流行りの異世界転生が出来ると思ったのにチートするにはポイントが高すぎる

はぎわら歓

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後編

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 二か月頑張って働いていそいそと銀月様のいる神社に向かう。夕焼けの空が朱色からだんだんと紫色になり暗い闇になっていく瞬間に賽銭箱が置いてある本殿の前に立ち柏手を打った。祈るときってなんで目をつむるんだろうと素朴な疑問を考えていると、閉じた瞼からでもわかる光を感じ、そっと目を開ける。

 「あ、こ、こんばんは」
  優美で尊大でクールな銀月様がふわりと宙に浮いた状態で目の前にたたずむ。三角の狐の耳がぴくぴく動き、ふさふさの大きくて長いきらめく尻尾が揺れる。これがシルバーフォックスってやつかなあ。
 「願いはなんだ」
 「え、と、いつもと――ほとんど同じなんですが、あの、ピロトークあるといいなあーって……。使うポイント増えてもいいので。ダメですか?」
 「構わぬ。ポイントもいつもと同じ1000だ」
 「あ、ありがとうございます!」
  今回でポイント交換も4回目だ。二ヶ月間頑張るとだいたい1000から1200ポイントたまっている。そしてストレスもたまっている。銀月様と会うことでストレスも吹き飛び頑張って毎日過ごせるのだ。

  さて、いつものように極上のエステを受けるようなコースが始まる。
 「あ、甘い香り……」
  湯煙で湯船が見えないが花の香りが漂ってくる。
 「今は金木犀の時期だな」
  お姫様抱っこされて湯船を覗くと小さなオレンジの花弁がたくさん浮いている。
 「はあーいい香りー」
  いつも違う香りの花風呂だ。最初は薔薇で、二回目は沈丁花、前回はクチナシと薫り高い季節の花を散らしてくれる。
 甘い花のする湯を爪先からゆっくりかけてくれ、だんだんと身体が温まると濃密なクリームのような泡で全身を包み込まれる。
 抱きかかえられ大きな手で身体をまんべんなく撫でられた後、泡で出来た雲が身体をふわりと浮かせる。
 「髪が伸びたな」
 「ええ、伸びましたね」
  私の変化に気づいてくれていることがとても嬉しい。相変わらずクールな眼差しで落ち着いた彼だけど少しは私の事好きになってくれているかなあ。身体中泡まみれのままの私の横に銀月様は寝そべり、髪の中に両手を差し入れる。優しく地肌を洗われながら口づけされると頭なのに気持ち良すぎて喘ぎながら身体をにじらせてしまう。
 「はふっ、ふぅううっ、んん」
 「動くと洗えないではないか」
 「あんっ、だ、だってぇっ」
  銀月様に愛撫されると胸とアソコだけが性感帯じゃないんだって知った。頭のてっぺんから足の先まで全部気持ちいい。まるで性感帯の開発をされているみたい。身体をくねらせていると銀月様は笑って尻尾で身体を撫でまわし始めた。ふさふさの尻尾が泡でもこもこになっている。
 「やっ、し、しっぽ、くすぐったっ、い、あん、き、きもち、いっ」
  まるで高級な車になったように、優しく、やっぱり最高級の手触りの毛皮で洗われる。器用な尻尾は手と同じように足の指の間をするするすり抜け膝を丸くこすり太腿を撫で上げる。
 「ふぅあっ、あふっ」
  指先から肩まで腕に巻き付くようにすべすべと尻尾で撫でまわし、腋の下をくるくる洗った。
 「あっ、きゃっ、く、くすぐったいっ、んん、や、だ、きもちよく、なっちゃ、う」
  それでも胸の周りを丸く撫でられしっぽの先で乳首をツンツンされると強い快感が身体を貫く。
 「んんんっ、あんんっ、あんっ」
 「ふふっ。乳首で往くがよい」
 「えっ? あんっ、ち、ちくびっ、でぇ?」
  まさか。どこかの官能小説とかエロファンタジーじゃあるまいし、乳首でイクなんてあり得ないよと思っていると、髪を洗い終えた銀月様の指先が両乳首に伸びてきてつまみあげる。
 「きゃっ、あっ、あっあっ、あっ、うっ、んんっ、う、あんっ、くぅうっ」
  両胸にとんでもない快感が走り、目の前が真っ白になって金銀の星がちかちか光る。
 「感度が良いな」
 「はぁっ、はぁっ、ありがと、う、ござります……」
  褒めてもらえてうれしい。だけど、乳首でイっちゃうなんて……。大丈夫なのかな。こんなに感じちゃって。泡の中に赤いサクランボが二つ浮いて見えるような気がしていた。
 横たわっていた彼は私の身体の上に覆いかぶさって頬を撫で口づけを与えてくれる。ああ、なんて綺麗なお顔……。よかった。顔は人間で。狐じゃキスできないよね。
 「あんっ、ふぅむぅんん」
  甘いキスと乳首の快感の余韻が気持ちをまた昂らせていく。
 「あ、は、はあ、もう、もう、ここで……」
 「寝床まで待てぬか」
 「ほ、欲しいです」
  薄衣を纏ったまま、銀月様は私の身体の下の方へ降りていく。敏感になっている乳首をそっとひと舐めして吸う。
 「あうっ、うっ」
 「ここが欲しいと申しておるのか」
  力の抜けた膝頭をグイッと持ち上げ、銀月様は一番敏感な小さな突起を舐めあげる。
 「ひっ、やっ、ああっ、あんっ、んん、す、すぐ、い、イっちゃ、うっ」
 「我慢する必要などないだろう」
 「あああっん、ああん、あんっ」
  何度か舐められ吸われただけでイってしまった。そして蜜源に長い舌を入れられ愛液をなめとる様に内部をかき回される。恥ずかしさと気持ちの良さで快感のボルテージがますます増していく。
 「あん、もう、もう、きてぇ」
 「今度は我慢できないとみえる」
  着衣に何ら乱れもない銀月様はそのまま脱がずに私の中に入ってくる。
 「あっ、あんっ、き、きもち、い、も、もっと奥まで、き、て」
 「焦るでない」
  ニヒルな笑みを見せながらゆっくり動く銀月様に私は腰をくねらせる。私は真っ裸で、彼は袴姿……。こんなシチュエーション現実じゃほんとあり得ないよ。
ゆるゆるとでも一番感じるところを的確に突いてくる銀月様にもう腰はとろけてしまいそうで、喘ぎ過ぎて声がかすれてしまう。
 「あ、んん、ぎん、げ、つ様、一緒に、いき、た、いっ」
 「一緒にか……」
 「お、ねがぁ、い」
 「――良かろう」
  身体を抱きかかえられ、向かい合って座る。見つめ合いながら腰を動かされ、下から突き上げられると熱いマグマが吹き出しそうになる。
 「ああっ、も、もう、あ、たしっ」
  夢中で銀月様にしがみつくと両頬を包み込まれ口づけをし、舌を絡められる。
 「あぅむぅ、あぅ、ん、うぅ、い、くぅ、うぅ、むぅふぅう」
 「――んっ」
  一瞬眉をしかめ、耐えるような表情をする銀月様にいつも以上に愛しさが増す。私、もう、彼以外愛せないかも。
ぐったりする私を労わる様に自分の身体に預けさせ、まだつながったまましばらく過ごす。
 身体はもちろん満足しているが心もすごく満たされている。ずるっと彼のモノが引き抜かれた。
 「うっ、ふうっ」
 「汗を流してやろう」
  呼吸が落ち着いた私の身体に温かい湯をかけられると、少しずつ甘い痺れと疲労が薄まっていく。後戯のように乳房を丸く撫で洗い、足の付け根も洗われ、思わず私は、「そ、そこは自分で」とさっとアソコに手を伸ばした。そこでふと気づく。
 「あれ?」
  もっとベタベタになっていると思ったのにサラサラしている。私のイメージでは銀月様の〇ー〇〇でぐちゃぐちゃになってどろどろになってると思ってた。
 「あ、あの。銀月様はイカなかったのですか?」
 「絶頂は迎えた」
 「えーっとそのぉ、ほんとに?」
  人間と人外では違うのだろうか?はっきり言い難いのでもじもじしていると銀月様は含み笑いをするような顔つきを見せ、「寝床へ参ろう」と私をさっとベッドに連れていった。

  柔らかい極上のベッドでゆったりと過ごす。
 優しく髪を撫でられ頬に口づけされ、指先を口に含まれる。うっとりと彼の姿とその彼の動作に見惚れていると銀月様はまた髪を撫で話し始める。
 「不思議に思うのも無理はない。お前が望む様に絶頂は迎えたが精をはき出してはおらぬ」
 「え? そんなことが出来るのですか?」
 「お前も絶頂を迎えたからといって何かが放たれるわけではないだろう」
 「ま、まあ確かにそうですが」
そういわれたら納得もするけど、でも、納得ちょっといかないなあ。
 「私が精を放つと孕んでしまうのだ」
 「は、孕む!」
 銀月様の子供を孕む!?
 「妖狐は繁殖力が強いのだ」
  彼と私の子供だと人外のクオーター?綺麗な子供だろうなあー。耳と尻尾どうなるんだろう?狐耳ってどうやって掃除する?綿棒?綺麗な宝石ような瞳はそのままなのだろうか。
 銀月様と愛し合って子供が産んで育てられたらどんなにいいんだろう。銀月様は私の事どう思ってくれているんだろう。私の気持ちは会えば会うほど募っている。彼と会うためだけに(らぶえっち的な意味でも)毎日善い事をして頑張ってポイントを貯めている。
 「あの、ポイントって恋愛成就にも使われたりします? 女子ならよく好きな人と両想いになりますようにってお願いしに来たりしませんか?」
 「ポイントはもちろんその願いに変換されるが、相手の気持ちを変えるわけではない。どんなにポイントを貯めてもまやかしの術のように人の心を変えることは出来ない」
 「そうなんだ……」
  恋が叶うということを要約すると、願いを叶えるためのポイントは、好きな人と偶然会えたり、話す機会が増えたりとか物理的な状況が増えるらしく、あとは高ポイントほど『徳』が高くなっているので愛され度も上がっているという。つまりポイントを貯めるということは本人の魅力が高まっていることなのだそうだ。
 「今のお前は私の元へ来る必要などないだろう。お前を愛する男は多いはずだ」
 「あ、はあ、まあ……」
  そう。ここ一年近くで人生初のモテ期がやってきている。合コンにも良く誘われて遊びではなくちゃんと付き合いたいと毎回言われる。嬉しくてふらっと『はい!』と返事をしそうになるがその都度銀月様の顔が頭をよぎる。浮気でも何でもないに。
 後ろから抱きかかえられ、ふさふさの尻尾で身体を撫でられ、銀月様と睦ごとのような会話を交わしていると、以前と違う願いが湧き上がってきた。
 『本当に銀月様に愛されたい』
  無理か……。気持ちは変えられないし、きっと変わらない。こうして会うのは4回目だけど彼に何も変化はない。はっ! まさか。最初にえっちしたから本命になれないとか!? まずったなあー! プラトニックで始めて気持ちが伴ってから身体の関係を持つんだった! いや。無理か……。こういう時に自然に湧いてくる気持ち、心をもらえないなら、何か形が欲しい。

 「銀月様……。この願いはどれくらいポイントが必要でしょうか」
 「どのような願いだ」
 「あなたの子供を産んで育てること……。異世界で」
じぃっと凝視し覗き込むように銀月様は私の顔を見る。
 「酔狂な願いだな」
 「本気です!」
 「まずポイントについて教えてやろう」
  ポイントとは『徳』を積んだ時につくものでそれが願望に交換できるが現実の願いにはそれほど多くのポイントは消費しないみたい。出世したいとかはっきり叶うというよりも、チャンスが与えられるということなので実際は本人の努力と行動によって叶っているみたい。
 私の最初の望みのように異世界に~ということを叶えるには相当のポイントが必要で、転生より転移の方がポイント消費が激しいらしい。
 普通の人は死ぬまでに貯まったポイントで天国とか地獄とか選んだりするみたい。昔の聖人がどっか行って、またその姿で奇跡を起こしたりするのもポイント交換によるものだけど、その高等クラスの人たちはポイントがも貯まりに貯まっているようだ。そりゃあ信仰の対象になるくらいの『徳』をもつとそうなるのだろうなあ。
 「で、どれくらいでしょう」
 「10万だ」
 「じゅっ! 10万……」
この前、NPC系異世界つまり私以外は設定済みの転生は1200だったけど、今度は希望が大きすぎるのか。1000を超えると上がりにくいポイントを10万だなんて。
 「それだけあればお前の願いは全て叶うだろう」
 「全て叶う……」
どれぐらいかかるんだろう。今、一年間で使わなかったら5000から6000くらい溜まってる。
 「20年くらい……」
  戸惑い考え込む私を銀月様は優しく見つめ、髪を撫で囁く。
 「難しく考えずともよい。もう休むがよかろう」
 「はい……」
  指先から催眠剤でも出ているのだろうか。ゆっくり優しく撫でられていると目の前がだんだんと白く濁っていき深い眠りについていた。


  また1000ポイント貯まっただろう二か月が過ぎ、銀月様に会いに行く。今日は一大決心を告げに行くのだ。
いつもより気合を入れた柏手を打つとぱっと周りが光り、銀色の月のように輝く銀月様が現れる。
 「いつもの願いか」
 「い、いえ……」
 「違うのか」
 「私、私、10万ポイント貯めます! それまで、ここにはきません!――来ると、ポイント使っちゃうだろうから……」
 「そうか」
 「あの、ずっとここに居てくれます?」
 「うむ。ここを動くことはないだろう」
 「よかったあー」
  ポイント貯めて彼がいないんじゃあ意味ないよね。ほっとしていると銀月様がスッと目の間に近づく。
 「あ、あの……」
 「ポイントの端数がある」
 「んっ」
  唇が重ねられ甘い蜜が流し込まれるように舌が絡められる。ああ、やっぱり頑張ってポイント貯める!もう彼しか愛せないもの。
うっとりと腰が砕けそうになる前に銀月様はそっと身を引き「待っておる」と耳元で囁き、消えた。
 「銀月様……」
  私、やり遂げます。待ってください。もう一度強く目を閉じ祈ってから神社を後にした。


――――――――


「ここでいいわ。ちょっと歩きたいの」
 「では、ここでお待ちしています」
 「帰っていいわよ。そこの角に確かバス停があったからバスで帰るわ」
 「ダメですよ。これから大事な期間に入るのに何かあったら困ります」
 「はいはい。じゃ30分くらいはふらふらさせてね」
 「30分ですよ!」
  やれやれと私は秘書を車に残し、懐かしい神社の前に立つ。
 「なんて懐かしい……」
  ここを通りがかったのは偶然だ。もう若くない私は懐かしさを胸に赤い鳥居をくぐり、本殿の前にやってきた。参るものは誰もおらず静かな境内は時間が止まったようだ。
 「まさか、もういないわよね」
  もう記憶ではぼんやりしている人外の銀月様の姿を思い浮かべるが、あれは若い頃の幻想だったのだろうと今では思っている。
でもこの神社に訪れてから自分の生き方が変わったのは確かだ。周囲の人間関係を大事にし、そのうちそれが良好になってくると私は福祉に目覚めた。福祉に従事しながら社会全体に目を向け、気が付くと政治家になっていた。今度また選挙がある。ここまであっという間に時間が過ぎ息つく暇もなかったように思う。恋愛することも結婚することもなかった。熱心にアプローチしてくれる人がいたのになぜだか心が動かされなかった。

  お札を一枚と45円を賽銭箱に投げ入れ柏手を打った。薄暗い神社にぱっと眩しい光が放たれる。
 「ぎゃっ! な、何かしら!?」
  驚いてきょろきょろすると目の前に銀月様が現れた。
 「ま、まさか……」
 「久しいな。ポイントの交換に参ったのか」
  以前の麗しい姿のまま銀月様は静かに佇み私の目を見つめる。
 「いえ……もう、おばさんになりましたし。若い頃のような願望は――もう、消えてしまいました」
  初めて彼と会い、身体を重ね愛されたいと願ってから30年経っている。私はすっかり年老いて肌はたるみ、かさつき、シワも深い。
 「銀月様は変わらないですね」
 「お前たちと時間の過ぎ方が違う故、変化がないように見えるのかもしれないな」
 「久しぶりにお目にかかってなんだか元気が出てきました。気持ちが若返った気がします」
 「もう何も願望はないのか」
 「願望――ですか……」
  何の恐れもなく反省することも後悔もしなかった頃を、瑞々しい若かった頃の自分を思い出す。あの頃は異世界へ転生し麗しい貴公子に溺愛されたいと単純にロマンチックなことを考えていた。そのあと銀月様に会い、心から愛され、叶わねば彼の子供が欲しいと願いここまできた。
 「もっと若ければあなたにまた愛されたいと願うのかもしれませんね」
  ふっと笑んで銀月様は「今のままで愛されたくないのか」と問いかける。私はほのかに湧き上がる温かい感情を優しく受け止めるが以前の劣情にはならなかった。
 「これではどうだ」
  銀月様は煙に巻かれる。もやもやした中を目を凝らしてみていると年老いた彼が現れた。
 「え、ぎ、銀月様! その姿は……」
 「うむ。私の時間を進めたのだ」
  若く麗しい青年の姿から渋いロマンスグレーの中年になっている。
 「と、歳をとられても、か、かっこいいんですね」
  こんなカッコイイ男の人初めて見たと思った。きっと若い時に初めて彼に会った時もそう思ったはず。
 「今のお前と釣り合うだろう」
 「私のために……」
 「時を進めると私にも乏しい感情が少しだけ深まった。今になってやっと気づく。お前を好いておる」
 「えっ!」
  何を言われたのか全く分からなかった。『オマエヲスイテオル』この言葉を何度も頭で変換してやっと彼が私を好きだと言ってくれていることに気づく。
 嬉しさのあまり血圧が高くなってこのまま倒れてしまいそうだ。若い頃なら鼻血を出しているはず。
 「あ、あの」
 「お前の願いを叶えるために私は待っていた。ポイントは十分ある全ての願いが叶うだろう」
 「す、全て……」
  年老いて深い感情を見せる銀月様がじっと私を見つめる。私、愛されてるの?
 「何でも言うがよい。何の特技も持たずに生まれてそれだけの高ポイントを貯めるのは歴史上でも10人はいないだろう」
どうやら普通の人は寿命までになんとか8万ポイント貯めて、天国と呼ばれる異世界に旅立つそうだ。
 「私の願い……」
  蘇る若かりし頃の願い。銀月様の子供を産んで育てたい。らぶえっちの証を残したい。
 「でも、私がいなくなると……」
 「案ずるな。お前が行った功績は残り、お前の代わりがちゃんといる。もう今の世界が良いのならばこの世での願望をかなえてやろう」
 「いいえ、いいえ。私はあなたに愛されたいと、愛されることが無理なら何か残るものが欲しかった。願いは若い頃と同じです」
  やっぱり気持ちは変わらない。環境の変化と時間で想いが薄れてはいたけれど。
 「では叶えよう」
  目の前がぱっと白く眩しい光に覆われ私はぎゅっと目を閉じた。


――――――――



 若い頃に住んでいたアパートのベッドのうえで目が覚めた。
 「あれ? めっちゃ長い夢おち?」
  うーんと背伸びをして時計を見ると7時半だった。
 「あ、やばっ! 遅刻しちゃうよ」
  長い長い夢を見ていた気がする。
 「自分が年取るとあんなふうなんだなあー」
  朧げな夢を思い出しながらパンをかじり、支度を急ぐ。出掛ける寸前にはもう夢の内容は忘れていた。
 「さて、いこう」
  がちゃりとドアを開けると目の前に夢だったはずの銀月様が麗しい袴姿で優雅に尻尾を揺らしながら宙に浮いている。
 「ぎ、銀月様……」
  ぽかんとしている私に銀月様は手を差し伸べる。
 「迎えに参った」
  まだ夢見てるのかな? 言われるままに差し出された手を取ると銀月様は私の身体をふわりと抱き上げ口づけを与える。
 甘い感触にこれは現実だとやっとわかった。
 「こ、これは一体?」
  どこからどこまでが現実だったのだろうか?
 「お前のポイントをすべて使った。これから一緒に年老いてゆこう。――異世界で」
 「――! どこでも、異世界でも、天国でも、地獄でも、どこでもいです! 銀月様と一緒にいられるなら!」
  嬉しさのあまり身体が震え、涙が溢れてくる。その涙を銀月様は優しく指先で拭い、そっと囁きかける。
 「まずは、らぶえっちからだったな」
 「!!!」
  私はもう、悶死寸前です。



  終
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