21 / 43
第21話 冒険者としての仕事
しおりを挟む
翌日。仕事の説明をしてもらえる時間を聞くのを忘れていたので、開館する時刻丁度にギルドへやってきた。
すぐにマスターを発見したので、話しかけてみる。
「おはようございますマスター」
「おお、おはようギアル。早くない?」
「すいません、残りの説明について何時にお伺いしたらいいか尋ねるのを忘れてしまっていて。不安だったので早くきました」
「あー、それは君が忘れてたっていうより、俺が忘れてたんだね。ごめん。説明だけなら今すぐできるけど?」
「ではお願いします」
マスターはさっそく仕事の受け方についての説明を始めた。
ギルドは依頼人と冒険者の仲介場でもあり、古今東西様々な場所からやってくる依頼を、所属している冒険者に紹介している。
チームなど複数人でないと受けられないものや、魔物の討伐、生け捕り、地質調査など様々な種類の依頼があり、それらのような条件もきちんと確認する必要がある。
依頼の受け方は、依頼掲示板というコーナーに貼ってある依頼用紙を剥がして受注受付に持っていくか、その受付の人に直接尋ねるか。名を挙げると指名される場合があり、その時はギルドの職員さんが声をかけてくるらしい。
また、依頼は難易度によってランク分けされ、それと同等以上のランクに当てられた冒険者しかその依頼を受けることができない。
そのランクを上げるにはとりあえず名声や良い評価、評判を得ればいい。
今の僕は最低のFランク。いくら優秀でも、誰しもがこのランクからスタートだ。でも優秀ならそれだけ昇級も早いみたい。
最高ランクはSランク。もちろんこのギルドにもSランクの人はいる。
他にも、依頼品の納品の仕方とか、依頼キャンセル時の対応とか、仕事をしていく上で必要なことを余すことなく教えてもらった。今からでも仕事ができそうだ。
「ギアルならたぶん、もう覚えちゃったよね」
「はいバッチリです。ありがとうございます」
「よし。それでね、今から一時間後くらいに君より一つ上の年齢の子たちが三人集まったCランクのパーティがやってくる。その子たちについて行って仕事を体験して欲しいんだよ。話はつけてあるからさ」
「わかりました」
それから一時間待つことになった僕は、食堂で朝食を食べ、図書館から借りてきた、鞭の扱いについての本を目立つ場所で繰り返し読むことで時間を潰した。
そしてマスターが言った通りの大体の時間にそのCランクパーティの三人組が僕の前に現れた。ちなみにパーティとしてCランクなのであって個々人ではそれぞれDランクみたい。三人揃ってCランク一人分ということらしい。
「あんたがギアルのクロックスなのかぃ?」
「緑髪の中性的な顔立ちの子、間違いないね」
「よろしくなの!」
「はい、そうです。本日はよろしくお願いします」
男性一人に女性二人。そのうち一人は普通の耳だけでなく頭からもウサギのような耳が生えている。半獣族の中の兎族だ。
今、このことについて考えるのもタイミング違いかもしれないけど、近づかれて改めて感じた。女性の二人とも脚だったり背中だったりの露出が多い。
そもそも昨日や今朝から見かける女性の冒険者はほぼみんなそうだし、お姉ちゃんの言ってたことは本当だったみたい。それならもうお姉ちゃんを必要以上に心配する必要はないね。
それにもう慣れちゃったし、きっと今後気に留めることはないだろう。
堅そうな鉄の鎧をつけている男性が腕を組みながら挨拶を返してくれた。
「よろしくなんだぜぃ。まー、とりあえずギルマスに頼まれたことだし、しっかり自己紹介から始めるかいねぇ。自分はスミスのタターラってんでぃ! んで、こいつがヘリンのガレガン。んでこのウサギがリンのタンジェだよぃ」
「よろ、しく」
「なのなの!」
男性がスミスさんで、女性がヘリンさん、兎族の女性がリンさんか。へリンさんとリンさんは名前が似てるな。無いとは思うけど、間違えないように短い方がリンさんとしっかり覚えよう。
「リン、情報誌みたなの! ……ギアル君ってよぶね? ギアル君はめちゃくちゃ珍しいなの!」
「速度の魔法一つしか使えない大魔導師、が、目の前に実在してる」
「情報誌とか読まんからよくわからんが、体格がヒョロヒョロしてる方が自分としては気になるよぃ」
こうして面と向かってすでに冒険者である、いわゆる先輩方にそう言われると本当に自分が珍しいんだなと実感させられる。スミスさんは二人ほど気にしてないみたいだけど。
「一応、自分がリーダーってことになっているよぃ。だから今日は自分が仕切らせてもらうぜぃ」
「はい、お願いします」
「んじゃ、もう仕事行くかねぇぃ」
「それより、まず、カードの見せ合い、しておこう」
「たしかにその方がいいなの! はい、なの!」
「おっと、忘れてたよぃ」
僕は三人にカードを渡し、三人のカードを受け取った。
スミスさんは『上級剣士』で魔法3種、能力3つ。
ヘリンさんが『上級魔導師』で魔法12種、能力3つ。
リンさんが『弓使い』で魔法5種、能力6つ。
職業の等級としてはリンさんが一番下だけど、兎族としての跳躍力や魔法・能力の多さから二人に引けをとらなさそうだ。
また、これは儀式直後の情報であり今はもういくつかの能力が増えてるはず。どんな仕事を受けるか僕はまだ知らないけど、それぞれどんな個性が見れるか楽しみだ。
「マジで魔法一種の大魔導師だったなの……!」
「そ、そのうえ、初期の能力まで、たった、二つなんて……」
「その、ギアルよぅ。傷つけるつもりで言う分けじゃ無いし、気に障ったらマジで悪いんだけどよぃ、一体なにができるってんでい?」
スミスさんは申し訳なそうにそう聞いてきた。ここまで率直に質問されるとなかなか清々しい。好感が持てるかも。
「何度も似たようなこと言われてるので気にしなくて大丈夫ですよ。僕は速度魔法が唱えられます」
「そ、それは知ってるなの!」
「でも、ギルマスが、選んできた子だし、なにか、あるんだよね、きっと……」
「だな。じゃあ改めて、仕事いくぜぃ」
僕がついていくのはDランクの集団向け討伐依頼のようだ。
王都から少し離れた場所にある林で、なぜか例年より大量にベリースライムが発生したらしい。そいつらを十匹以上倒してくるのが今回の内容。
ベリースライムは同じくEランクの魔物、スライムの朱色版。スライムより誤差程度で強いらしい。図鑑にそう記載してあった。
僕は実物を見るのは初めてになる。プルプルしてて触り心地良さそうだし、ちょっと楽しみだ。
==========
(あとがき)
※今日は昨日連絡したように感謝の気持ち還元デーなので午後11時にも投稿します!
魔物紹介
ベリースライム/Eランク
雑食性のスライム。赤い上にほんのりベリーの香りがするためそう名づけられた。その上、核を覆う水に似た液体すらベリーの味がするらしく一部コアなファンがいる。
また、好物もベリーで、優先的にベリーを狙うため、ベリー畑がある村からはよく討伐依頼が出されている。
なお普通のスライムは泥や草木などの臭いを除けば無味無臭。
(非常に励みになりますので、もし良ければ感想やお気に入り登録などの方、よろしくお願いします!)
すぐにマスターを発見したので、話しかけてみる。
「おはようございますマスター」
「おお、おはようギアル。早くない?」
「すいません、残りの説明について何時にお伺いしたらいいか尋ねるのを忘れてしまっていて。不安だったので早くきました」
「あー、それは君が忘れてたっていうより、俺が忘れてたんだね。ごめん。説明だけなら今すぐできるけど?」
「ではお願いします」
マスターはさっそく仕事の受け方についての説明を始めた。
ギルドは依頼人と冒険者の仲介場でもあり、古今東西様々な場所からやってくる依頼を、所属している冒険者に紹介している。
チームなど複数人でないと受けられないものや、魔物の討伐、生け捕り、地質調査など様々な種類の依頼があり、それらのような条件もきちんと確認する必要がある。
依頼の受け方は、依頼掲示板というコーナーに貼ってある依頼用紙を剥がして受注受付に持っていくか、その受付の人に直接尋ねるか。名を挙げると指名される場合があり、その時はギルドの職員さんが声をかけてくるらしい。
また、依頼は難易度によってランク分けされ、それと同等以上のランクに当てられた冒険者しかその依頼を受けることができない。
そのランクを上げるにはとりあえず名声や良い評価、評判を得ればいい。
今の僕は最低のFランク。いくら優秀でも、誰しもがこのランクからスタートだ。でも優秀ならそれだけ昇級も早いみたい。
最高ランクはSランク。もちろんこのギルドにもSランクの人はいる。
他にも、依頼品の納品の仕方とか、依頼キャンセル時の対応とか、仕事をしていく上で必要なことを余すことなく教えてもらった。今からでも仕事ができそうだ。
「ギアルならたぶん、もう覚えちゃったよね」
「はいバッチリです。ありがとうございます」
「よし。それでね、今から一時間後くらいに君より一つ上の年齢の子たちが三人集まったCランクのパーティがやってくる。その子たちについて行って仕事を体験して欲しいんだよ。話はつけてあるからさ」
「わかりました」
それから一時間待つことになった僕は、食堂で朝食を食べ、図書館から借りてきた、鞭の扱いについての本を目立つ場所で繰り返し読むことで時間を潰した。
そしてマスターが言った通りの大体の時間にそのCランクパーティの三人組が僕の前に現れた。ちなみにパーティとしてCランクなのであって個々人ではそれぞれDランクみたい。三人揃ってCランク一人分ということらしい。
「あんたがギアルのクロックスなのかぃ?」
「緑髪の中性的な顔立ちの子、間違いないね」
「よろしくなの!」
「はい、そうです。本日はよろしくお願いします」
男性一人に女性二人。そのうち一人は普通の耳だけでなく頭からもウサギのような耳が生えている。半獣族の中の兎族だ。
今、このことについて考えるのもタイミング違いかもしれないけど、近づかれて改めて感じた。女性の二人とも脚だったり背中だったりの露出が多い。
そもそも昨日や今朝から見かける女性の冒険者はほぼみんなそうだし、お姉ちゃんの言ってたことは本当だったみたい。それならもうお姉ちゃんを必要以上に心配する必要はないね。
それにもう慣れちゃったし、きっと今後気に留めることはないだろう。
堅そうな鉄の鎧をつけている男性が腕を組みながら挨拶を返してくれた。
「よろしくなんだぜぃ。まー、とりあえずギルマスに頼まれたことだし、しっかり自己紹介から始めるかいねぇ。自分はスミスのタターラってんでぃ! んで、こいつがヘリンのガレガン。んでこのウサギがリンのタンジェだよぃ」
「よろ、しく」
「なのなの!」
男性がスミスさんで、女性がヘリンさん、兎族の女性がリンさんか。へリンさんとリンさんは名前が似てるな。無いとは思うけど、間違えないように短い方がリンさんとしっかり覚えよう。
「リン、情報誌みたなの! ……ギアル君ってよぶね? ギアル君はめちゃくちゃ珍しいなの!」
「速度の魔法一つしか使えない大魔導師、が、目の前に実在してる」
「情報誌とか読まんからよくわからんが、体格がヒョロヒョロしてる方が自分としては気になるよぃ」
こうして面と向かってすでに冒険者である、いわゆる先輩方にそう言われると本当に自分が珍しいんだなと実感させられる。スミスさんは二人ほど気にしてないみたいだけど。
「一応、自分がリーダーってことになっているよぃ。だから今日は自分が仕切らせてもらうぜぃ」
「はい、お願いします」
「んじゃ、もう仕事行くかねぇぃ」
「それより、まず、カードの見せ合い、しておこう」
「たしかにその方がいいなの! はい、なの!」
「おっと、忘れてたよぃ」
僕は三人にカードを渡し、三人のカードを受け取った。
スミスさんは『上級剣士』で魔法3種、能力3つ。
ヘリンさんが『上級魔導師』で魔法12種、能力3つ。
リンさんが『弓使い』で魔法5種、能力6つ。
職業の等級としてはリンさんが一番下だけど、兎族としての跳躍力や魔法・能力の多さから二人に引けをとらなさそうだ。
また、これは儀式直後の情報であり今はもういくつかの能力が増えてるはず。どんな仕事を受けるか僕はまだ知らないけど、それぞれどんな個性が見れるか楽しみだ。
「マジで魔法一種の大魔導師だったなの……!」
「そ、そのうえ、初期の能力まで、たった、二つなんて……」
「その、ギアルよぅ。傷つけるつもりで言う分けじゃ無いし、気に障ったらマジで悪いんだけどよぃ、一体なにができるってんでい?」
スミスさんは申し訳なそうにそう聞いてきた。ここまで率直に質問されるとなかなか清々しい。好感が持てるかも。
「何度も似たようなこと言われてるので気にしなくて大丈夫ですよ。僕は速度魔法が唱えられます」
「そ、それは知ってるなの!」
「でも、ギルマスが、選んできた子だし、なにか、あるんだよね、きっと……」
「だな。じゃあ改めて、仕事いくぜぃ」
僕がついていくのはDランクの集団向け討伐依頼のようだ。
王都から少し離れた場所にある林で、なぜか例年より大量にベリースライムが発生したらしい。そいつらを十匹以上倒してくるのが今回の内容。
ベリースライムは同じくEランクの魔物、スライムの朱色版。スライムより誤差程度で強いらしい。図鑑にそう記載してあった。
僕は実物を見るのは初めてになる。プルプルしてて触り心地良さそうだし、ちょっと楽しみだ。
==========
(あとがき)
※今日は昨日連絡したように感謝の気持ち還元デーなので午後11時にも投稿します!
魔物紹介
ベリースライム/Eランク
雑食性のスライム。赤い上にほんのりベリーの香りがするためそう名づけられた。その上、核を覆う水に似た液体すらベリーの味がするらしく一部コアなファンがいる。
また、好物もベリーで、優先的にベリーを狙うため、ベリー畑がある村からはよく討伐依頼が出されている。
なお普通のスライムは泥や草木などの臭いを除けば無味無臭。
(非常に励みになりますので、もし良ければ感想やお気に入り登録などの方、よろしくお願いします!)
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。
山田 バルス
恋愛
結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。
また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。
大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。
かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。
国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。
スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。
ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。
後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。
翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。
価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる