告。来場者数、運営状況、概要」
「二つ……死者の報告。マルク・ベルガー様のことを、正直に報告します」
「以上が、公の場での報告事項です」
「うむ……」
辺境伯が、頷く。
「謁見の間には、他の貴族も同席します。機密事項は……謁見の後、陛下と私的な場で話しましょう」
「はい」
レンが、答える。
「ゲートのこと、転移魔法のこと……」
レンが、続ける。
「電話でも話せることかもしれませんが……直接、顔を合わせてお伝えすべき重要な内容です。そう判断しました」
「そうですな」
辺境伯が、頷く。
「陛下も……そのように受け取ってくださるでしょう」
「侯爵の件も……今日の謁見で話が出るかと思います」
レンが、続ける。
「ダンジョン・タワーの完成をもって……という約束でしたから」
「うむ……タワーは完成し、開業も果たした。約束は十分に果たされています」
辺境伯が、微笑む。
「叙爵されれば……王都での拠点も必要になりますね」
レンが、続ける。
「そうですな……宿では、侯爵として少々……」
「その点も、陛下にご相談できればと思っています」
「良いでしょう」
辺境伯が、立ち上がる。
「では……参りましょうか」
馬車の準備が、既に整っていた。
さすが、セバスチャンだ。
「セバスチャンさん……ありがとうございます」
レンが、頭を下げる。
「恐れ入ります、レン様。道中、お気をつけて」
セバスチャンが、丁寧に見送る。
馬車で王城へ
馬車の中。
辺境伯とレンが、向かい合って座っている。
エドガーが、隣に控えている。
「緊張していますか?」
辺境伯が、聞く。
「……少し」
レンが、正直に答える。
「大丈夫ですよ」
辺境伯が、微笑む。
「陛下は……レン殿のことを、信頼しておられます。正直に……全てお伝えすれば、陛下は必ず理解してくださいます」
「……そうですね」
レンが、頷く。
馬車が、王城の門をくぐる。
謁見の間
謁見室。
重厚な空間。
王座に、カール3世が座っている。
宰相。
将軍。
財務大臣。
複数の貴族が、両側に控えている。
辺境伯が、先に入る。
「ヴォルフガング・フォン・アドラー辺境伯、謁見の栄を賜り、光栄に存じます」
続いて、レンが入る。
レンが、膝をつく。
「グリューンヴァルト伯爵、レンアスカ・フォン・グリューンヴァルト……陛下にお目通りいただき、光栄です」
「面を上げよ」
国王が、穏やかに言う。
「久しいな、レン。ダンジョン・タワーの開業……聞いておるぞ」
「はい、陛下。本日は、正式なご報告に参りました」
レンが、立ち上がる。
「まず……ダンジョン・タワーの開業についてです」
レンが、報告を始める。
「開業から1週間で、延べ1,847名の来場者がありました。冒険者ギルドの職員50名が駐在し、武器・防具・ポーション等のショップ街も稼働しています。治療院も設置し、負傷した冒険者への対応も行っています」
「ほう……1週間で1,847名か」
国王が、感嘆する。
「全国から……冒険者が集まっているのだな」
「はい。日々、来場者数は増え続けています」
「して……死者は?」
国王が、率直に聞く。
「……3名です」
レンが、正直に答える。
謁見室が、静まる。
「全員、自己の判断により、安全な階層を超えての挑戦によるものです。ギルドでの注意事項の説明、サインによる同意……全ての手順を踏んでいます。しかし……防げませんでした」
「……」
国王が、黙っている。
「3名のご遺族への連絡は、全員完了しています。今後……監視体制の強化、システムの改善を続けていきます」
レンが、深く頭を下げる。
「うむ……」
国王が、静かに頷く。
「ダンジョンとは、命がけの場所だ。死者が出ることは……避けられないかもしれん。しかし……お前が誠実に対応していることは、分かった」
「ありがとうございます、陛下」
国王が、座り直す。
「レン……」
「はい」
「ダンジョン・タワーの完成……当初の約束を、覚えておるか」
国王が、静かに言う。
「はい、陛下。ダンジョン・タワーの完成と運営開始をもって……侯爵への叙爵をご検討いただける、と」
「検討ではない」
国王が、力強く言う。
「叙爵する」
「!」
謁見室が、ざわめく。
「タワーは完成し、開業も果たした。1週間で1,847名……全国から人が集まっている。グリューンヴァルト領の発展は……目を見張るものがある」
国王が、続ける。
「約束は、十分に果たされた」
「陛下……」
レンが、言葉を失う。
「今日、この場で……叙爵の儀を執り行う」
宰相が、前に出る。
「グリューンヴァルト伯爵、レンアスカ・フォン・グリューンヴァルト」
宰相が、厳かに言う。
「その卓越した功績により……」
「ダンジョン・タワーの建設・開業という、王国史上前例なき偉業を成し遂げたことにより……」
「国王陛下カール3世の御名において……」
「汝を、侯爵に叙す」
「……ありがとうございます」
レンが、深く、深く頭を下げる。
「グリューンヴァルト侯爵として……この国のために、引き続き力を尽くしてくれ」
国王が、言う。
「はい。全力を尽くします、陛下」
レンが、膝をつく。
謁見室に、拍手が広がる。
辺境伯が、誇らしそうに頷いている。
(侯爵に……なれた)
レンが、静かに噛み締める。
(でも……まだ、やることがある)
第65話 完
次回予告:第66話「王都への報告・中編」
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