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28、再びの共同作業
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王宮の中を全力で走るドレス姿の女は、とてつもなく異様だったでしょう。
しかも、数匹の猫が並走しているのですから。
「あ、トリーシャ様・・・・・・」
「ははは早く出してくださいぃ!」
「え、え、ええ?」
乗り場で見つけた、ロドニー伯爵家の馬車――お父様が手配してくれたそれに飛び乗ると、私は御者を急き立てて、王宮を後にしました。
「あああ、どうしましょう・・・・・・」
馬車の中で、私はただただ後悔に苛まれていました。
『病弱なお飾り妻』である私が、あのようなはしたない真似をする所を見られてしまって・・・・・・しかも、醜い顔も見られてしまいました・・・・・・。
きっと、ブライアン様は、私に失望している所でしょう。
どうしましょう・・・・・・このまま、ハーキュリー伯爵邸へ戻っても、ブライアン様とどう過ごしたら・・・・・・。
こんな私では、離縁を申し渡されるかもしれません。
違約金を稼げるかしら・・・・・・やっぱり、また王宮で働かないと・・・・・・。
馬車に揺られながら思案に耽っていた私は、この時まで異常に気が付きませんでした。
猫達の鳴き声と、人の叫ぶ声・・・・・・そして、馬車が止まりました。
「あんた、どういうつもりだ!」
「すまない、妻と話をさせてくれ!」
「え、じゃあ、あんたが・・・・・・」
外から聞こえるのは、御者と誰かの話し声。
この声は、もしかしてブライアン様!?
窓の覆いを開けると、再び、麗しいお顔と目が合ってしまいます。
「ああ、トリーシャさん。急に馬車を止めて済まない・・・・・・怪我はないか?」
「は、はい・・・・・・」
先程までの遣り取りを感じさせない、爽やかな笑顔に、思わず呆気に取られてしまいました。
ブライアン様の手には手綱が握られていて・・・・・・どうやら、馬で追い掛けてきたようです。
優秀な騎士様は、馬術も得意なのですね・・・・・・。
「話がしたい。開けてくれ」
「え、む、無理です」
扉を叩くブライアン様・・・・・・一緒の馬車に乗るなんて、恥ずかしくてとても・・・・・・。
ですが、そんな私を裏切るかのように、猫達が鍵をかちゃかちゃと弄ります。
ああ、何てことでしょう。
扉は簡単に開いてしまいました。
「お前、賢いな」
猫の頭を撫でながら、ブライアン様は向かいに座ります。
止まった馬車の中、ブライアン様と二人・・・・・・どうして、こんなことになったのでしょう。
ブライアン様の顔を直視することが出来ず、私は俯いたままでした。
そんな私の髪を、ブライアン様は手に取ります。
幼い頃、カーライルに引っ張られた時とは違う、慈しむような優しい手つき・・・・・・一つに括った髪を、何度も指で梳かれます。
ただ髪を触られているだけなのに、それだけで、胸が苦しくて・・・・・・。
「貴女が、猫の大将だったんだな」
猫の大将・・・・・・私の、猫を集める体質のことを言っているのでしょう。
静かな問いかけに、私は頷くことしか出来ませんでした。
しかも、数匹の猫が並走しているのですから。
「あ、トリーシャ様・・・・・・」
「ははは早く出してくださいぃ!」
「え、え、ええ?」
乗り場で見つけた、ロドニー伯爵家の馬車――お父様が手配してくれたそれに飛び乗ると、私は御者を急き立てて、王宮を後にしました。
「あああ、どうしましょう・・・・・・」
馬車の中で、私はただただ後悔に苛まれていました。
『病弱なお飾り妻』である私が、あのようなはしたない真似をする所を見られてしまって・・・・・・しかも、醜い顔も見られてしまいました・・・・・・。
きっと、ブライアン様は、私に失望している所でしょう。
どうしましょう・・・・・・このまま、ハーキュリー伯爵邸へ戻っても、ブライアン様とどう過ごしたら・・・・・・。
こんな私では、離縁を申し渡されるかもしれません。
違約金を稼げるかしら・・・・・・やっぱり、また王宮で働かないと・・・・・・。
馬車に揺られながら思案に耽っていた私は、この時まで異常に気が付きませんでした。
猫達の鳴き声と、人の叫ぶ声・・・・・・そして、馬車が止まりました。
「あんた、どういうつもりだ!」
「すまない、妻と話をさせてくれ!」
「え、じゃあ、あんたが・・・・・・」
外から聞こえるのは、御者と誰かの話し声。
この声は、もしかしてブライアン様!?
窓の覆いを開けると、再び、麗しいお顔と目が合ってしまいます。
「ああ、トリーシャさん。急に馬車を止めて済まない・・・・・・怪我はないか?」
「は、はい・・・・・・」
先程までの遣り取りを感じさせない、爽やかな笑顔に、思わず呆気に取られてしまいました。
ブライアン様の手には手綱が握られていて・・・・・・どうやら、馬で追い掛けてきたようです。
優秀な騎士様は、馬術も得意なのですね・・・・・・。
「話がしたい。開けてくれ」
「え、む、無理です」
扉を叩くブライアン様・・・・・・一緒の馬車に乗るなんて、恥ずかしくてとても・・・・・・。
ですが、そんな私を裏切るかのように、猫達が鍵をかちゃかちゃと弄ります。
ああ、何てことでしょう。
扉は簡単に開いてしまいました。
「お前、賢いな」
猫の頭を撫でながら、ブライアン様は向かいに座ります。
止まった馬車の中、ブライアン様と二人・・・・・・どうして、こんなことになったのでしょう。
ブライアン様の顔を直視することが出来ず、私は俯いたままでした。
そんな私の髪を、ブライアン様は手に取ります。
幼い頃、カーライルに引っ張られた時とは違う、慈しむような優しい手つき・・・・・・一つに括った髪を、何度も指で梳かれます。
ただ髪を触られているだけなのに、それだけで、胸が苦しくて・・・・・・。
「貴女が、猫の大将だったんだな」
猫の大将・・・・・・私の、猫を集める体質のことを言っているのでしょう。
静かな問いかけに、私は頷くことしか出来ませんでした。
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