神速の大魔導師 〜使える魔法が一種類でも最強へと成り上がれます〜

Ss侍

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第18話 案内

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「おう、若! おかえり!」
「若! 1週間ぶりさね!」
「みんな、ただいま」


 ギルドの中に入ると、マスターの顔を見た何人かが彼に声をかけてきた。どうやらマスターやギルマスではなく、『若』と呼ぶ人が多いみたいだ。
 たしかに序列が一桁のギルドマスターとしてはかなり若いから、そう呼ばれるのも不思議ではない。


「……若、もしかしてその子があの……魔法が一種しか使えないっていう……」
「そう! 今世間で話題の大魔導師、ギアル君だ」
「よろしくお願いします」
「魔法のことはよくわからんが、とりあえず育ちが良さそうな顔してらぁ」


 どうやら僕の話はすでにギルド内に広まっている様子。王都からエンジール街がそこそこ近いせいで、僕やアテスの話がすぐに届いたんだろう。


「こんな坊ちゃまって感じの子が魔導剣聖に勝ったんでしょう?」
「若、実際見たんだろ? その現場を」
「ああ、見たからスカウトしたんだよ。さ、積もる話はまた今度にしよう。今はとりあえず、この子をうちの一員に向かい入れなくては」
「それがいい」


 マスターがそういうと、続々と集まってきていたギルドの皆さんは道を開けてくれ、僕たちはその中を進んだ。みんな僕に興味津々といった様子。
 そしてその先にある『総合受付』と書かれた場所の前に立った。カウンターの先にはエルフの受付嬢。前々からギルドの顔役はエルフ族の女性が多いと聞いていたけれど、どうやらここも例外ではないらしい。


「マスター、おかえりなさい。その子が例の大魔導師くんですか」
「その通りだニル。さっそくうちの冒険者として登録してほしい」
「よろしくお願いします」
「はい、よろしくね! では名前と儀式で判明した内容をこちらの用紙に記入し、この黒い板に数秒間手を触れてください」


 言われた通りに事を済ませると黒い板が明るく光った。ニルさんはどこからか一枚のカードを取りだし、それを光ってる板の窪みに差し込む。
 しばらくして『ブレーメン:Eランク ギアル・クロックス(大魔導師)』等と僕の情報が先程のカードに書き記された。
 そして僕のおいた方の手には四匹の動物が重なったような紋様が浮かび上がる。


「はい、これで登録完了です!」
「それじゃあ改めてよろしく、ギアル」
「はいっ!」
「いい返事だ……へいロバート!」


 マスターは指を鳴らしながらいきなり誰かを呼びつけると、二階からギターを持っている男性が顔を出した。
 マスターから馬車内でこのギルド特有の出来事について聞かされている。何かあるたびに誰かが勝手に演奏を始めるか、演奏をするよう楽器を持った人に頼むそうだ。常に音楽が鳴り響いているギルド、それがブレーメン。


「はいよ若」
「この子の入団祝いにいい感じの歓迎の曲、一曲頼む」
「よしきた」


 ロバートという人が演奏を始めた。心地よく胸に響くギターの音が彼を中心に奏でられる。
 このギルドは別に音楽を嗜むことを強要されてはいない。楽器を弾けず、歌も歌えない所属員だって沢山いる。しかし、音楽嫌いの人が入ることはないらしい。

 僕はどっちでもない。でも、手に入れた能力のせいで本を読むという趣味が時間潰しにはあまり使えなくなったから、新しい趣味として何か楽器を始めるのも悪くないかも。

 ロバートさんが一曲弾き終えて、今この場にいるメンバーの半数以上が拍手をする。マスターも隣でパチパチ鳴らしていたので、僕も釣られて手を叩いた。

 それからはマスター直々にギルド内の施設の案内をしてくれた。ギルドとして当然な依頼の受付場所や依頼場所、掲示板。他にも簡単な売店や、技の練習場、浴場、トレーニングルーム、食堂など。国内ギルド序列五番目にふさわしいボリューム。

 音楽好きのギルドらしく騒がしいのが好きなのか、大半を一般の方も使用できるようにしてある。
 手入れも行き届いてるし、使い勝手も良さそうだし、そもそも建物のデザインからして嫌いじゃない。あらためてこのギルドに決めて良かったと思う。


「後で案内図も渡しておくよ。あとは宿舎と、提携を組んでいる店の紹介かな。一旦外に出よう」
「はい」


 宿舎はギルドに隣接されていた。建物のデザインはギルドとほぼ一緒。別館にしか見えない。ギルドメンバーの半数がここに寝泊まりし、残り半数は他の好きな借家を見つけるか持ち家で過ごしているらしい。

 僕の部屋は既に決められており、二階の、窓から城が見える陽の入りが良さそうな部屋だった。一人や二人で過ごすには十分なスペースと設備が整っている。


「どうかな、ここでいい?」
「ええ、申し分ないです」
「良かった。手続きさえすれば他の借家に移ったりするのは自由だから。最初の三ヶ月は費用はいらない。四ヶ月目からは月四万ハンスもらうよ」
「わかりました」


 馬車の中に残していた荷物をこの部屋に移してから、ギルド近辺のお店の紹介に移る。ここらへんの地域はブレーメン以外にもいくつかギルドがあるため、お店がかなりの数が並んでいる。
 さすが序列上位のギルドだけあって、ここら一帯すべてのお店に顔が効くらしい。

 依頼をこなしているうちに入手したさまざまな物を売ることができる商店や、武器屋と鍛冶屋、飲食店……僕は大人になっても入るつもりはないイケナイお店。見る分には楽しい。

 ともかく、あとで武器屋や商店にも寄っておく必要がある。これから過ごすのに必要な物を揃えなきゃ。

 ギルドに登録してから2時間後、すべての案内が終わった。マスターのおかげで大体把握できた。生活していくのにお金さえあれば不自由はなさそうだ。


「それじゃあ、今日はここまで。仕事は説明含め明日からにしよう。あんまり一日にたくさん情報を詰め込んでもいいことないしね。このあとは自由だ。部屋に戻って過ごすのもいいし、お店を見て回るのもいい」
「わかりました。ありがとうございました!」
「いいんだよ。ここだけの話、俺はギアルを贔屓するつもりだから……あ、内緒だぞ今のは。それじゃ、仕事に戻るよ」


 そう言ってマスターはギルドに戻っていった。
 さて、まずお店に生活用品などを探しに寄るかな。




==========
(あとがき)
※明日は午後六時と午後11時の二本投稿します。

 ブレーメンの音楽隊といえばロバ。
 ロバだからロバートですね。

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