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カフェ 卯月(うげつ)堂
第九話
しおりを挟む少女はカウンター席に通され、背の高いスツールの上で両足を軽く揺らしていた。
彼女の前には紅茶がカップに注がれ、ゆらりゆらりと白い湯気が踊っている。
カウンターを挟んだキッチンの中では、一番背の高い青年が、少女のためにと昼食を用意している。
少女の右隣のスツールには柔和な顔をした青年が、穏やかな笑みを称えて座っている。
少女を挟んで左側には猫っ毛の青年が、ゆるんと目尻を下げて座っている。
少女と同じく両足をプラプラと揺らしていた。
狐のような顔立ちの青年は、彼等より少し離れた席で一人、紅茶を啜る。
少女はというと、少し緊張した面持ちで紅茶を一口。
見知らぬ男達に囲まれているのだ、無理もない。
「とりあえず、自己紹介でもしちゃう? お嬢さんのお昼ご飯が出来るまで、もうちょっと時間が掛かっちゃうし。それまで俺達が、じーっと注目するのも失礼だしさ」
そんな彼女の気持ちを和らげようというのか、陽気な声で一番背の高い青年が提案をすると、誰の返事も待たずに名乗りを上げた。
「俺はナオヤ。ここのオーナー兼、キッチン担当ってところ。余裕があればラテアートもやるよ。とは言っても、基本のハートしかやったことないけど」
一番背の高い、少年の面影を色濃く残す青年がナオヤ。
日向ぼっこをしたときに目を細める猫に似ていて、親しみを感じる。
「ほら、次、トシ君」
「え、え? 本当にやるの? ちょっと恥ずかしいんだけど……」
「いいから、ほらほら!」
「あー、えーっと、トシキ、です。スイーツを担当しています。元々甘い物が好きで、趣味で作ってはいたけれど……こうして、お店で出すからには、お客さん達に満足してもらえるよう精進しなきゃって思ってます」
柔和な顔をした、春の日射しのように柔らかな笑顔で少女の胸をときめかせたトシキ。
はにかむ顔も彼女の心を掴んだのか、少女は頬を赤く染める。
「はい、次、ノリヒトね」
トシキから促されると、彼は少し不服そうな顔をしながらも、
「臨時でホールを担当しています。ノリヒトです」
律儀に応える。
狐のような顔立ちでクールな印象からか、少し人を寄せ付けなさそうな壁を感じるノリヒト。
他にも何か言うのかと少女は胸を弾ませたが、
「はい、コウスケ君」
あっけなくバトンタッチしてしまう。
「ノリ君、短いなぁ。えーっと、コウスケです。僕も臨時でホールを担当してるけど、あっちのスペースで扱う雑貨の製作を担当してます」
コウスケが指し示す方へと目を向ければ、店の片隅に大小様々な棚が置かれていた。
「嬉しいことに、今は全部、売り切れちゃってるけど」
猫っ毛でふわふわとした雰囲気を漂わせている青年はコウスケ。
今は空っぽとなっている空間に、彼は本当に嬉しそうに目を細めて頬をほんのりと染めた。
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