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気まぐれにしてみる
喫茶店にて
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ふと立ち寄ったのは、地元に昔からある古い喫茶店だ。小さな喫茶店に対して、場所をもて余すように広い駐車場があるのは、田舎の特徴だ。
西洋風だか和風だかわからない和洋折衷な古いデザインだが、手入れは行き届いており清潔感がした。
夕日と秋風に後押しされるように両開きの扉を押し開く。
カラン、低く心地よい音が店内に鳴り響いた。夕日で仄かに赤く染まる店内にはオシャレなジャズが鳴り響き、木を用いた内装は落ち着いた空間を演出している。
「いらっしゃいませ、空いている席へ」
澄んだ女性の声が響く。ソプラノのよりも少し低い、テノールと言うべきだろうか。聞き心地の良い声の主はカウンターの向こう側にいた。
「ええ、じゃあ…カウンターで」
窓側の席を横目で見て、強い西日が直に当たっているのを確認し、そう答える。
カウンター席は何故か席が高い。僕は身長178cmというどちらかと言えば高いカテゴリーに部類のはずなのだ。
しかし、座った椅子はやはり足が床に着くことはなく、ぶらぶらと足をもて余すことになる。
テーブルに立てられているメニューに手を伸ばしつつ、カウンターにいる彼女を盗み見る。
真っ直ぐで腰にまで届きそうな黒髪は流れるように美しく、白く透き通った肌は健康的に赤みが刺している。そして、息を呑むような美しく整った顔立ちだ。
「まるで、人ではないみたいだ」
小さく呟き少し離れた距離に立っている彼女には聞こえていないはずなのだが、彼女はこちらに顔を向け口を開く。
「ええ、やはり気づきますか?」
その反応を返すということは、妖怪やその類いということだろう。幼い頃からお馴染みのことの彼にとっては、既に慣れっこになっていた。
「よくあることなんですよ。そういう体質なんです」
「…今時、珍しいですね」
そう言うと、彼女は作業に戻った。彼女の体に隠れてよくは見えない。
「……あの、注文いいですか?」
「もちろんどうぞ」
「じゃあ、ホットコーヒーを一つ」
彼女はコクりと頷くと、ミルを取り出し豆を挽き砕き始める。店に入っていたときから感じていた、芳ばしい薫りがいっそう大きくなる。
「手動のミルを使うんですね?」
「そうなんです。機械も美味しいのですけど、普通のコーヒーであれば、こちらの方が美味しいのですよ」
「そうなんですか。なんというか、凄く人間味溢れる感じがします」
そう言うと、彼女は困ったような表情を浮かべる。
「そう言われると、むず痒いですね。私は人ではないのですから」
彼女は目線を手元に戻す。
既に沸かし終えた小さいポットを片手に、ろ紙に載せた珈琲豆にお湯を流し込む。
「いい香りですね」
「そうでしょう?この珈琲豆はとある方ら取り寄せている特別なものなのですよ」
彼女は少し自慢げな表情を浮かべる。
「はい、できました。オリジナルコーヒーです」
カウンターの向こう側から差し出されたコーヒーは、黒々としていて芳しい香りを醸し出す。シンプルな白い器に黒が良く映えている。
一口すする。
「……美味しい」
西洋風だか和風だかわからない和洋折衷な古いデザインだが、手入れは行き届いており清潔感がした。
夕日と秋風に後押しされるように両開きの扉を押し開く。
カラン、低く心地よい音が店内に鳴り響いた。夕日で仄かに赤く染まる店内にはオシャレなジャズが鳴り響き、木を用いた内装は落ち着いた空間を演出している。
「いらっしゃいませ、空いている席へ」
澄んだ女性の声が響く。ソプラノのよりも少し低い、テノールと言うべきだろうか。聞き心地の良い声の主はカウンターの向こう側にいた。
「ええ、じゃあ…カウンターで」
窓側の席を横目で見て、強い西日が直に当たっているのを確認し、そう答える。
カウンター席は何故か席が高い。僕は身長178cmというどちらかと言えば高いカテゴリーに部類のはずなのだ。
しかし、座った椅子はやはり足が床に着くことはなく、ぶらぶらと足をもて余すことになる。
テーブルに立てられているメニューに手を伸ばしつつ、カウンターにいる彼女を盗み見る。
真っ直ぐで腰にまで届きそうな黒髪は流れるように美しく、白く透き通った肌は健康的に赤みが刺している。そして、息を呑むような美しく整った顔立ちだ。
「まるで、人ではないみたいだ」
小さく呟き少し離れた距離に立っている彼女には聞こえていないはずなのだが、彼女はこちらに顔を向け口を開く。
「ええ、やはり気づきますか?」
その反応を返すということは、妖怪やその類いということだろう。幼い頃からお馴染みのことの彼にとっては、既に慣れっこになっていた。
「よくあることなんですよ。そういう体質なんです」
「…今時、珍しいですね」
そう言うと、彼女は作業に戻った。彼女の体に隠れてよくは見えない。
「……あの、注文いいですか?」
「もちろんどうぞ」
「じゃあ、ホットコーヒーを一つ」
彼女はコクりと頷くと、ミルを取り出し豆を挽き砕き始める。店に入っていたときから感じていた、芳ばしい薫りがいっそう大きくなる。
「手動のミルを使うんですね?」
「そうなんです。機械も美味しいのですけど、普通のコーヒーであれば、こちらの方が美味しいのですよ」
「そうなんですか。なんというか、凄く人間味溢れる感じがします」
そう言うと、彼女は困ったような表情を浮かべる。
「そう言われると、むず痒いですね。私は人ではないのですから」
彼女は目線を手元に戻す。
既に沸かし終えた小さいポットを片手に、ろ紙に載せた珈琲豆にお湯を流し込む。
「いい香りですね」
「そうでしょう?この珈琲豆はとある方ら取り寄せている特別なものなのですよ」
彼女は少し自慢げな表情を浮かべる。
「はい、できました。オリジナルコーヒーです」
カウンターの向こう側から差し出されたコーヒーは、黒々としていて芳しい香りを醸し出す。シンプルな白い器に黒が良く映えている。
一口すする。
「……美味しい」
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