7 / 25
カフェ 卯月(うげつ)堂
第七話
しおりを挟む「ナオヤ、後で仕入れ先を回るよ。最初に浅井屋さんのコーヒー豆を大量に確保しないと。あと、澤村さんのティーリーフもね。坪田さんと井上さんに、今後の野菜と果物の仕入れについて相談しよう。風祭さんのところにも食事メニューに使うパンの発注を早めに入れておかないと。食パンとベーグル。今後の小麦の仕入れに困るだろうし」
「あー……そこら辺はトシ君に任せるよ」
「おーい、ここは一応、ナオヤの店だろう? 俺だって、今は良いけど……いつも店に顔を出せるワケじゃないんだし」
「だってー、オレよりマネジメント上手いじゃん。いっそのこと、公務員を目指すより……」
「ナオヤ!」
「はい、ごめんなさい! 頑張ります!」
賑やかな男達のやりとりに、少女は思わず声を上げて笑ってしまった。
「あははっ……あっ」
笑ってしまってから口元を慌てて塞いだのだが、時既に遅し。
「あれ、誰かいる?」
ほんわかとした少年の声が近付いてくる。
少女は慌てて逃げようとしたのだが、スカートの裾を踏んでしまい、前のめりに転がった。
「きゃっ」
大変だ、見付かってしまう。
振り向くと、四人の青年が少女を見下ろしていた。
「イ、イラッシャイマセ、何名様デスカ?」
神経質そうな声が沈黙を破る。
細身でフレームの薄い眼鏡を掛け、狐のような顔立ちの青年だ。
黒のタートルネックにブラックジーンズと黒を基調とした服に身を包んでいる。
その青年の右隣に立っていた、柔和な顔にスタンダードなスクエア型の眼鏡を乗せた青年が驚いた顔で横に振り向く。
「ノリヒトが片言になってる!?」
柔らかな声を出していたのはこの青年か。
白い麻のシャツを腕捲りし、細身のジーンズ。
カフェの店員のようでもあり、書店にもいそうな雰囲気を醸し出している。
「わあ、ノリ君が壊れた!」
少年の声に目を向けると、柔らかそうな猫っ毛の髪が印象的だった。
うっすらと頬を赤く染めた色白の可愛らしい青年がパタパタと手を振って慌てている。
太い黒縁で大きな丸眼鏡。
白のタートルネックにジーンズと、どうやらこの店は眼鏡とジーンズが制服の一部なのだろうか。
声は少年のようだが、見たところもう少し年上のようだ。
ふと、彼女はもう一人の姿が見えないことに気が付いた。
最初の声の主である。
「こういうときはね、右斜め四十五の角度で叩くと良いって言うよ、ね!」
いや、いた。
「誰がテレビですか」
狐のように眼の細い青年が横にすっと避けると、彼の後ろから体勢を崩しつつ一人の男が姿を現す。
0
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうぞ添い遂げてください
あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。
ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる