魔法系男子のゆふるわな日常(希望)

ねじまる

文字の大きさ
25 / 59
第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者

いちか ぜろか

しおりを挟む



 その結論を出すには早いって!

「ま、待て。まだそうと決まってないから!」

 慌てて俺は止めに入った。



 エルフは人間よりも遙かに強大な魔力を秘めている。
 例えるとして、人間が幼児ならば、エルフはプロのスポーツ選手と言えば解りやすいだろうか。

 バルトは闇属性の魔法に長けていて、闇魔法ならどれでも瞬時に発動することができるという恐ろしいレベルだ。
 つまり、呪文の詠唱時間はゼロ。最強である。
 中でも彼の紫水晶の瞳に暗い炎がゆらりと見えたら注意しなければならない。
 怒り心頭で、強力な一発を発動する秒読みの合図だからだ。

 闇魔法のエキスパートである彼が強大な魔力で巨大な魔法を乱発したらどうなるか、想像して頂きたい。

 エルフなので魔力はほぼ使いたい放題だ。
 あっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図。
 いや、自分達の身に何が起ったのか、村人達が認識する時間さえ与えないかも知れない。

 想像するだけでも恐ろしい。



「そ、そりゃ、こうして捕虜になったワケだけど、村の人達が悪いようには見えないし」

 こうなると、村人達が憎んでいるであろう、良い人そうだったファルメールのおっさんも疑わなければならない。

「敵視する理由を知ってから動いても、セーフだと俺は思う」

 それに、こうしてバルトと合流したのだ。
 戦いのブランクが開いていると思われる、エルアルトやママに比べたら、どれだけ心強いか。

「お前を汚い網に閉じ込めただけでも大罪なのに、それを水に流すというのか。あぁ、何と心の澄んだ優しい子なのだ」

 バルトは目元を和らげて、おぉとも、あぁとも言いがたい感嘆の声を漏らした。

 このエルフは少しリアクションが過剰である。

 照れくさいので止めて欲しいのだが、言ったところで直ったためしがない。
 少し困った人だ。

「てか、網に入れられただけで大罪って、スゲェ大袈裟なんですけど」

 ぼそりと呟いた俺の発言にバルトは目をむいた。

「二代目に危険が及んで、怒らない部下がどこにいるか!」

「その二代目っていうの、ホントに止めてくれ。普通の人が聞いたらドン引くから」

「ボ……ママさんのご子息なのだから、二代目なのは当たり前だろう」

 長年胸に抱いているが、母がどうしてこんなにイケメンエルフ達に懐かれているのか、その理由を正面から聞くことが未だにできない。

 あの料理だけで、そんなにも心揺さぶられるほどの強い衝撃があったのだろうか。
 己の小心っぷりが改めて憎い。
 それとも俺は、母の料理に食べ慣れているから?
 あるいは、バルト達が母の料理に出会うまで、貧しい食生活を送っていたのか?

 ちなみに、鬼畜エルフのレオンはというと、二代目どころか下僕扱いに近いけど。

「それでは」

 バルトの声に俺は我に返った。

「村人の返答次第では始末しても良いか?」

 ヒカリゴケの明かりのせいか、きらりと彼の瞳が嬉しそうにきらめく。

「待て待て待てぇい」

 どうしてそう極端な考えに辿り着いてしまうかなあ。

 再び揺らめく瞳の炎を消そうと、手で思わず扇いでしまう。

「何をやっているんだ?」

「いや、炎を消そうかと。俺のことを心配して大切にしてくれるのは嬉しい。でも、すぐに暴力で解決しようとするのは止めてくれ」

「暴力ではない。訓戒だ」

 そんなキリッと真っ直ぐな目を向けられたら強く言えなくなるじゃないか。

 いかん、ここで流されるワケにはいかない。

「訓戒は言葉で善悪を説くことだろ。力に訴えるのは良くない」

「む、俺は平和的解決をするつもりだったが?」

 異議あり。
 魔法をぶっ放す気満々の目をしてたくせに。

 バルトやレオンを見ていると、エルフは意外と好戦的な種族なのだろうかと疑問を抱くことがある。
 この人達だけなのかも知れないけれど。

 物語に登場するエルフは気高く、聡明で、繊細な性格に描かれている。
 滅多に人前に出ることはないというが、俺の知っているエルフ達は普通に村や街に出ては酒を飲んでいる。

 一度で良いから、一般的なエルフと話をしてみたいものだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...