卯月堂の空にクジラが歌う

ねじまる

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カフェ 卯月(うげつ)堂

第七話

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「ナオヤ、後で仕入れ先を回るよ。最初に浅井屋さんのコーヒー豆を大量に確保しないと。あと、澤村さんのティーリーフもね。坪田さんと井上さんに、今後の野菜と果物の仕入れについて相談しよう。風祭さんのところにも食事メニューに使うパンの発注を早めに入れておかないと。食パンとベーグル。今後の小麦の仕入れに困るだろうし」

「あー……そこら辺はトシ君に任せるよ」

「おーい、ここは一応、ナオヤの店だろう? 俺だって、今は良いけど……いつも店に顔を出せるワケじゃないんだし」

「だってー、オレよりマネジメント上手いじゃん。いっそのこと、公務員を目指すより……」

「ナオヤ!」

「はい、ごめんなさい! 頑張ります!」

 賑やかな男達のやりとりに、少女は思わず声を上げて笑ってしまった。

「あははっ……あっ」

 笑ってしまってから口元を慌てて塞いだのだが、時既に遅し。

「あれ、誰かいる?」

 ほんわかとした少年の声が近付いてくる。
 少女は慌てて逃げようとしたのだが、スカートの裾を踏んでしまい、前のめりに転がった。

「きゃっ」

 大変だ、見付かってしまう。

 振り向くと、四人の青年が少女を見下ろしていた。

「イ、イラッシャイマセ、何名様デスカ?」

 神経質そうな声が沈黙を破る。
 細身でフレームの薄い眼鏡を掛け、狐のような顔立ちの青年だ。
 黒のタートルネックにブラックジーンズと黒を基調とした服に身を包んでいる。

 その青年の右隣に立っていた、柔和な顔にスタンダードなスクエア型の眼鏡を乗せた青年が驚いた顔で横に振り向く。

「ノリヒトが片言になってる!?」

 柔らかな声を出していたのはこの青年か。

 白い麻のシャツを腕捲りし、細身のジーンズ。
 カフェの店員のようでもあり、書店にもいそうな雰囲気を醸し出している。

「わあ、ノリ君が壊れた!」

 少年の声に目を向けると、柔らかそうな猫っ毛の髪が印象的だった。
 うっすらと頬を赤く染めた色白の可愛らしい青年がパタパタと手を振って慌てている。

 太い黒縁で大きな丸眼鏡。
 白のタートルネックにジーンズと、どうやらこの店は眼鏡とジーンズが制服の一部なのだろうか。
 声は少年のようだが、見たところもう少し年上のようだ。

 ふと、彼女はもう一人の姿が見えないことに気が付いた。

 最初の声の主である。

「こういうときはね、右斜め四十五の角度で叩くと良いって言うよ、ね!」

 いや、いた。

「誰がテレビですか」

 狐のように眼の細い青年が横にすっと避けると、彼の後ろから体勢を崩しつつ一人の男が姿を現す。


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