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 珠子は包み隠さず藤井道弘の要望を吉弘に伝えた。

吉弘は表情を変えず静かに最後まで聞いている。

数秒押し黙ったのち吉弘が沈黙を破った。



「珠子お母さまはどうしたいの?」

「ど、どうって。吉弘さんをちゃんとした住まいと教育を与えて差し上げたいのよ。でもキヨさんと離れ離れにはさせたくないの」

「母さんは?」

「わたしは珠子さんが決めることが一番いいことだと思ってるの」

「ふーん」



 なかなか答えが見つからなかった。

こちらの都合の良い話を道弘が聞いてくれるかどうかわからない。



 吉弘が珠子をじっと見つめて「ねえ、お母さまはお好きな方がいらっしゃるのでしょう?」と突然言い始める。

「えっ?どうして……そんなこと……」

 珠子とキヨはぎょっとして吉弘を見つめた。
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