星につむぐ物語-イストリア-

冬原水稀

文字の大きさ
21 / 23

20. ヒツジの想い、そして

しおりを挟む
 たぶん、羊が女の子をさらうのは、今もヘレを探しているからなんじゃないかな。記憶を失っても、ただただ、ヘレに関する「なにか」の後悔だけが残っていて。
『……ヘレ』
 ぽつり。
 横に振られた首。何度も、何度も。
『ヘレ、探ス!!!! ドコカニイル!!』
 ……っ!! なんて痛い声。こもった感情も痛いし、声の大きさも空気を割っていくみたい。
『探ス!! メェェェェッ、見ツケナイト、ヘレ、サミシイ!!』
「っ、羊さん、ヘレはいないの! みんなを返して、おねがい!」
『探ス、ヘレッ! ソウシナイト、プリクソスニ、カオムケ、デキナイ!! プリクソスニ、キラワレル』
 ……怖いんだね。自分のせいで妹がいなくなったって、プリクソスに嫌われることが。恨まれているかもしれないって、想像したら怖いんだ。
 分かるよ。私も、私のせいでひぃちゃんを悲しませたって思ってた。
「羊さん……本当のことを知って。本当のことを思い出して」
 人差し指を、空に向ける。
 ステラの作った、夜の中。涼やかな色に包まれて、その中で私は、心の奥底から、あたたかくて不思議な力が、湧き上がってくるのを感じた。
 指先に光がともる。自分の指先、そのものが星になったみたいに、光って。
 線を引く。

『メェエエエエエエエ!!』
 羊が、また突進してきた。

 私は星座を、紡ぎ続ける。
 つながる。星が。つながっていく星に、私はありったけの想いを一緒に混ぜこんだ。
 線を。星を。想いを。
 全部まとめて、指輪にこめる!!!!

「羊さんを止めて……『りゅう座』!!」
「りゅう座さんーっ!!」

 右肩で、一緒に想いをこめてくれたホクトが繰り返す。
 すると。
 体育館の天井をおおわんばかりの……大きな大きな竜が、夜空をうめつくした。お、大きい……本当に、りゅう座だ。
 りゅう座は、私のオリジナルの星座じゃない。実際にある星座。
 そして、牡羊座の神話にかかわる星座でもある。
『……私を呼んだのは、君かね』
 ブルゥゥッ!! と空気がゆれた。耐えられなくて、思わずしりもちをつく。すごいオーラ……羊も、空気と一緒にゆれた地面に転んでしまった。
 しばらく、ポカンとする。けど、ふわふわただよっている竜のヒゲを見てハッと我に返った。
「そ、そうです! 私、です!」
 緊張して、すぐに言葉が出てこない。羊さんのことを助けてあげてください。牡羊座の話を、プリクソスのその後の話をしてあげてください。そう、言おうとしているのに。
 竜は私をジッと見つめた後。もう一度立ち上がり、私をにらみつけている羊へと視線を移した。
『ヘレ……ヘレェェェェッ』
 離れないと、マズそう!
 マズそう、だけど……。
「どうしたの、ナナセ!?」
「ち、力が、入らなくて」
 りゅう座を描くのに、たくさん集中力を使っちゃったからかも。さっきの女の子みたいに、立てない。
 すると、ステラが私の横に跪いた。ステラ……。
「問題ない。あの星座を作った時点で、ナナセの役割は終わっている」
「で、でも離れなきゃ」
 ステラは、だまって羊の方を向く。私もそれを、視線で追う。
 ガリッ、ガリッ! 床を数回蹴った羊が、またこっちに猛ダッシュ!!
 その時、ふわっと。りゅう座が私たちと羊さんの間に割りこんで入ってきた。
『ヘレ。帰ロウ。プリクソスモ、心配シテル……』
 金色とはかけ離れた、すすけた灰色の羊。メチャクチャな独り言をつぶやいている。
 羊さんは……私に帰ろうって言ってる。もう、何人もの女の子を連れて行っちゃったはずなのに。ヘレじゃなかったから、まだずっと。
『しっかりせんか!!!!』
 ゴウッ!!
 竜が一喝するだけで、風が巻き起こった。吹き飛ばされるっ……!! ……と、思ったけど、ステラが私の肩を支えてくれていた。
 なんだか、すごくあったかい手に安心した。私は、ホクトを離さないようにしないと。ぎゅっと抱きしめる。こっちもあったかい。
 吹き荒れる風の中心。向かい合う、ふたつの星座。
『……ヘ、レ。ドコ、イル……』
『まだ言うか。牡羊座よ、思い出せ。ヘレはもういない』
『プリクソス、ガ、待ッテル』
『プリクソスももう待ってなどおらん!! やつは、とうの昔に前を向き、残りの人生を生きたのだ!!』
 ピクリ、と羊の動きが止まる。
 そう、それは、きっと牡羊座の知らない話。牡羊座の羊が、亡くなってお星さまになった後のこと。
 竜の切れ長の目が、私に目くばせした。私は、うなずく。……お願い、指輪。もう少し、私とあの竜に、力を貸して。
『……そもそもプリクソスは、お前を恨んでなどいないのだ』
 プリクソスを……ここに、!!



 ──「これを、守ってはくれないか」

 そう、竜に語りかける青年がいた。人の良さそうな笑みに、どんな人も安心させてしまうような、やさしい雰囲気をまとった青年。
 体育館が、神話の世界に染まる。あふれる緑。その中で踊るいろとりどりの色彩は、きれいに咲きほこる花たちだ。ふわり、すずしい風が頬をなでていく。
 私たちは元々そこに座っていたかのように、緑がいっぱいの草原に腰を下ろしていた。良かった、うまくいったんだね。キョロキョロするのはホクトと……羊。
 そして、幻でできた青年を目に留めると。
『プリク、ソス』
 おびえるように、そう言った。


 ──それは何なのだ、と竜は聞いた。
 プリクソスが守ってほしいと言った「もの」を見つめて。それはそんなに価値のあるものなのか? と。
 その問いに、青年はやさしく目を細めた。愛おしそうに、「それ」をなでる。
「これは、国の宝だ」
『そう見えないが……今やお前は国の王になった。「宝」というのなら、もっと貴重なものがあるだろう』
「いいや、僕にとって、これより大切なものなど無いよ。あなたは、眠らないことで有名な竜だ。あなたなら、いつの時間もこの宝を守ってくれる。そう信じて、あなたに頼むんだ」
 宝だ、と言ったその手には……金色の毛皮が、大事に抱えられていた。


『プリクソス』
 ぼうぜんと、羊がつぶやく。
 神話と私たちの世界が、ゆっくりと溶けて、まじりあう。
 りゅう座の記憶の中の存在であるはずの青年は、プリクソスは、ゆっくりと羊の方を振り返った。
 羊の方へ、歩みを進める。
 羊は一歩一歩、後ずさる。
 ひとつひとつ、近づいていく。確かにきざまれる一瞬に、ドクドク、私の心臓が鳴っていた。
「……かつて、僕と妹を助けてくれた者が亡くなったんだ。これはその彼の毛皮でね。きれいだろう?」
『……!!』
 プリクソスの腕の中の金色が、羊の漆黒の瞳に反射して、光る。もう羊が、失ってしまった色。
 ポツリ。ポウッ。キラキラ……。
 金色の毛皮のかがやきが、きっとあまりに大きかったから。
 羊の目の中に入りきらなくて、あふれて。
 あふれたキラキラは……羊の、涙になってこぼれ落ちた。
「僕は、ずっとずっと、これを守っていこうと思う。彼を忘れないために」
 ポロッ。ポロ、ポロ。
「ヘレが海の中に還ってしまって……悲しんでいた僕を、彼はずっとなぐさめてくれていた」
 ──『プリクソス、もう少しです! あなたまで海に落ちたら、ヘレが悲しんでしまう』
 ──『ヘレの体は必ず、必ず私が後で探しに行きます。だから今は、私にしっかりつかまって』
「そして無事に生きた私は、今こんなに幸せだ」
 幸せ、というプリクソスの言葉は。疑いようもなかった。
 だって、こんなにも温かい。彼が、羊のことを大切に思っていたってことが、私にも分かるもの。
 私にも届いているなら、きっと。
『……私がもっと気をつけていたら、ヘレは海に落ちなかったのです』
 ポロポロ。羊さんの言葉から、冷たさがはがれて落ちた。涙と一緒に、「本当の気持ち」が流れていく。
『それに、ヘレを見つけてあげられなかった……! ごめんなさい、ごめんなさい……!!』
「何を言う。あなたは僕の国の……いや、僕と妹の、宝物だ」
 青年が、ゆっくりと両腕を広げて。

 羊を、抱きしめた。

 大切そうに。まさしく、宝物を抱きしめるやさしさで。
 羊は目を閉じて、ためらって。それでもやがて、プリクソスに頬を寄せた。
 ふと、私の腕がぬれて、ホクトが泣いていることに気づいた。それを見下ろした瞬間、ポタリ。私の目からも、こぼれたもの。いつの間に、泣いてたんだ。羊とプリクソスと、同じように。
 本当の想いが、通じ合ったんだね。これで、羊がもう女の子を連れ去る必要はない。これで、もう羊が苦しむことはない。
「ありがとう、僕の宝物……さようなら」
 草原の景色が、うすれて消えていく。神話の終わりをつげるように。本の最後のページをめくる時の、何となくさみしい感じを、残して。
 泡のように、消える、消える。
 笑顔のプリクソスも。羊の……額の黒い宝石も。
「わぁ……!」
 ホクトが目をかがやかせた。それもそうだ。
 羊の毛皮の灰色が、はがれて……姿を現したのは、金色の毛皮!!
 彼が体をゆらすと、ふわふわの金色も、共にゆれた。まるで、風に麦がゆれるようで。
「とってもきれい……!!」
「元の姿を取り戻したようだな」
『全く、世話の焼けるやつだ。獣の羊以下に身を落としおって』
 いつも通り、冷静なステラとりゅう座さん。りゅう座さんはきびしいね……。
 羊からはがれ落ちた灰色は、ホコリのようにどこかへ吹いて飛んでった。ぱちり、まばたきをする。その目にも、プリクソスからもらった光が差しこんでいた。コツリ、コツリ。近づいてくるヒヅメの音。
 さっきまでのヒヅメの音より、上品に聞こえる。
 シュッと整った羊の顔が、私を見上げた。
『たくさん、迷惑をかけましたね。ごめんなさい。そしてありがとう、お嬢さん』
「ううん。元に戻って、よかった」
 もちろん、怖いことはあった。でも、今こうしてうれしそうで穏やかな羊さんを見ると、指輪の力を使ってよかったって、思える。
「あ、そうだ」
『?』
「『ヘレスポントス』っていう名前の海峡があるの……ヘレが落ちてしまった、って言われてる海」
 羊の目が大きくなった。
 私は、せいいっぱい、笑ってみせる。
「牡羊座に戻って、その海の上を通ることがあったら……ヘレに、挨拶していくといいよ。星空から!」
 星空と、海と、そして天国と。
 牡羊座とふたりの兄妹は、離れていてもずっとつながってる。それはとっても……「ステキ」なことだ。ホクトの言葉を借りるなら、ね!
 羊はうなずいた。その表情が、わずかにほほえんだように見えた……その時、だんだんと、輪郭がおぼろげになっていく。
 ふわ、ふわ。からす座の時と同じ。光の粒になって、空に帰っていく。羊さんも、りゅう座も。
『お嬢さん、名前は?』
「私? 私は……七星!」
『そうか、ナナセ。……本当に、ありがとう』
 言葉が、煙みたいに溶けて。
 私の心に、すっとしみていく。
 静かな体育館が戻ってきた後、すぐに、「あれ? ここどこ?」「何してたんだっけ……」というざわめきが突然巻き起こった。よかった、羊が連れ去った子どもたちが、みんな戻ってきたんだ。
 よかった、本当に……あれ、何だか、頭が、重い……。
「ナナセ!?」
 大きいはずのホクトの声も、何だか遠くて。だめ、何か、安心したら一気に……。
 スッと消えていく体の感覚。代わりに、温かい誰かの腕に、包まれているような気がした。
「力をたくさん使い、消耗したんだ。よく頑張った。とりあえず現時点、案じる事はない……おやすみ、ナナセ」
 いつもの無感情に、やわらかさが混じってる。
 そう、思ったけど。私は彼の言う通りに、眠ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

#アタシってば魔王の娘なんだけどぶっちゃけ勇者と仲良くなりたいから城を抜け出して仲間になってみようと思う

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 ハアーイハロハロー。アタシの名前はヴーゲンクリャナ・オオカマって言ぅの。てゆうか長すぎでみんなからはヴーケって呼ばれてる『普通』の女の子だょ。  最近の悩みはパパが自分の跡継ぎにするって言って修行とか勉強とかを押し付けて厳しいことカナ。てゆうかマジウザすぎてぶっちゃけやってらンない。  てゆうかそんな毎日に飽きてるンだけどタイミングよく勇者のハルトウって子に会ったのょ。思わずアタシってば囚われの身なのってウソついたら信じちゃったわけ。とりまそんなン秒でついてくよね。  てゆうか勇者一行の旅ってばビックリばっか。外の世界ってスッゴク華やかでなんでもあるしアタシってば大興奮のウキウキ気分で舞い上がっちゃった。ぶっちゃけハルトウもかわいくて優しぃし初めての旅が人生の終着点へ向かってるカモ? てゆうかアタシってばなに言っちゃってンだろね。  デモ絶対に知られちゃいけないヒミツがあるの。てゆうかアタシのパパって魔王ってヤツだし人間とは戦争バッカしてるし? てゆうか当然アタシも魔人だからバレたら秒でヤラレちゃうかもしンないみたいな?  てゆうか騙してンのは悪いと思ってるょ? でも簡単にバラすわけにもいかなくて新たな悩みが増えちゃった。これってぶっちゃけ葛藤? てゆうかどしたらいンだろね☆ミ

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot
児童書・童話
 薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。 「シチュー作れる?」  …………へ?  彼女の正体は、『森の魔女』。  誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。  そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。  どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。 「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」 「あ、さっきよりミルク多めで!」 「今日はダラダラするって決めてたから!」  はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。  子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。  でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。  師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。  表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。

処理中です...