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19 願い
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シャルロッタの寝室の前に誰もいないのを見計らってシスター・ロクサーナはそっとドアノブを回して中に入る。狭い寝室はすぐにベッドで眠るシャルロッタを見ることが出来る。足音を立てないように、そっとロクサーナはベッドの脇に立ち、シャルロッタの顔を覗き込む。
「シャル……」
白っぽいが普通の顔色に戻り、安定した呼吸をするシャルロッタを見て安堵のため息を漏らした。
「よかった、本当に……」
彼女は5歳くらい年上で、シャルロッタがこの修道院に来た頃から妹のように可愛がってきた。ロクサーナにとって一番年の近い娘がシャルロッタだった。柔らかい頬をそっと撫でる。すべすべとして心地よかった。妹が失われるのではないかと、心配でずっと祈ってきた。安心するといつものように頭を撫で、おでこを出し、耳に髪をかけてやった。ふと首筋に二つの穴に気付く。
「アンドレイ様の……」
ごくっとロクサーナは生唾を飲み込む。シャルロッタが死なずに済んだと安堵すると、今度はいつも願っていた自分の欲望が沸き上がってくる。シャルロッタの首筋の二つの穴。それはアンドレイが牙を突き立てた痕なのだ。
ロクサーナだけではない。この修道院にいるすべてのシスターの願いは、アンドレイの花嫁になることだ。この修道院は、代々アンドレイの一族のもので乙女たちは彼らの花嫁、もしくは糧となった。身寄りのない少女たちはここで生涯を過ごしている。アンドレイの父の代まで、乙女たちは吸血鬼の糧となるべく清らかに過ごしていた。
――アンドレイの父・ルカは何人もの乙女を糧にしていた。乙女たちは当然のごとく身を差し出し、糧となり代償に快楽を得る。その無上の悦びは全身に刻み込まれ記憶された。乙女たちは毎日、順番にルカに身を差し出す。ルカは暴飲暴食をする質ではなく、毎日一人の乙女のわずかな血を糧とした。
ある時からこの食事の習慣は終わる。ルカが花嫁を選んだからだった。誰よりも清らかで美しい花嫁になった娘・ソフィアの血をルカは吸わなかった。その代わりソフィアはルカの息子・アンドレイを得る。アンドレイが成人に達すると不思議とルカは消滅した。ソフィアは十分にアンドレイを慈しみ育て天寿を全うした。もう何百年も前のことだった。
ベッドの上に身を乗り出してきたロクサーナは、シャルロッタを上目遣いでチラチラ見ながら尋ねる。
「ねえ、どうだった? あの、アンドレイ様に助けていただいた時。どんな感じだったの?」
「あまりはっきりと覚えてはいないのだけど……」
記憶をたどりながら、シャルロッタは首筋がわずかにちくりとしたこと、しかしすぐに心地よくなったこと、噛み痕を舐められたり吸われたときの感覚が、今までで一番気持ちよかったことなどを話した。
「そ、そうなのね」
「ぼんやりしていたけれど、何かしら、こんなに素晴らしいと思った瞬間がないように感じたのよ」
ロクサーナはまたごくりと喉を鳴らしてシャルロッタに近づく。シャルロッタがもう顔がくっつきそうだと思っていると、ロクサーナはふっと顔をあげ白い喉を見せる。
「ちょっとだけ、アンドレイ様の真似をしてみて……」
「え?」
「ね? ここを噛んでみてくれないかしら」
気が付くとロクサーナは左手で自身の胸のふくらみを揉み上げ、右手は両足の間に挟まれている。
「噛むの?」
「ええ! 噛んで!」
シャルロッタはまためまいを覚える。ロクサーナの首筋から甘い香りが漂っている気がする。まるでチョコレートのような。甘い蜜に誘われるようにシャルロッタはロクサーナの希望通りに首を噛んだ。
「シャル……」
白っぽいが普通の顔色に戻り、安定した呼吸をするシャルロッタを見て安堵のため息を漏らした。
「よかった、本当に……」
彼女は5歳くらい年上で、シャルロッタがこの修道院に来た頃から妹のように可愛がってきた。ロクサーナにとって一番年の近い娘がシャルロッタだった。柔らかい頬をそっと撫でる。すべすべとして心地よかった。妹が失われるのではないかと、心配でずっと祈ってきた。安心するといつものように頭を撫で、おでこを出し、耳に髪をかけてやった。ふと首筋に二つの穴に気付く。
「アンドレイ様の……」
ごくっとロクサーナは生唾を飲み込む。シャルロッタが死なずに済んだと安堵すると、今度はいつも願っていた自分の欲望が沸き上がってくる。シャルロッタの首筋の二つの穴。それはアンドレイが牙を突き立てた痕なのだ。
ロクサーナだけではない。この修道院にいるすべてのシスターの願いは、アンドレイの花嫁になることだ。この修道院は、代々アンドレイの一族のもので乙女たちは彼らの花嫁、もしくは糧となった。身寄りのない少女たちはここで生涯を過ごしている。アンドレイの父の代まで、乙女たちは吸血鬼の糧となるべく清らかに過ごしていた。
――アンドレイの父・ルカは何人もの乙女を糧にしていた。乙女たちは当然のごとく身を差し出し、糧となり代償に快楽を得る。その無上の悦びは全身に刻み込まれ記憶された。乙女たちは毎日、順番にルカに身を差し出す。ルカは暴飲暴食をする質ではなく、毎日一人の乙女のわずかな血を糧とした。
ある時からこの食事の習慣は終わる。ルカが花嫁を選んだからだった。誰よりも清らかで美しい花嫁になった娘・ソフィアの血をルカは吸わなかった。その代わりソフィアはルカの息子・アンドレイを得る。アンドレイが成人に達すると不思議とルカは消滅した。ソフィアは十分にアンドレイを慈しみ育て天寿を全うした。もう何百年も前のことだった。
ベッドの上に身を乗り出してきたロクサーナは、シャルロッタを上目遣いでチラチラ見ながら尋ねる。
「ねえ、どうだった? あの、アンドレイ様に助けていただいた時。どんな感じだったの?」
「あまりはっきりと覚えてはいないのだけど……」
記憶をたどりながら、シャルロッタは首筋がわずかにちくりとしたこと、しかしすぐに心地よくなったこと、噛み痕を舐められたり吸われたときの感覚が、今までで一番気持ちよかったことなどを話した。
「そ、そうなのね」
「ぼんやりしていたけれど、何かしら、こんなに素晴らしいと思った瞬間がないように感じたのよ」
ロクサーナはまたごくりと喉を鳴らしてシャルロッタに近づく。シャルロッタがもう顔がくっつきそうだと思っていると、ロクサーナはふっと顔をあげ白い喉を見せる。
「ちょっとだけ、アンドレイ様の真似をしてみて……」
「え?」
「ね? ここを噛んでみてくれないかしら」
気が付くとロクサーナは左手で自身の胸のふくらみを揉み上げ、右手は両足の間に挟まれている。
「噛むの?」
「ええ! 噛んで!」
シャルロッタはまためまいを覚える。ロクサーナの首筋から甘い香りが漂っている気がする。まるでチョコレートのような。甘い蜜に誘われるようにシャルロッタはロクサーナの希望通りに首を噛んだ。
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