1 / 8
第1話 蝶は夢を見る
しおりを挟む
ここはオメガの男だけが暮らしている娼館BLゲームの世界。
BLゲームなので、女という存在はいない。
俺はものごころつく前からここにいた。
生まれた時からなのか、生まれた直後からなのかはわからない。
捨てられたのか、売られたのかもわからない。
もしかしたら、ここで暮らし身体を売る誰かの腹から生まれたのかもしれない。
真実を教えてくれる者など誰もいない。
なにも知らぬまま俺はここで育ち、暮らしている。
初めて身体を開いたのは何歳の時だったか。
記憶は曖昧で、手に届きそうで届かない。まるで霞をつかむように不確かで、そんな現実があったのか、なかったのかさえもよくわからない。
俺はただ、流れのままにここで生きていた。
なにかを疑問に思うこともなく、なにかを信じることもなく。
客が来れば身体を開き、求められるまま尻を振る。
より淫らに、魅惑的に。
それしかここでは価値がないから。
客のほとんどは裕福層のアルファだ。
じいさんから若い男までいる。
中には童貞をここに捨てにくる男もいる。
アルファとは、この世界でもっとも優秀な個体だ。
知力、体力、経済力、すべてを兼ね備えている。
官僚や政治家も多く、国を動かしているのはほとんどアルファだ。
この娼館を作ったのも、アルファなのだろう。
質のいいオメガを集め、気が向いた時にふらりと立ち寄り、享楽に耽る。そのためだけの存在が俺たちだった。
発情期のオメガがもっとも好まれる。
オメガには三ヶ月に一度の割合で、発情期が起こる。
発情期は一週間ぐらい続き、オメガのヒートに当てられたアルファは発情を起こし、狂ったようにオメガを抱く。
一週間ずっと絶倫のように抱き続ける客も中にはいた。
だが、ここで働くオメガたちは高い。
高級娼館だからだ。
なので、アルファの中でもさらに金持ちのアルファにしか、俺たちを抱く権利はなかった。
そんな客たちにおかしなオメガをあてがうわけにはいかないので、俺たちの健康管理は徹底されている。
この世にはアルファ、ベータ、オメガがいる。
唯一、オメガだけが妊娠できる。
万が一のことがあって、客の子を妊娠したりしないように、俺たちオメガは避妊のために毎日ピルという薬を飲むことになっている。
発情抑制剤は飲まない。
客の中にラット抑制剤を飲んでいる人はたまにいる。
アルファとオメガはつがいになることができるが、間違って客に噛まれたりしないように、俺たちオメガの首にはチョーカーがついている。
オメガはアルファにうなじを噛まれたら、つがいになってしまう。
望む望まない関係なく。
つがいになったら永遠の伴侶だ。
好きな相手ならいいが、そうでなかったら地獄だ。
客が気まぐれでうなじに噛みついたりしないように、賠償金が設定されている。
アルファに噛まれたオメガはもう、商売道具としては役に立たなくなるからだ。
オメガはアルファに噛まれた瞬間から、発情期に不特定多数を惹きつけるフェロモンが出なくなる。
フェロモン自体は無くならないが、つがいのアルファにしか効かなくなる。
通常ならなんら問題ないことなのだが、娼館では困る。
なので、噛みついた客は高額な賠償金を支払うか、噛んでしまったオメガを引き取るか、どちらかになる。
この時、噛んだアルファが、やはりオメガはいらないとなった場合、賠償金だけ支払って、オメガは捨てられることになる。
客のアルファからも、娼館からも。
捨てられたオメガの末路は地獄だ。
つがいになったアルファから捨てられたオメガは、発情期はなくならないのに、誰ともセックスできない身体になる。
厳密に言うと、できなくなるわけではないのだが、精神的な強いストレスで苦しむことになる。
つがいのアルファ以外を受け入れられなくなるのだ。
新しいアルファとつがいになるということもできない。
オメガたちは間違って客にうなじを噛まれたりしないよう、細心の注意を払わねばならない。
強引でやばい客がいて噛まれそうな時は、娼館のスタッフにSOSを出せることになっている。
ベッドのよく見えない場所にブザーが用意されており、危険を感じた時はそれを押すことになっていた。
BLゲームなので、女という存在はいない。
俺はものごころつく前からここにいた。
生まれた時からなのか、生まれた直後からなのかはわからない。
捨てられたのか、売られたのかもわからない。
もしかしたら、ここで暮らし身体を売る誰かの腹から生まれたのかもしれない。
真実を教えてくれる者など誰もいない。
なにも知らぬまま俺はここで育ち、暮らしている。
初めて身体を開いたのは何歳の時だったか。
記憶は曖昧で、手に届きそうで届かない。まるで霞をつかむように不確かで、そんな現実があったのか、なかったのかさえもよくわからない。
俺はただ、流れのままにここで生きていた。
なにかを疑問に思うこともなく、なにかを信じることもなく。
客が来れば身体を開き、求められるまま尻を振る。
より淫らに、魅惑的に。
それしかここでは価値がないから。
客のほとんどは裕福層のアルファだ。
じいさんから若い男までいる。
中には童貞をここに捨てにくる男もいる。
アルファとは、この世界でもっとも優秀な個体だ。
知力、体力、経済力、すべてを兼ね備えている。
官僚や政治家も多く、国を動かしているのはほとんどアルファだ。
この娼館を作ったのも、アルファなのだろう。
質のいいオメガを集め、気が向いた時にふらりと立ち寄り、享楽に耽る。そのためだけの存在が俺たちだった。
発情期のオメガがもっとも好まれる。
オメガには三ヶ月に一度の割合で、発情期が起こる。
発情期は一週間ぐらい続き、オメガのヒートに当てられたアルファは発情を起こし、狂ったようにオメガを抱く。
一週間ずっと絶倫のように抱き続ける客も中にはいた。
だが、ここで働くオメガたちは高い。
高級娼館だからだ。
なので、アルファの中でもさらに金持ちのアルファにしか、俺たちを抱く権利はなかった。
そんな客たちにおかしなオメガをあてがうわけにはいかないので、俺たちの健康管理は徹底されている。
この世にはアルファ、ベータ、オメガがいる。
唯一、オメガだけが妊娠できる。
万が一のことがあって、客の子を妊娠したりしないように、俺たちオメガは避妊のために毎日ピルという薬を飲むことになっている。
発情抑制剤は飲まない。
客の中にラット抑制剤を飲んでいる人はたまにいる。
アルファとオメガはつがいになることができるが、間違って客に噛まれたりしないように、俺たちオメガの首にはチョーカーがついている。
オメガはアルファにうなじを噛まれたら、つがいになってしまう。
望む望まない関係なく。
つがいになったら永遠の伴侶だ。
好きな相手ならいいが、そうでなかったら地獄だ。
客が気まぐれでうなじに噛みついたりしないように、賠償金が設定されている。
アルファに噛まれたオメガはもう、商売道具としては役に立たなくなるからだ。
オメガはアルファに噛まれた瞬間から、発情期に不特定多数を惹きつけるフェロモンが出なくなる。
フェロモン自体は無くならないが、つがいのアルファにしか効かなくなる。
通常ならなんら問題ないことなのだが、娼館では困る。
なので、噛みついた客は高額な賠償金を支払うか、噛んでしまったオメガを引き取るか、どちらかになる。
この時、噛んだアルファが、やはりオメガはいらないとなった場合、賠償金だけ支払って、オメガは捨てられることになる。
客のアルファからも、娼館からも。
捨てられたオメガの末路は地獄だ。
つがいになったアルファから捨てられたオメガは、発情期はなくならないのに、誰ともセックスできない身体になる。
厳密に言うと、できなくなるわけではないのだが、精神的な強いストレスで苦しむことになる。
つがいのアルファ以外を受け入れられなくなるのだ。
新しいアルファとつがいになるということもできない。
オメガたちは間違って客にうなじを噛まれたりしないよう、細心の注意を払わねばならない。
強引でやばい客がいて噛まれそうな時は、娼館のスタッフにSOSを出せることになっている。
ベッドのよく見えない場所にブザーが用意されており、危険を感じた時はそれを押すことになっていた。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる