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23 新しい命
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もう間もなく京湖から新しい命が誕生する。真夜中に産気づいた彼女のために、朱彰浩はいそぎ町へと向かった。真夜中の訪問者に関所の兵士は尋問するが、晶鈴の通行証と、薬師の陸慶明の札が役に立ちすぐに通してくれた。更には馬車も融通され、素早く産婆を連れ戻ることができた。
「もう少しでごじゃいましゅよぉ」
しわくちゃの年を取った産婆が、悲鳴とうめき声をあげる京湖をなだめるように声をかける。
「頑張って!」
晶鈴は自分の手を血がにじむほど強く爪を立て握る京湖を励ます。夫の彰浩は外でうろうろと落ち着きなく待つだけだった。一刻で赤ん坊が大きな産声とともに誕生した。
「生まれたわ!」
感動に震えながら、晶鈴は外の朱彰浩に声をかけた。彼は勢いよく転がり込むように中に入ってきた。
「あなた……。男の子よ」
普段も優美な京湖はさらに、かがやくような笑顔を見せる。
「そうか。息子か」
放心状態で彰浩は母子を見つめた。お湯で綺麗にされた赤ん坊にさっそく乳を含ませる。温かく和んだ空気が流れる。安堵もつかの間「こりゃいかん!」と産婆が声を荒げる。その声にハッとし晶鈴も破水していることに気づき、痛みを感じる。
「う、ううっ、うぅ」
「と、隣へ。あんたはまた外で湯を沸かして」
「わ、わかったっ」
息つく間もなく朱彰浩は急ぎ外へ飛び出した。腰を押さえながら呻き、晶鈴は京湖の隣に横たわる。
「ごめ、ん。邪魔しちゃって――」
「気にしないで、今度は自分のことだけ考えて!」
母となった京湖は力強い瞳で見つめ、晶鈴がしたように彼女も強く手を握った。脇に赤ん坊を抱えたまま。
「もう、頭が出とる! いきみなされ!」
「くうううっ――」
「ほれ! もうちょい!」
「あああっ!」
「――!」
またまた激しく大きな産声が小屋を震わせる。外で湯を沸かしていた彰浩の耳にも届く。
「これはまた元気の良い女の子で」
痛みから一気に解放され晶鈴も喜びに包まれる。声にならないまま赤ん坊を抱く。仲良く並んだ晶鈴と京湖はうるんだ瞳と喜びを交換し合う。
「あっという間でございましたなぁ。まるで双子のようでございましゅよ」
安産ではあったが、二人取り上げるということは大変なことのようで、老婆は随分疲労したようだった。
「これを……」
彰浩が礼金の入った小袋を渡す。
「こりゃあ、どうも」
頭を下げて恭しく受け取ると、老婆の疲労が少し軽減されたようだった。
「ありがとう、おばあさん」
「なんの、なんの。まあしかしこうも同じ時間帯に生まれるとは……」
ちらっと彰浩を見上げて「まあ、そういうこともあろうか」と納得したように頷く。
「町へ送ってくる」
彰浩はもう一度赤ん坊の顔を覗き込み、満足した様子で老婆と外へ出ていった。
京湖はくすっと笑って「産婆のおばあさん、きっと誤解してるわね」と晶鈴の赤ん坊を見つめた。
「何を?」
「きっと晶鈴のことも、夫人だと思ったのよ」
「え、あら、困るわね。気を悪くしないでね」
「ううん、全然。あなたと姉妹のようで嬉しいわ」
「ありがとう。私も京湖を姉のように思うわ」
出産を機にますます友情が深まる二人だった。
「この子たちが仲良く育つといいわね」
「ええ、本当の兄と妹のように」
心から明るく願う晶鈴に、一瞬表情に陰りを見せる京湖は「そうね、そうね」と自分自身に言い聞かせていた。夜明け間近の空には星が二つ輝いている。
「もう少しでごじゃいましゅよぉ」
しわくちゃの年を取った産婆が、悲鳴とうめき声をあげる京湖をなだめるように声をかける。
「頑張って!」
晶鈴は自分の手を血がにじむほど強く爪を立て握る京湖を励ます。夫の彰浩は外でうろうろと落ち着きなく待つだけだった。一刻で赤ん坊が大きな産声とともに誕生した。
「生まれたわ!」
感動に震えながら、晶鈴は外の朱彰浩に声をかけた。彼は勢いよく転がり込むように中に入ってきた。
「あなた……。男の子よ」
普段も優美な京湖はさらに、かがやくような笑顔を見せる。
「そうか。息子か」
放心状態で彰浩は母子を見つめた。お湯で綺麗にされた赤ん坊にさっそく乳を含ませる。温かく和んだ空気が流れる。安堵もつかの間「こりゃいかん!」と産婆が声を荒げる。その声にハッとし晶鈴も破水していることに気づき、痛みを感じる。
「う、ううっ、うぅ」
「と、隣へ。あんたはまた外で湯を沸かして」
「わ、わかったっ」
息つく間もなく朱彰浩は急ぎ外へ飛び出した。腰を押さえながら呻き、晶鈴は京湖の隣に横たわる。
「ごめ、ん。邪魔しちゃって――」
「気にしないで、今度は自分のことだけ考えて!」
母となった京湖は力強い瞳で見つめ、晶鈴がしたように彼女も強く手を握った。脇に赤ん坊を抱えたまま。
「もう、頭が出とる! いきみなされ!」
「くうううっ――」
「ほれ! もうちょい!」
「あああっ!」
「――!」
またまた激しく大きな産声が小屋を震わせる。外で湯を沸かしていた彰浩の耳にも届く。
「これはまた元気の良い女の子で」
痛みから一気に解放され晶鈴も喜びに包まれる。声にならないまま赤ん坊を抱く。仲良く並んだ晶鈴と京湖はうるんだ瞳と喜びを交換し合う。
「あっという間でございましたなぁ。まるで双子のようでございましゅよ」
安産ではあったが、二人取り上げるということは大変なことのようで、老婆は随分疲労したようだった。
「これを……」
彰浩が礼金の入った小袋を渡す。
「こりゃあ、どうも」
頭を下げて恭しく受け取ると、老婆の疲労が少し軽減されたようだった。
「ありがとう、おばあさん」
「なんの、なんの。まあしかしこうも同じ時間帯に生まれるとは……」
ちらっと彰浩を見上げて「まあ、そういうこともあろうか」と納得したように頷く。
「町へ送ってくる」
彰浩はもう一度赤ん坊の顔を覗き込み、満足した様子で老婆と外へ出ていった。
京湖はくすっと笑って「産婆のおばあさん、きっと誤解してるわね」と晶鈴の赤ん坊を見つめた。
「何を?」
「きっと晶鈴のことも、夫人だと思ったのよ」
「え、あら、困るわね。気を悪くしないでね」
「ううん、全然。あなたと姉妹のようで嬉しいわ」
「ありがとう。私も京湖を姉のように思うわ」
出産を機にますます友情が深まる二人だった。
「この子たちが仲良く育つといいわね」
「ええ、本当の兄と妹のように」
心から明るく願う晶鈴に、一瞬表情に陰りを見せる京湖は「そうね、そうね」と自分自身に言い聞かせていた。夜明け間近の空には星が二つ輝いている。
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