神速の大魔導師 〜使える魔法が一種類でも最強へと成り上がれます〜

Ss侍

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第11話 試験の当日

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「えー、これより! 第178回エンジール町、全学び舎合同実力試験を始める!」


 この町を管轄する貴族のエンジール卿が、儀式も行ったこの町一番の教会、そこに設備されている試験会場の壇上でそう宣言した。
 いつもなら代理の人が来るらしいけれど、『魔導剣聖』が居るからか、珍しく本人が出てきた。

 集まっている同年齢の子供は、儀式を行った時より四割くらいの人数になっている。
 儀式が十四歳になった子は強制的に全員参加なのに対し、今回は学び舎に通っている子供限定の行事。様々な事情で学び舎に通っていない子だってたくさんいる。

 まあ、そもそも世界規模で見れば学び舎に通ってる子供の方が少ない。なぜなら学び舎自体がそれなりの規模の街でないと建てれないから。
 この町は学び舎が四校あるので、そこそこ大きい町といえる。

 それぞれの学び舎の校長、今回の試験における試験官やその補佐の挨拶があったあと、開始前の最終準備が始められた。
 試験官の一人であるブライト先生が前に出てきて、魔法を唱える。
 

「テストホール!」


 この魔法は知っている。
 実力試験や、ここよりもっと大きな街にあるという闘技場で使われる防御壁だ。
 この透明なホールの内側からの攻撃は外側にほぼ通さず、外側からの攻撃は内側にすんなり通る。要するに内側で何かあったときにすぐに対処できるようになっているというわけ。
 今回は3つあるから、一度に三試合行われるのだろう。


「準備できました」
「ご苦労、ブライト氏。ではこれより、第一試合の組を発表する!」


 再びエンジール卿が前に立ち、紙を広げてその内容を読み上げ始めた。この組み合わせは完全にランダムらしいので、いつ呼ばれるかわからない。みんなソワソワし始める。


「第一ホール、ネジマ校よりオツガ・ダシーノ。『剣士』、魔法3種に能力2! ゼンマ校よりスッパ・レモジウィル。『上級魔導師』、魔法13種に能力3!」


 剣士系の下級対、魔法使い系の中級の戦いか。
 座っていた生徒達の中から、呼ばれた二人が第一ホールへと向かう。二人とも顔がこわばっており、緊張しているのがよくわかる。


「第二ホール、グリス校よりトルーテ・アルフォンス。『上級剣士』、魔法3種に能力4! ネジマ校よりセーロガ・ハイテテラ、『鞭使い』、魔法2種に能力4!」
「わ、私だっ……!」


 もう同級生が呼ばれるとは思わなかった。
 近場にいるからよくわかる。トルーテさんは動悸が激しくなっており、顔色も青くなっている。割と気の強い彼女だけれど、いつものようには流石に行かないようだ。


「が、頑張ってトルーテちゃん!」
「き、緊張することねーぞ、遅かれ早かれみんなこうなるんだからな!」
「う、うん……頑張ってくる……」


 トルーテさんは重い足取りで第二ホールと定められた場所まで向かっていった。あとは第三ホールが埋まればルール説明の後に始まるだろう。


「第三ホール、グリス校よりマホーク・アクスレイ。『戦斧武人』、魔法5種に能力3!」
「俺か!? まあいいぜ、やってやんよ!」
「またうちのクラスからか!」
「まさか初っぱなからマホーク君とはねー」


 僕もみんなと同じ感想だ。同級生から最初に二人も呼ばれるとは思わなかった。
 マホーク君……僕のことを大嫌いと言っていたっけ。いつから嫌いだったんだろう。まあ、よく考えたら付き合いそんなになかったし深く考える必要もないかもしれないけど。


「そして……再びグリス校より、ギアル・クロックス! 『大魔導師』、え、えー……魔法1種に……能力2!」
「え?」


 聞き間違いじゃないだろうか。聞き間違いじゃないんだろうな。みんな同じ内容をしっかりと聞いていたような反応してるし。


「ぎ、ギアル君だと!?」
「ギアルとマホークの戦い!?」
「嘘だろ……」


 流石に驚いた。これだけ同じ学校が立て続けに呼ばれることとか、僕自身が同級生と戦うこととか。
 戦いにくくならないよう、なるべく他校同士で競わせるって噂を聞いたことがあるんだけど、そうでもなかったようだ。

 仕方ないので、僕もマホーク君に続き第三ホールへ向かう。

 それにしても、こうして立ち上がってよく見たら生徒達と開催側以外の観客もすごい人数だ。
 誰も彼もが、遠くからやってきたギルドのマスターだったり、騎士団の団長だったり、王国直属のスカウトマンだったり……そういう、僕らを雇う側の人たちなんだろう。

 この人達に実力を見せるんだ。それが本来のこの試験の目的。スカウトしてくる団体次第で僕の今後も決まる。
 だからたとえマホーク君が相手だったとしても、僕は出せる限りの力を出さなきゃいけない。


「クスクス、あれがギアルでしょ? 補助の一種しか魔法を使えない大魔導師……」
「可哀想だよな、実質『魔法使い』以下が『戦斧武人』と戦わされるだなんて」
「そもそもなんで参加してるんだ? 自殺行為だろ」
「見栄でしょう見栄! 下らない見栄。なんでも噂の魔導剣聖の幼なじみらしいですぞ」
「ほほう。ま、殺されないうちに止めてやるべきですな」


 やっぱりどうにも僕に対する評価は低いようだ。想定の範囲内だけど、ブライト先生と校長から「お父さんに頭を下げて司書にならないか」と言われたあの時同様にムカムカする。
 
 それにスカウトしにきた人達以外でも、他校の生徒達や先生方も同じような噂をしているようだ。
 だから第一ホールから第三ホールまでで一番、僕がいる第三ホールが注目されている。あまり良くない意味で。

 僕とマホーク君は第三ホールの真ん中までやってきて、試験官の人に指定位置に立つよう言われた。


「良いかね? それではギアル君とマホーク君よ、この中から得物を選びなさい」


 試験官はバッグから武器をいくつも取り出す。素人同士の戦いなので全部木製だ。


「俺はもちろん、戦斧を選ぶぜ」
「ギアル君、君は?」
「……僕は決まってません。必要ないです」
「えーっと、君のことはワシも把握しとる。事情ありとはいえ、一応魔導師なんじゃから魔法杖くらいは……」
「いりません。このまま行きます」


 そう、僕は今日まで自分の得物が決まらなかった。
 杖を持たずに魔法の特訓ばかりしていたら、武器を決める暇も、杖に慣れる時間もついには無くなってしまった。
 お姉ちゃんの協力の一部を無駄にしてしまったことを申し訳なく思う。
 
 たしかに魔法使い系は杖を待つことが基本。魔力の消費を抑えられ、魔法の威力が上がるから。
 お姉ちゃんだって普段は杖を愛用しているらしい。
 でも僕は……もう杖なしが慣れてしまった。少なくとも、このような大事な舞台で慣れないことを選択するつもりはない。やるとしたら明日以降だ。


「……まあ、諦めるならそれで良いじゃろう。ワシもお主のことは可哀想だと思っておる」
「はっ。まあ、仕方ねーよなギアル。お前のことは大嫌いだけど、同級生として同情だけはしてやるよ。だが俺はお偉い様方にアピールしなきゃいけない。降参するまえに死ぬかも知れねーけど、ま、恨むなよ?」
「うん、どうなってもお互い恨みっこなしにしよう」


 マホーク君の方からそう言ってくれるならやりやすい。それじゃあ気兼ねなく、予定通り全力を出してみようかな?





==========
(あとがき)
※今日は午後11時にも投稿します!

『魔法:テストホール』

 『空間』の種類の魔法を扱える者が覚えることができる。テストホールの効果である、「中からの攻撃を全て防ぐ」効果は、あくまでテストのものであるため色々と規制がゆるい。そのため戦闘で使用できる上位互換のものが存在する。
 また、普通の魔法のように自然と覚えることはできず、あらかじめ決まった習得方法を覚え、それに則って空間魔法の鍛錬を行わなければならない。
 比較的数が少ない『空間』の種類の魔法を扱え、なおかつ特別な習得手順が必要なため、この魔法を扱える者は優遇される傾向にある。

 
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