魔法系男子のゆふるわな日常(希望)

ねじまる

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第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者

そんなそうびで だいじょうぶか?

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「あ、俺、勇者一行の正規メンバーじゃないですから」

 一度ソファに座った俺は即座に腰を上げたのだが、両脇に座るエルアルトとママが素早く引き戻した。
 俺を中心に座らせたのは逃がさない為か。

「こういう依頼なら、ザット師匠とゲオルグじぃちゃん呼べよ! これなら勇者一行フルメンバーじゃねぇか!」

 武闘家ザットと赤の魔法使いゲオルグは勇者一行の正式メンバーであり、俺はどちらかというと大戦の終盤に呼ばれた補欠扱いだったワケで。
 俺は抵抗を試みたが、二人はガッチリと俺をキャッチして離さない。

 噂に聞く、タチの悪いぼったくりバーのようだ。

「ザットはにゃんこ電話を持たないで放浪中。ゲオルグは八度目の再婚で新妻と旅行中。連絡もつかないし、今回は急ぎの依頼だ。俺達で何とかするしかないだろう?」

 エルアルトは指を折って、無情にも俺の意見を一つずつ消去していった。

 おいおいおい、俺達で……って、ホワイトドラゴンなんだが?
 ここでおっさんの言葉を思い出してみようか。
 群れと言わなかったか?
 群れってことは複数だぞ、複数。



 ドラゴン種の中でも攻・防・魔力と三拍子揃った強さはトップクラスに位置する。
 世界最強の生物、それがホワイトドラゴンだ。

 しかも魔王の参謀として大活躍していたのが、一体のホワイトドラゴンだった。
 あの大ボスレベルを数体同時に相手なんて無謀にも程がある。
 小山一つ分という、規格的にも大ボス級なのに。

 ホワイトドラゴンが姿を現したら、大きな魔法を一発放とう。
 それに、人間離れしたエルアルトやママの力を合わせれば、何とか一体は仕留められそうだ。
 あの二人にブランクがなければの話だが……。



 ふ、不安だ。めちゃくちゃ不安すぎる!

 俺はエルアルトの腕を引き、耳元に口を寄せた。
 それから小声で、

「複数相手なんてこっちが死ぬだろ! それに俺の装備は青ジャージだけだぞ!」

 愛用の杖はあのアパートに置いてある。
 持っていないので魔法の威力が半減してしまうのは確実。
 しかも青ジャージだから防御値は一か二?

 こんな装備じゃ大丈夫じゃない……!

 助けを求めるおっさんの希望を叶えてあげられないのは確かに胸が痛む。
 だが、こちらも命は惜しい。

「誰が正面から戦うと言った? 森に隠れながら各個撃破を狙う。長期戦になるだろうが、まったく勝てないという相手じゃない」

 そう言うと、ヤツは俺に反論の口を開かせる間もなく「それに」と囁いた。

「討伐したホワイトドラゴンは高値で引き取るそうだ」

「え、それマジすか?」

「ホワイトドラゴンの素材が市場に出回ることは滅多にない。それはお前だって知っているだろう?」

 あの大ボスを狩ろうなんて誰が思うだろうか。
 その為に大変入手困難な貴重品であることは、誰もが知っていることだ。

 ホワイトドラゴンのたてがみや革は防火・防寒・耐魔性に優れ、防菌・防かびなど、汚れというものを知らずにいつまでも白さを保つ。近年の研究では、花粉症対策にも良いのだとか。
 その美しさには魔法職の人間のみならず、貴族や成金連中からも人気のある商品だ。
 城下の防具屋で客寄せ用のものを見たことはあるが、雪の上ならともかく、森や草原といった場所では目立つ。
 カモフラージュ性がとても低いので、実践にはどうかと思った記憶がある。

 だが、高く売れる。

 売れたら学費も家賃も払える。
 次のバイトを見つけるまでの生活費も稼げるし、節約生活の中で涙ながらに諦めた小説にだって手が届く。
 そうだ、ちょっと高くて美味しいものだって食える!
 プレミアムコーヒー牛乳だって飲める!

「やりましょう!」

 いやぁ、人助けって素晴らしい。


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