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第二部
第82話 俺と挑戦 前編
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「あ……でもザンって本当に色々してるから、間違ってないかも! ねっ!」
ようするに、俺が褒められていると感じたのだろうか。ロナがやけに嬉しそうにそう言った。すごいニッコニコだ。
耳のヒレはピクピク、尻尾はフリフリ、目はキラキラ……実の叔父からは彼女のこの様子がどう見えているのだろう。
「ふん、色々と言うと?」
「出会った時もね! 危ない目に遭ってた私を、助けてくれたとこからはじまって……!」
「ハハハハハッ、そう言う話は後でゆっくり聞くと言ったはずだ。たしかにオレ様としても姪を助けてくれたことに感謝すべきだが、救ったのが一人じゃとても英雄並みとは言えぬだろう。ロナの中ではそうだとしてもな」
うーむ、やっぱりその程度で済ませられる話ではなかったか。
ここまでキッパリと言うのなら、【大物コレクター】が反応する条件には割としっかりとした線引きがあるのだろう。
となると別の何か、俺が褒められそうなことと言えば……。
「何千人も助けなきゃダメ?」
「明確に助ける必要はないが、まあ、それほど多数の人間に影響を与えなければ話にならんだろうな」
「じゃあ……その、アレ言ってもいいかな……?」
ロナが俺のことを見る。……アレってなんだ?
まあ、いいや。このままロナに任せてみるか。
「ああ、いいぜ」
「なんだ、やはりそう言う規模の話があるのか。いや、オレ様の称号に反応した時点で無いとオカシイのだがな」
「……あの《大物狩り》の事件って知ってるよね?」
「そりゃあ流石に。ねぇ旦那?」
「しかと耳に入っている。オレ様達が隣国の《凍剣鬼》にケンカを売りに行ってる間に暴れ回ってくれた賊だろう」
ん? おっと?
今、さらっと危ないことを言ったな?
ロナとの会話でケンカがどうのって確かに言ってはいたが……この言い方からしておそらくは、名を馳せてる強者のもとへ力試しをしに行ってるって感じか。
なるほど、それで強者好きの【大物コレクター】……か。
割とまともな人だと思ってたんだが、老婦人が言っていた《竜星》の面倒臭い性格の噂ってのはこういうことだったんだな。
ロナへの対応でジェントルだと思ったのは間違いだったか?
いや、それはそれだと考えるべきか。
「ウチのギルドの仲間も何人かやられやしたね」
「ああ、故にオレ様がこの手で屠り、後輩共の無念を晴らしてやりたかったが、その前に『ヘレストロイア』の小娘共が捕まえたらしいな。ニュースペーパーではそのようになっていたはずだ」
「実はそれ、ザンがやったの! あのね ──── 」
ロナは二人に、巻き込まれた俺が《大物狩り》を倒したこと、そして《大物狩り》の放った巨核魔導爆弾を俺が一人で処理したことの二点を言い、それで結果的に何千、何万人も救ったため、【大物コレクター】が反応したのではないかと述べた。
巻き込まれた理由や、ロナが活躍した部分は省かれてるが……たしかに、これだけ聞くと俺ってすごい人のように思えてくる。
この手柄もあんまり言いふらしたくはなかったが、そうだな、変に俺の過去をほじくられるよりは、最初からこっちの話しをしたほうがマシだったな。
「た、たしかに。ペーパーにはあと二人、通りすがりの協力者が居たと書かれていやしたが……」
「そう、それは私とザンなんです! ……信じてくれるかな?」
「……ふむ! オレ様は元々あの四人じゃ《大物狩り》を倒すのは不可能だろうと考えていたんだ。とすると、これで合点がいった」
「そうなの?」
「ああ、オレ様は城の中にちょっとしたツテがあってな。《大物狩り》と呼ばれるほどのヤツだ。……知りたかった、どんな手を使って暴れていたのか。故にそのツテ伝いに、ステータスカードの内容を聞いてきたんだ」
「い、いつのまにそんなことをしていたんでさぁ……」
この国最強の人間ともなれば、そんなことまでできるのか。
それとも個人的に顔が広いだけなのか……どっちかわからないが、凄いことをしてるのだけはハッキリしているな。
いいな。俺もそのうち欲しいな、城に知り合い。できればメイドさんとか、女性の騎士とか。
まあ欲しいと言ってできるようなもんじゃないけどな。
「で、だ。《大物狩り》は強いとは言い難かったが、人によっては非常に厄介なのもまた事実だ。なにせ、強制的に相手を魔力が欠乏した状態にすることができるのだ。ステータスもSランク相当ではあったしな」
「うっわ……そりゃあエグい」
「故に、最大まで成長した『魔欠耐性』を持つ者が一人もいない、天秤ギルドのとこの四人衆が敵うはずなどなかったのだッ。ま、アイツら自体は四人集まればソコソコやるが……とにかく相性が悪い」
この人は、なんで特定の能力が無いと断言できるほどあの四人のステータスを把握してるんだろう。……やっぱり、ケンカを仕掛けたのか?
まさか、城の知り合いってのも、Sランクの騎士かなんかにケンカをふっかけた結果できたんじゃないだろうな?
「それに、ニュースペーパーによれば爆弾は巨大化する力を持った盾で対処されたらしいな? それも、アイツらが所持していないものだ」
「それなら……! ね、ザン、見せてもいいかな?」
「……ああ」
ま、レディにねだられたならノーとは言えないよな。
俺は『シューノ』から、あの一件で大活躍した『バイルト』を取り出し、二人に見やすいように掲げた。
叔父はそれを鑑定している素振りを見せたが、何故かその途中で思い切り口角を上げ、恐怖を感じるほどの怪しい笑みを浮かべ始めたのだった。
「……ハハッ、ハハハハハッ、成程ッ! 知ってるぞ、『バイルト』だ! 確かにそれは巨大化する盾ッ! ロナの言う通り《大物狩り》を狩ったのは貴様で間違いないようだなッ!」
「ああ、たしかに。少なくとも爆弾から大勢を救ったというのは間違いないようで……!」
「いいや、《大物狩り》を倒したというのも本当だ。考えてもみろ、此奴の魔力はどうだったッ?」
「それはほぼ、無い……⁉︎ あっ!」
「そうだ、貴様が感知で『ほぼ無い』と判断したということは、小僧の魔力は実際に最低値なんだろうッ! ならば減る魔力などない。故に魔欠の症状も出ないッ‼︎」
「ならば、やはりこの少年が……!」
「ハハハハハッ、いいぞッ……ハハハハハハハハハハハハッ‼︎」
「あ、旦那……!」
おいおい、なんだよ。
怪しい笑みを浮かべるどころか、大笑いをしながら勢いよく立ち上がり、俺の元へ向かってきたぞ⁉︎
し、しかもこの威圧感……『竜王の気迫』だったか?
なぜか、それもまた発動させてやがる。
どういう状況か、一旦冷静に整理しよう。
俺は今……強者とケンカする趣味があるロナの叔父に、Sランク四人がかりで敵わなかった《大物狩り》を、倒せるほどの実力のある人間だと認定されたんだ。うん、それで良いはず。
なるほど、なるほど?
つまりだ。これから俺の身に起こることは……?
「小僧ッ……正直まだ何か隠しているような気がしてならんが、ひとまず認めてやるッ‼︎ 合格だッ!」
ついに《竜星》が、俺の目の前に立った。
この気迫、気を抜いたらすぐに気絶してしまいそうだ。
「喜べッ、この《竜星》に挑む権利をくれてやるッ! 嬉しいぞッ……! まさかまだ国内にオレ様と戦う資格のある兵が潜んでいたとはッ!」
「旦那っ……」
「あ、あの叔父さ……」
「貴様らは黙っていろッ! いいか、拒否はするなよザン。このオレ様と仕合えッ……! 仕合うのだッ! このワクワクを止めてくれるなよ、さァッ‼︎」
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うーむ、やっぱりその程度で済ませられる話ではなかったか。
ここまでキッパリと言うのなら、【大物コレクター】が反応する条件には割としっかりとした線引きがあるのだろう。
となると別の何か、俺が褒められそうなことと言えば……。
「何千人も助けなきゃダメ?」
「明確に助ける必要はないが、まあ、それほど多数の人間に影響を与えなければ話にならんだろうな」
「じゃあ……その、アレ言ってもいいかな……?」
ロナが俺のことを見る。……アレってなんだ?
まあ、いいや。このままロナに任せてみるか。
「ああ、いいぜ」
「なんだ、やはりそう言う規模の話があるのか。いや、オレ様の称号に反応した時点で無いとオカシイのだがな」
「……あの《大物狩り》の事件って知ってるよね?」
「そりゃあ流石に。ねぇ旦那?」
「しかと耳に入っている。オレ様達が隣国の《凍剣鬼》にケンカを売りに行ってる間に暴れ回ってくれた賊だろう」
ん? おっと?
今、さらっと危ないことを言ったな?
ロナとの会話でケンカがどうのって確かに言ってはいたが……この言い方からしておそらくは、名を馳せてる強者のもとへ力試しをしに行ってるって感じか。
なるほど、それで強者好きの【大物コレクター】……か。
割とまともな人だと思ってたんだが、老婦人が言っていた《竜星》の面倒臭い性格の噂ってのはこういうことだったんだな。
ロナへの対応でジェントルだと思ったのは間違いだったか?
いや、それはそれだと考えるべきか。
「ウチのギルドの仲間も何人かやられやしたね」
「ああ、故にオレ様がこの手で屠り、後輩共の無念を晴らしてやりたかったが、その前に『ヘレストロイア』の小娘共が捕まえたらしいな。ニュースペーパーではそのようになっていたはずだ」
「実はそれ、ザンがやったの! あのね ──── 」
ロナは二人に、巻き込まれた俺が《大物狩り》を倒したこと、そして《大物狩り》の放った巨核魔導爆弾を俺が一人で処理したことの二点を言い、それで結果的に何千、何万人も救ったため、【大物コレクター】が反応したのではないかと述べた。
巻き込まれた理由や、ロナが活躍した部分は省かれてるが……たしかに、これだけ聞くと俺ってすごい人のように思えてくる。
この手柄もあんまり言いふらしたくはなかったが、そうだな、変に俺の過去をほじくられるよりは、最初からこっちの話しをしたほうがマシだったな。
「た、たしかに。ペーパーにはあと二人、通りすがりの協力者が居たと書かれていやしたが……」
「そう、それは私とザンなんです! ……信じてくれるかな?」
「……ふむ! オレ様は元々あの四人じゃ《大物狩り》を倒すのは不可能だろうと考えていたんだ。とすると、これで合点がいった」
「そうなの?」
「ああ、オレ様は城の中にちょっとしたツテがあってな。《大物狩り》と呼ばれるほどのヤツだ。……知りたかった、どんな手を使って暴れていたのか。故にそのツテ伝いに、ステータスカードの内容を聞いてきたんだ」
「い、いつのまにそんなことをしていたんでさぁ……」
この国最強の人間ともなれば、そんなことまでできるのか。
それとも個人的に顔が広いだけなのか……どっちかわからないが、凄いことをしてるのだけはハッキリしているな。
いいな。俺もそのうち欲しいな、城に知り合い。できればメイドさんとか、女性の騎士とか。
まあ欲しいと言ってできるようなもんじゃないけどな。
「で、だ。《大物狩り》は強いとは言い難かったが、人によっては非常に厄介なのもまた事実だ。なにせ、強制的に相手を魔力が欠乏した状態にすることができるのだ。ステータスもSランク相当ではあったしな」
「うっわ……そりゃあエグい」
「故に、最大まで成長した『魔欠耐性』を持つ者が一人もいない、天秤ギルドのとこの四人衆が敵うはずなどなかったのだッ。ま、アイツら自体は四人集まればソコソコやるが……とにかく相性が悪い」
この人は、なんで特定の能力が無いと断言できるほどあの四人のステータスを把握してるんだろう。……やっぱり、ケンカを仕掛けたのか?
まさか、城の知り合いってのも、Sランクの騎士かなんかにケンカをふっかけた結果できたんじゃないだろうな?
「それに、ニュースペーパーによれば爆弾は巨大化する力を持った盾で対処されたらしいな? それも、アイツらが所持していないものだ」
「それなら……! ね、ザン、見せてもいいかな?」
「……ああ」
ま、レディにねだられたならノーとは言えないよな。
俺は『シューノ』から、あの一件で大活躍した『バイルト』を取り出し、二人に見やすいように掲げた。
叔父はそれを鑑定している素振りを見せたが、何故かその途中で思い切り口角を上げ、恐怖を感じるほどの怪しい笑みを浮かべ始めたのだった。
「……ハハッ、ハハハハハッ、成程ッ! 知ってるぞ、『バイルト』だ! 確かにそれは巨大化する盾ッ! ロナの言う通り《大物狩り》を狩ったのは貴様で間違いないようだなッ!」
「ああ、たしかに。少なくとも爆弾から大勢を救ったというのは間違いないようで……!」
「いいや、《大物狩り》を倒したというのも本当だ。考えてもみろ、此奴の魔力はどうだったッ?」
「それはほぼ、無い……⁉︎ あっ!」
「そうだ、貴様が感知で『ほぼ無い』と判断したということは、小僧の魔力は実際に最低値なんだろうッ! ならば減る魔力などない。故に魔欠の症状も出ないッ‼︎」
「ならば、やはりこの少年が……!」
「ハハハハハッ、いいぞッ……ハハハハハハハハハハハハッ‼︎」
「あ、旦那……!」
おいおい、なんだよ。
怪しい笑みを浮かべるどころか、大笑いをしながら勢いよく立ち上がり、俺の元へ向かってきたぞ⁉︎
し、しかもこの威圧感……『竜王の気迫』だったか?
なぜか、それもまた発動させてやがる。
どういう状況か、一旦冷静に整理しよう。
俺は今……強者とケンカする趣味があるロナの叔父に、Sランク四人がかりで敵わなかった《大物狩り》を、倒せるほどの実力のある人間だと認定されたんだ。うん、それで良いはず。
なるほど、なるほど?
つまりだ。これから俺の身に起こることは……?
「小僧ッ……正直まだ何か隠しているような気がしてならんが、ひとまず認めてやるッ‼︎ 合格だッ!」
ついに《竜星》が、俺の目の前に立った。
この気迫、気を抜いたらすぐに気絶してしまいそうだ。
「喜べッ、この《竜星》に挑む権利をくれてやるッ! 嬉しいぞッ……! まさかまだ国内にオレ様と戦う資格のある兵が潜んでいたとはッ!」
「旦那っ……」
「あ、あの叔父さ……」
「貴様らは黙っていろッ! いいか、拒否はするなよザン。このオレ様と仕合えッ……! 仕合うのだッ! このワクワクを止めてくれるなよ、さァッ‼︎」
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