スカーレットオーク

はぎわら歓

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風の住処(番外編)

11 ワンピース

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 早苗は珍しくワンピースを出して着た。
デニム生地でそれほど可愛らしくもないのだが。
 (来るかな、今日)

あれから日曜日が待ち遠しかった。
 返事をどうしようかまだ決めかねてはいるのだが、ワンピースを選んだことが返事のような気もしている。

 早苗は自分の背が高いことを気にしているので、ローヒールの靴ばかりだが、
 颯介と身長差があまりないことを思い出し、ペタンコのサンダルを選んで履いた。

  五分ほど歩くと図書館が見えてくる。
 今日は少し早目に到着した。
 中に入り壁に貼ってある掲示物や広告を眺める。
 (そろそろ花火大会か……)

  休憩コーナーに目をやると、すでに颯介が待っていた。
 「先生。こんにちは」
 「あ、こんにちは」
  今日の颯介も爽やかでこざっぱりとしており優しい目をしていた。

  ソファーから立ち上がって、颯介が早苗の目の前にやってくる。
 「ワンピース似合いますね」
  にっこりとして颯介は言った。
 早苗は少し赤面して、「ありがとうございます」と、言った。

 「どこか行きませんか?暑いけど」
 「そうですね。ここだとお話しできませんからね」
 「じゃ、今度こそお茶しましょう」
  颯介はそういって早苗を連れ出した。

  颯介は早苗をミラーで盗み見した。
 (かなり好感触)

  いつもは一つにまとめている、肩ぐらいまでの髪を今日はおろしているし、ワンピースだ。
 卵型のつるんとした顔に、意志の強そうな眉と半月型の優しい目が矛盾するようにセットになっている。
 大柄な体躯に小さな手。
 見れば見るほど颯介の好みだった。

 「風が気持ちいいんですね。オープンカーって」
  早苗に、いきなり言われてドキッとしたが、
 「ええ。停まると夏は暑いですけどね」
  と、すまして答えた。


  先週は入れなかったカフェに来た。
 今日は少し時間が早いのか、空いているようだ。
 「よかった。入りましょう」
 「ええ」

  店内はアジアンリゾートという雰囲気で、夏には雰囲気のいい店だった。
ちょうど奥の静かな席が空いており、案内された二人は席に着いた。

 「素敵なお店ですね」
 「知り合いが教えてくれたんです」

  颯介は初めてデートする相手には必ず行ったことのない店を選んだ。
 少しでも他の女の影がちらつくと、途端にうまくいかなくなり自分自身もモチベーションが下がるからだった。
 (そろそろ市内に行ける店がなくなってきたな。また直樹に調べてもらっとこ)

  店員がメニューを持ってきた。
メニューも少し変わっていて、南国フルーツが多く使われているようだ。

 「なんか変わったもの多いですね」
 「ほんとだ。おなか空いてます?」
 「いえ。そんなに」
 「うーん。ココナッツとマンゴーとバナナか。ココナッツジュースでも飲んでみようかなあ」
 「私もそうします。」
 「パフェとか食べません?遠慮しないで」
 「さっきお昼済ませたばっかりで。残念ですけど」
  早苗は柔らかく笑って言った。
 「じゃ、ココナッツジュース飲みましょうか」

  定員に二つ頼んでから改まって咳払いをして早苗を見つめた。
 目が合って早苗が少し目線を下にずらす。
 (なんか見合いみたいになってるな)

 「えーっと。先生って地元ですか?」
 「あ、いえ。静岡に来たのは小学生の時からでもともと横浜なんです。
 母の実家はここですけど」 
 「へー。葵の母親から聞いたんですけど僕たち同い年らしいですね」
 「そうなんですか。同い年でもちょっと地区が違うと全然わかりませんよね。
 大友さんは若く見えたから年下かと思ってました」
  (同じ地区じゃなくてよかった)

 「いやー。颯介って呼んでください」
 「じゃ、私のことも『先生』じゃなくて早苗でいいです」
  ココナッツジュースが運ばれてきた。

 「お待たせしました」
 「え」
 「あ」
  二人の間に二本のストローが刺さったココナッツの実がドンっと置かれる。
 「ご注文は以上でよろしかったですか?ごゆっくりどうぞ」

  二人は少し沈黙してココナッツをみた。
これは颯介も狙ってなかったことなので少し驚いたが、
 「あの。早苗さん。気になるようだったら一人で飲んでもらっていいですよ」
  と気を使って言った。

  早苗も驚いていたようだが、ふーっと息を吐いて、
 「せっかくなので一緒に飲みましょう」
  と、笑った。
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