神速の大魔導師 〜使える魔法が一種類でも最強へと成り上がれます〜

Ss侍

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第13話 ライバル

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 五時間経って全ての試合が終わった。
 負けた人、勝った人。負けてもカッコいい試合をした人、勝っても醜態を晒した人。本当に様々だった。

 僕自身この状況はなんと言えばいいのだろう。今は同級生達からは変な目で見られ、大人達からは何も噂されていない。怪我が完治して戻ってきたマホーク君からもなにも言われない。

 あの一試合目から誰もずっと僕に声をかけて来ていないんだ。
 席に戻る途中も、戻ってからも驚愕の表情を向けられるだけ。

 壇上に再びこの町を管轄する貴族であるエンジール卿が登ってくる。開会の時と同様に紙を広げ、その内容を話し始める。


「皆、ご苦労だった。これにて第178回エンジール町全学び舎合同実力試験を終了する……と言いたいところだが、今回は一人、まだ試験を受けていない者がいる。それは皆、記憶しているであろう。五十年に一度の逸材、『魔導剣聖』のアテス・ミディアだ」


 ここでアテスの名前が呼ばれるとは思っていなかった。たしかに一度も試合していなかったけど、もう所属する先が決まってるから必要ないのだと思ってた。
 

「アテスは強すぎる。そのために、今回は特例としてアデスが直々にこの中から試合相手を選ぶこととなった! 上からの申し出でな……。無論、強制ではないが再び実力をアピールするチャンス故、指名された者はなるべく受けて立つように。ではアテス・ミディア。ここに来なさい」


 このクラスの場にはいなかったアテスが校長先生がいる辺りから出てくると、壇上へあがってエンジール卿の真横に立った。


「では、相手を選ぶがいい。指を挿すでもよし、名前を呼ぶでも良しだ」


 僕とアテスの目があった。いや、向こうから目を合わせてきた。エンジール卿がアテスの名前を出した時からなんとなく予感していた。
 アテスはゆっくりと口を開く。


「ギアル・クロックス……彼でお願いします」
「なに、例のあの子か!? ……なるほど、わかった。ギアル・クロックス、こちらに来なさい」


 僕は座ってるみんなの間を縫って前に進む。視線が、僕とアテスだけに向けられている。
 今は自分に速度魔法をかけていないので、たどり着くまでにそこそこ時間がかかってしまった。


「お待たせしました」
「……うむ。ではギアルよ、アテスと試合をお願いできるかね?」
「はい、望むところです」
「いい返事だ。では始めよう。……ブライト氏、ホールの貼り直しとそのまま試験官もお願いしたい」
「了解しました」


 エンジール卿に言われた通り、ブライト先生は『テストホール』を唱え直し、僕たちはその真ん中に移動させられた。
 目の前にアテスが立っている。夢を語る前よりも活気に溢れた表情で。
 

「……ごめんね、ギアル。いきなり指名しちゃって」
「いいよ。エンジール卿も上からの申し出って言ってたし」
「二人とも申し訳ない。本来なら試合免除だったのですが急に、城の方から派遣されてきた御方が実力を見たいと言い出しまして」


 なるほど、本当はやっぱり免除だったんだ。
 その上から来た人は試験を見てて盛り上がっちゃったんだろうか。それとも単純にアテスのことを知っておきたくなったのか。たぶん後者かな。


「ボクはその方が都合がよかったですよ、せんせ。この試験をボクとボクのライバルとの一番最初の力比べにできるなんて」
「ライバル……そうですか、親友でライバル。いいですね。担任の私としてはどちらにも怪我をして欲しくないですが。とりあえず、得物を決めましょうか」


 先生はバッグから木製の武器一式を取り出した。
 『魔導剣聖』の名の通り、アテスは木の剣。僕はやっぱりなにもなし。


「ギアル君。本来の試合でもそうでしたが、今度の相手は流石に……」
「せんせ、ボク達の担任やって長いでしょう? ならわかるはず。ギアルが素手いいなら、素手がいい理由があるんですよ?」
「アテスの言う通りです、先生」
「……そうでしたね。私とした事が先週といいギアル君には無礼ばかり……。申し訳ありません」


 ブライト先生はボクに向かって頭を下げた。大勢が見てるのに、そのことは気にしていないようだ。


「まだまだ話したいことはありますが、時間が迫ってます。始めましょうか。二人とも距離をとって。……私は離脱します。お互い頑張って」


 ブライト先生が『テストホール』の中から去って行った。エンジール卿が試合開始の合図をし、ラッパの音が鳴る。
 始まった。僕たちの戦いが。


「ボクは嬉しいよ、最初の試合を見てた。何をしたのかよくわかんないけど、とにかくギアルは本当に強かった! ボクの知ってるギアルだった! ボクの尊敬してるギアルのままだった! だから、君を超えるためにボクは本気で行く。君を倒せば、ボクは自信を待てそうなんだ」
「……わかった。じゃあ僕もやれる限りのことはするよ」


 アテスは離れているにもかかわらず、僕に剣の切っ先を向けてきた。おそらくあれは魔法を撃ちやすくするためだ。


「ビー・フレイム!」
「二段階目の【多発魔法】だとっ!?」


 誰かがそう叫んだ。
 その通り、一度の詠唱で二段階目に到達している炎魔法の魔法陣を三つ出してきた。
 【多発魔法】は最初から備わってて、その上で僕と同じように魔法が成長しやすい才能もあったんだと思う。

 ……ああ、そっか。魔法陣見てピンときた。
 みんなが驚いた表情だけを浮かべて話しかけてきてくれなかった理由はこれだ。
 【脳内詠唱】と【不可視の魔】の併用をしたせいで、何がどうなったかわからず、僕を不気味がってたんだ。
 なら、わざとその二つを披露すれば、良いパフォーマンスになるのだろうか。


「シィ・スピダウン!」
「な、ななな、な、なにぃいいいい!?」
「三段階目……魔法陣はいくつある! 一度の詠唱で10は超えてるぞ!?」
「それより、みろ、魔法自体に補助魔法をかけてるぞ!?」
「なんなのあれ……私もあんなことできないわ……」


 勘は当たってたみたいだ。最初から魔法陣を公開すればよかったんだね。

 僕の魔法を受けたアテスによる三つの炎塊は、魔法陣から出てすぐに空中停止したように動きが遅くなってしまっている。
 その様子を見てアテスは目を輝かせていた。


「すごい、すごいよ! ギアルすごい! 僕も補助魔法あるけど、こんなことできないよ!」
「ふふふ、でも試合はまだまだこれからだよ」






==========
(あとがき)
※今日も午後11時にもう1話投稿します!

【脳内詠唱】
 魔法を脳内で考えるだけで発動できるようになる。決して詠唱をしていないのではなく脳内できちんと唱えており、それを口に出していないだけであるため、魔法陣を出せる速さは普通の詠唱よりほんの少し優っている程度。

【不可視の魔】
 魔法陣を見えなくする。しかし魔法陣自体は存在しているため、魔法陣を破壊するなどの技は普通に効果がある。また、透明にする分普通より魔力を一割増しで消費する。

 なお、これらは自由にオンオフができる。


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