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65話 剣の大会1戦目でございます!

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 1戦目は四人のため、個々の名前は呼ばれない。
 
 ただ、入場してきたリンネちゃんは一際目立っていた。
 可愛いからというのもあるけど…やっぱり、他三人より身長が低いからね…。

 リンネちゃんは特に緊張してる様子もなく、定位置についた。
 周囲から『あんな小さい娘が参加してる…!』などの驚きの声が上がってるよ。


《それでは本日4戦目_____始め!》


 その声と共に剣士達は動き出す。
 三人が一気にリンネちゃんだけを狙う…なんていう展開はあるはずもなく、それぞれが相手を決めて1対1で一旦、戦い始める。

 リンネちゃんの相手をしてる人は言って普通の人。特に何の変哲も無いし、強みも感じられない。

 そのお相手さんは、渋々といった感じでリンネちゃんに向かって剣を構える。
 どうせ、どっかの娘がノリでこの大会に参加したんだろう程度にしか思った無いに違いない。
 小石視点を駆使して見えた顔を伺えばわかる。

 一方リンネちゃんは、嬉しそうにニヤニヤしてる。
 あれじゃあふざけてるって思われても仕方ないよ、可愛いけど。

 リンネちゃんがなかなか攻めてこないから痺れを切らしたのか、お相手さんは攻めてきた。
 
 それを待ってましたとばかりにリンネちゃんはバックステップをしながら場外ギリギリまで行き、そこで待機する。
 少女一人くらいどうにかなると考えてるであろうお相手さんは、そのまま突っ込んできた。
 リンネちゃんはお相手さんに向かって盾をぶん投げて牽制。
 身をその間に瞬間にひるがえして、お相手さんの後ろを取り、回し蹴りを当てて場外へ。
 まさかの剣を使わなかったです。
 まあ、まわりは『おお~』とか言っちゃってるし良しとしよう。

 残りの二人はまだ決着がついてなかった。
 
 リンネちゃんはその二人まで一気に詰め寄り、剣を打ち合っている最中に入った。
 リンネちゃんは異常に素早い。
 剣を打ち合っていたとしても、あの程度の剣士の筋なら、補助魔法等を一切使わずともかなり遅く見えてるだろうね。

 リンネちゃんはその間に割って入るまでに走ってきた時の勢いを活かし、剣の柄で一人の顎を打つ。
 打たれた人は伸びてしまった。

 もう一人の人は驚いたまま対応できず、リンネちゃんの流れるような速すぎる回転切りに対応出来ずに、それで兜越しに頭を打たれ、気絶してしまった。

 この光景をさっき落とされた人は唖然として見ている。


《あーっと、たった一人の少女が大の男三人を一瞬にして負かしてしまったぁぁぁあ!? なんということ、なんという強さだぁぁぁっ!! 1戦目勝者、リンネーっ!》


 どわーっと、先ほどまで全ての試合とは明らかに違う盛り上がり具合。
 次の対戦相手があのマッチョなのは少し心配だけど、多分勝てると思う。


 5戦目の中頃に、リンネちゃんが私達の元へ来た。
 全く汗をかいていない。


「お姉ちゃん、1戦目突破おめでとうー!」
「ありがとう、ロモン。えへへ、勝っちゃった!」
【流石ですね、リンネちゃん。あの剣士達の剣は止まって見えてたんじゃないんですか? ほとんど】
「あー、まあね。…正直に言っていい?」


 ほっぺたを掻きながら言いにくそうにしてるリンネちゃん。言いたいことはわかる。
 言っちゃっていいと思うんだ。


【なるべく小さな声で】
「うん。今まで、お父さんと、アイリスちゃんの剣捌きしか見てこなかったから…その…あれが普通の人の剣なのかな?」
「お姉ちゃん、お父さんやアイリスちゃんと比べたらダメだよ…」
【天狗にもなってはいけませんよ】
「わ、わかってるよ! ただ、お父さんやアイリスちゃんは本当に強いんだなぁーって、改めて実感したんだ」


 私の剣の質が良いかどうかは別として、今までお父さんの剣ばかり見てたらそう思うのも仕方ないんだよね。
 そっか、だからリンネちゃんは動体視力や反射神経が並みの人よりかなり良いのかもしれない。

 この後はまあ、何人か強い人を見られただけで今日の部は終わってしまった。

 宿に帰り、念のためにリンネちゃんに回復魔法をかけたり、1戦目突破のプチお祝いとしてハンバーグを作って食べ足りして、残りを過ごした。
 嬉しそうにハンバーグを頬張るリンネちゃん可愛い。
 え? ロモンちゃんも同じくらい可愛いですよ、ええ。


◆◆◆


 1戦目終了翌日、これからが本番。
 今日も私達は観客席でリンネちゃんの番を待っていた。
 リンネちゃんは勿論のこと、控え室で待機している。

 
《さあ、___回、剣闘大会二日目! 今日も司会は私、カルサイトスピーチャーがお送りしております! そして今日の解説はこの方! 元Sランカー、現騎士団長の…》
《グライドだ。今大会も皆、正々堂々、戦い抜き、勝利をつかんでほしい!》

 
 あ、お父さんだ。
 やっぱりお父さんが来るのか、これに。


《グライドさん、奥さんのノアさんが魔物武闘大会で解説としてお越し頂きました。ありがとうございます。また、娘さんのロモンさんが優勝致しましたね》
《ああ、そうだな。とても喜ばしいことだ。あの娘は昔からノアに憧れていたからな…》


 ロモンちゃんはニコニコしながら、その話を聞いている。


《確か、グライドさんにはもう一人、娘さんが…》
《ああ、ロモンの双子の姉だ。…今大会に出場しているぞ。1回戦目は無事突破した》
《おや、そうでしたか…! これは大注目ですね》
《まあ、父親としては怪我はして欲しくないがな》


 お父さん、厳格に喋るんだね、人前だと。
 プライベートだとあんなにロモンちゃんとリンネちゃんにデレッデレなのにね。
 なんか可愛いよ、お父さん。
 無論、ロモンちゃんとリンネちゃんの可愛いとは別物だけどさ。


《さあ、では! 本日1戦目_____》


 その声とともに1戦目が開始して2分後に決着がついた。
 私の予想通り、実力を隠してる人が居たみたいだったね。

 全身甲冑に身をつつんだ、大盾と剣の使い手。
 この人は確か、昨日、2戦目だった人だ。
 重い装備のくせに、慣れてるのかかなり良い動きをしていた。
 もしリンネちゃんが今からやる試合に勝てば、この人と戦うことになるわけだ。

 そろそろ2戦目が始まろうとしていた。
 

《それでは本日2戦目と参りましょう! まず、こちら側から…リンネーっ!》


 司会がそう言い、リンネちゃんが入場してくるとともに、グライドお父さんは語りと解説席から立ち上がった。


《リンネーっ! 頑張るんだぞーっ! お父さん、応援してるからなぁーっ! でも、怪我はするんじゃないぞーっ!》


 会場がシーンと静まり返る。
 ロモンちゃんはいつものお父さんだ言いながら、ニコニコしている。
 一方、リンネちゃんはお父さんがいる解説席に向かって小ジャンプしながら両手を使って手を振っていた。

 
《リンネ選手がもう一人の娘さんですか》
《そうだ》
《確かにロモンさんに瓜二つですね…昨日は兜を被っていたのでわかりませんでしたが、グライドさんと髪の色も同じようですね》
《私の娘だからな。可愛いだろう? だが娘はやらんぞ》
《ノアさん、全く同じこと言ってましたね……》


 ほら、ちょっと、スピーチャーさん引いてるじゃないですか! 両親共に親バカなんですよ…。
 ロモンちゃんとリンネちゃんも恥ずかしがって無いし、ターコイズ家ではあれが普通なんだね。

 もう一人のマッチョな選手も無事入場し、リンネちゃんの本来の1戦目と言える、2回戦目が始まった。
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