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1. 星が消える
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「面白かった……!」
本を閉じて、思わず声に出してしまう。
読んでいた本の表紙には『神秘の物語~春の星座~』ってタイトル。星や星座についての物語……つまり、神話が纏められている短編集だ。
今は春だから、春の星座を読もうって近くの図書館から借りてきた本だけど、本当に面白かった!
特に好きだったのはおひつじ座の話。
──昔あるところに、兄のプリクソスと妹のヘレという兄妹がいました。
二人は仲良しだったけど、あることがきっかけで兄が生贄にされ、殺されそうになってしまう。
プリクソスが殺される……! そう思った瞬間、プリクソスを、そして妹のヘレを助けだす影がありました。
それは美しい金色の毛を持つ、ひつじでした。
ひつじは二人を乗せ空を飛び、逃がしてくれたのです。
そしてこのひつじが、今のおひつじ座なのです。
何て素敵な話なんだろう!
普通に星を見るだけでも楽しいけど、そこに「物語」があるって知ると、もっとワクワクするな。そうだ、次はまた別の春の星座の神話を……。
「七星!! もう出る時間よ、新学期から遅刻するつもり?」
あっ、いけない!
私はキラキラとした神話の世界から、目の前の見慣れたリビングに戻ってきた。台所の向こうから見えるのは、呆れたようなママの顔。
「髪、結んでないじゃない」
「今結ぶ!!」
リュックに本を閉まって、洗面台へダッシュ。今日から中学生だっていうのに、忙しないなぁ、私。
『続いて、次のニュースです。ここ数日、「空から星が消える」という現象が話題になっています』
星? 一瞬、髪をとかす手を止めてしまって、慌てて手を動かした。遅刻しちゃう。
けれど私の興味はニュースにあるまま。耳がもし動くなら、テレビの音を拾うように動いていただろう。
『専門家は、「星が消えること事態は珍しくないが、ここまで多数の星が同時に、それも数日にかけて失われるのは見たことがない」と述べています。先週は、こぐま座やおひつじ座が空から丸ごと消えていたことが話題になっていましたね』
胸元まである髪を、一つに束ねる。それから、束ねた髪を、三つ編みに。
星が、消える? おひつじ座って……私がさっきまで読んでた星座! 星座がごっそり消えちゃうなんて、大変だよ!
『他国の天文学者によると、「星座があるべき場所から移動する」という現象も見られているようです。これは何かの前触れでしょうか?』
最後に、お気に入りの髪飾りで左側の前髪を留める。北斗七星の形をした髪どめなんだ。
ブラシを片付けて、リビングに戻る。一体星に何が起こってるんだろう? もっと知りたい!
『続いて、今日の天気です』
「七星! 本当に遅刻するわよ!」
……けれどリビングに戻る頃にはニュースは終わっていて、おまけにママに怒られちゃった。
うぅ、仕方ないか。とりあえず星のことは忘れて、学校へ行こう。
「行ってきます!」
外へ飛び出すようにドアを開ける。ふわり、ほのかに桜の香りがする。春、新学期にぴったりなのどかな天気だった。うーん、澄んだ青空! 今夜は星が綺麗に見られそうだな。
……なんて、結局星のことを考えながら、私は学校へと歩いて行ったのでした。
私は星が好きだ。
どのくらい好き? って聞かれたら、一番。
昔から、夜にぴかぴか光るお星さまが大好きだった私は、文字が読めるようになると、自然と星の本ばかりを読むようになった。星図鑑、神話の小説、「星」がタイトルに付く小説に、星が関係する物語……とにかくたくさん。
本を読むのは良いことだ! ってママもパパも喜んでたけど、あまりにも星の本ばかり読むから、呆れられたこともあったっけ。
でも大好きなんだ。
星座も神話も、元々あったものじゃない。全部、大昔の人が繋いだり、作ったりしたんだよ!
それを考えると、すてきだなって思うの。
「あっ七星だ! また星の本読んでる~」
「藍ちゃん! おはよう!」
教室。声を掛けてきたのは、肩まである髪を柔らかく揺らした藍ちゃんだった。小学生の時も、仲が良かった同級生。そっか、同じクラスなんだね。
新しいクラスは不安か……と言われると、そうでもない。地域の中学校だから、ここに来るのは近くの小学校の子がほとんど。だから教室には、小学生の頃から見知っている顔が何人かいるんだ。
「相変わらず、好きねぇ。そうそう、星と言えば見た? 朝のニュース!」
「あぁ、星が消えてるってやつ?」
「そう! あれで七星のこと思い出したなぁ」
ショックじゃない? と聞かれる。
「ショックというか……不思議かな」
ニュースでも言ってた通り、星が消えるのは別に珍しいことじゃないの。人と同じように、星にも寿命があるからね。
けどそれが「一斉に」、「たくさん」ってなると不思議だし、心配。天変地異でも起きるのかな。
「やめてよ~怖いこと言うの!」
「ごめんごめん! ……早く、原因が分かるといいけどね」
そっか。特に星が好きじゃないって言う人でも耳に入るニュースだったんだ。
本当に、何が起こっているんだろう?
本を閉じて、思わず声に出してしまう。
読んでいた本の表紙には『神秘の物語~春の星座~』ってタイトル。星や星座についての物語……つまり、神話が纏められている短編集だ。
今は春だから、春の星座を読もうって近くの図書館から借りてきた本だけど、本当に面白かった!
特に好きだったのはおひつじ座の話。
──昔あるところに、兄のプリクソスと妹のヘレという兄妹がいました。
二人は仲良しだったけど、あることがきっかけで兄が生贄にされ、殺されそうになってしまう。
プリクソスが殺される……! そう思った瞬間、プリクソスを、そして妹のヘレを助けだす影がありました。
それは美しい金色の毛を持つ、ひつじでした。
ひつじは二人を乗せ空を飛び、逃がしてくれたのです。
そしてこのひつじが、今のおひつじ座なのです。
何て素敵な話なんだろう!
普通に星を見るだけでも楽しいけど、そこに「物語」があるって知ると、もっとワクワクするな。そうだ、次はまた別の春の星座の神話を……。
「七星!! もう出る時間よ、新学期から遅刻するつもり?」
あっ、いけない!
私はキラキラとした神話の世界から、目の前の見慣れたリビングに戻ってきた。台所の向こうから見えるのは、呆れたようなママの顔。
「髪、結んでないじゃない」
「今結ぶ!!」
リュックに本を閉まって、洗面台へダッシュ。今日から中学生だっていうのに、忙しないなぁ、私。
『続いて、次のニュースです。ここ数日、「空から星が消える」という現象が話題になっています』
星? 一瞬、髪をとかす手を止めてしまって、慌てて手を動かした。遅刻しちゃう。
けれど私の興味はニュースにあるまま。耳がもし動くなら、テレビの音を拾うように動いていただろう。
『専門家は、「星が消えること事態は珍しくないが、ここまで多数の星が同時に、それも数日にかけて失われるのは見たことがない」と述べています。先週は、こぐま座やおひつじ座が空から丸ごと消えていたことが話題になっていましたね』
胸元まである髪を、一つに束ねる。それから、束ねた髪を、三つ編みに。
星が、消える? おひつじ座って……私がさっきまで読んでた星座! 星座がごっそり消えちゃうなんて、大変だよ!
『他国の天文学者によると、「星座があるべき場所から移動する」という現象も見られているようです。これは何かの前触れでしょうか?』
最後に、お気に入りの髪飾りで左側の前髪を留める。北斗七星の形をした髪どめなんだ。
ブラシを片付けて、リビングに戻る。一体星に何が起こってるんだろう? もっと知りたい!
『続いて、今日の天気です』
「七星! 本当に遅刻するわよ!」
……けれどリビングに戻る頃にはニュースは終わっていて、おまけにママに怒られちゃった。
うぅ、仕方ないか。とりあえず星のことは忘れて、学校へ行こう。
「行ってきます!」
外へ飛び出すようにドアを開ける。ふわり、ほのかに桜の香りがする。春、新学期にぴったりなのどかな天気だった。うーん、澄んだ青空! 今夜は星が綺麗に見られそうだな。
……なんて、結局星のことを考えながら、私は学校へと歩いて行ったのでした。
私は星が好きだ。
どのくらい好き? って聞かれたら、一番。
昔から、夜にぴかぴか光るお星さまが大好きだった私は、文字が読めるようになると、自然と星の本ばかりを読むようになった。星図鑑、神話の小説、「星」がタイトルに付く小説に、星が関係する物語……とにかくたくさん。
本を読むのは良いことだ! ってママもパパも喜んでたけど、あまりにも星の本ばかり読むから、呆れられたこともあったっけ。
でも大好きなんだ。
星座も神話も、元々あったものじゃない。全部、大昔の人が繋いだり、作ったりしたんだよ!
それを考えると、すてきだなって思うの。
「あっ七星だ! また星の本読んでる~」
「藍ちゃん! おはよう!」
教室。声を掛けてきたのは、肩まである髪を柔らかく揺らした藍ちゃんだった。小学生の時も、仲が良かった同級生。そっか、同じクラスなんだね。
新しいクラスは不安か……と言われると、そうでもない。地域の中学校だから、ここに来るのは近くの小学校の子がほとんど。だから教室には、小学生の頃から見知っている顔が何人かいるんだ。
「相変わらず、好きねぇ。そうそう、星と言えば見た? 朝のニュース!」
「あぁ、星が消えてるってやつ?」
「そう! あれで七星のこと思い出したなぁ」
ショックじゃない? と聞かれる。
「ショックというか……不思議かな」
ニュースでも言ってた通り、星が消えるのは別に珍しいことじゃないの。人と同じように、星にも寿命があるからね。
けどそれが「一斉に」、「たくさん」ってなると不思議だし、心配。天変地異でも起きるのかな。
「やめてよ~怖いこと言うの!」
「ごめんごめん! ……早く、原因が分かるといいけどね」
そっか。特に星が好きじゃないって言う人でも耳に入るニュースだったんだ。
本当に、何が起こっているんだろう?
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