元研究員の成果報告書

永島卯

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あの一件以降、理人は俺に近づかなくなった。たまに視線を感じるが…それだけだ。あんなに嫌というほど突っかかってきていたのに、なんとも呆気ない。
といっても正直、理人の気持ちはわかる。あんな大人ぶってたのに、男のケツをちんこに押し付けられただけで射精しただなんて、情けなさ過ぎるよな。
俺自身も、ああいう気難しい子供にはやっぱエロをぶつけると効果があるんだなぁといらない知見を得れた。そして俺の研究ライフが平穏を取り戻した…と言うことはなくさらなる面倒ごとが降りかかってきた。
そう、理人が近づかなくなったかと思ったら、次は違うガキが俺に突っかかってくるようになった。

「くらえカンチョー!」 
「ッぐ!?」

背後から聞こえてくる声と共にケツの穴に強い衝撃を受け体が倒れる。俺は痛みを紛らわすためケツを片手で抑え、カンチョーの犯人を睨みつけた。
……またやったな、このクソガキ。

「彰ッ…テメェ…」
「こんなんでぶっ倒れるとか沢口ダセー!」

ゲラゲラと俺を嘲笑うこの子供は彰と言う。この子供はとにかくエロガキで同じ孤児院の女子たちにスカートめくりやカンチョーをしていた。俺はアホなことしているなと傍観していたが、気がつけば何故か俺がこいつのターゲットになっていた。今回のカンチョー然り、金玉蹴りやくすぐり、電気あんまと、とにかく下に関するイタズラを仕掛けてくる。なんで俺なんだよ………真辺さんにやろうとしないだけましだけどさ。
自分の愛しいケツを撫でて癒している俺の背後に彰が迫り来る。まずい、これ以上このガキの好きにさせるわけにはいかない。起き上がろうとするが彰に押さえつけられて立つことができない。子供のくせになんて馬鹿力を持ってんだよ。
動けない俺を良いことに彰は服の中へと手を差し込んだ。やばいこれは、くすぐりだ。

「彰くん!いい加減にしなさい!」

その瞬間、俺は天使を見た。
なんと愛しの真辺さんが俺を助けに駆けつけてくれたのだ。彼女に後光が差しているようにみえた。
「ちぇー」と言って退散していく彰に安堵する。
本当にあの子供は苦手だ。俺は揶揄うのは好きだが揶揄われるのは嫌いなんだ。あとあのセクハラ紛いのイタズラが研究所でされたセクハラを思い出して、不快な気持ちになる。俺はなにぶん顔とスタイルが良いもんで、男女問わず惹き寄せてしまう。それは変態も同じだ。研究所のおいぼれジジイにケツを撫でられた時は、ガチで殺そうかと思ったぐらいだ。今頃くたばっていないかな。



***



「おーい、みんな集まったか?」

今日はなんと1日、人体実験だ。
俺は研究所に子供達を集合させ、点呼を取る。1、2、3と元気の良い声を聞きながら、実験内容を復習することにした。
まず初めに感染病の抗体と思われるワクチンを子どもたちの体に点滴注射で血管に流し込む。そこから1時間様子を見て、またワクチンを流し込む。それを繰り返すだけ。
抗体の中身は知らない、どうやってどんな変化で効果が出ているのかというのも分からない。俺はただ見ているだけで良いらしい。
それってわざわざ俺が実験に参加する意味なくない?と思ったが、面倒な仕事もしたくないので黙っておく。

実験室にいる子供達を別室のガラス越しから眺める。
子供達はそれぞれ手術台の上に寝そべり、研究員が子供の頭や腕などに電極パッドを貼っていく。次に点滴注射を子供の腕に打ち込んだ。
俺の視線は自然と注射の方に向く。そして、俺はチューブに流れているワクチンの色を見て、思わず顔を顰めた。
うわっ緑の蛍光色……やっぱ何度見ても気持ち悪いな。あんな色だとワクチンと言われても絶対体に入れたくない。
1人で呑気に様子を眺めていたが、周りの研究員たちは忙しなく、子供達の脳波などを観測して仕事に取り組んでいた。俺だけその場に取り残されて、ただただ時間を持て余せていた。
暇だ、眠い………寝るか?
眠気に襲われた俺は目の前にあった椅子に腰掛ける。
周りも忙しくて俺のことなど気にも留めないだろう、ちょっとくらい寝てもいいか。そんな軽はずみな考えと共に、子供達を見ているふりして俺は眠りに落ちていった。



……
………
「沢口さん、終わりましたよ」
「…っあ?」

体を揺すられ、俺の意識は浮上する。
横を見るとさっきまで真剣に脳波を見ていた研究員が俺の肩に手を置いていた。

「え、終わるの早くない?」
「沢口さんがずっとぐうすか寝てただけですよ、ほらもう8時間経っています」

研究員がつけていた腕時計を見せられ、本当に実験が始まって8時間経っていた事実を知る。
や、やらかしたーー!俺は口元から垂れていた涎を袖口で拭い、慌ててその場に立つ。

「すみませんでした!」
「別に寝てたことは良いですよ、沢口さんの仕事なかったですもんね。やることがないと眠くなるのは仕方がない」
「うっ………はい」

本当になんで俺にだけ仕事がないのだろう。仕事がないのは楽で良いが、自分自身が本当に研究員かと疑ってしまう。これでは本当に子供のお守り係みたいじゃないか。
落ち込んでいる俺に、研究員はかなりの量の紙を手渡した。

「子供達の実験結果です。沢口さんは明日までにこの結果をまとめてください」 
「…承知しました」

淡々と説明をする研究員に渡された紙を見てみると、子供の普段の行動、成績、実験結果のまとめ方の指示書と何十枚もの実験結果の書類。
え、待って?急にこんな仕事を投げてくることある?実験自体は何回か既にしていたじゃん。俺に研究員の仕事がない理由ってこれ!?

………この仕事明日までとか無理じゃね?

ふざけてんのかと目の前の研究員の胸ぐらに掴み掛かりたかったが、俺がサボって寝ていたことを上にチクられるのはまずい。
仕方がないと俺は早々に諦めて1人で資料をまとめることにした。


研究所の自室にて、もうとっくに勤務時間の過ぎた深夜に俺は資料作りに育んでいた。今は子供たちの定期テスト結果と実験結果をまとめているところだ。テストの中身はIQを測るのに使われそうな内容で、結果の中には順位も記載されている。

元:成績56点実験結果B-、七美:成績72点実験結果D+…。俺はカタカタとノートパソコンに結果を打ち込んでいく。
…この実験結果の評価は何を基準に決めているんだろうか。ワクチンが体に適合しているかの評価?それとも他のこと?頭の中でそんなことを考えながら作業を進めていると、俺はとある人物の資料で手を止めた。

「………理人」

孤児院の子供の中で今のところ1番印象に残っている子供。理人は最年長ということもあってか成績92点の順位1位で、実験結果もAと良い評価だった。

「ふーん、伊達に難しい本を読んでいるだけあるのか」

そうだ、ついでに理人の普段の行動もまとめるか…。俺は理人へのなんとなくの好奇心で、真辺さんや他の先生たちが書いた子供達の様子メモを見てみる。

・物静かでいつも本を読んでいる
・1人になりたいのか部屋から出ない
 →最近は木陰にいる?
・研究員の沢口さんに懐いている?

「なーにが俺に懐いてるだ、本当に子供を見ているのか?」

どう考えても理人は俺のこと嫌いだろ。じゃないと突っかかってこないし、今みたいに遠巻きにしないはずだ。
何故か無性にムカムカする胸を誤魔化すように、俺はタバコに手をつけた。

とりあえず普段の行動は最後のメモ以外を書いておこう。………よし、次だ。

「ってうわ、次は彰かよ」

絶賛俺に頭を抱えさせている人物、彰の名前を見た俺はすぐさまタバコの煙を吸った。
危ない危ない、今イライラすると仕事が終わらなくなってしまう。
フィルターを噛みながらもう一度タバコを吸って、キーボードに手を置いた。そして資料に目を通す。

彰:成績80点、実験結果A+。

「え、こいつ結構成績良いの?」

あの馬鹿そうな性格と高い成績のギャップで、唖然として思わず手に持っていたタバコを落とした。
……やばっ!
俺は焦ってすぐにタバコを拾い上げる。資料の上にタバコを落としてしまったが、紙は焼けずに灰だけが乗っていた。俺は火がつかなくてよかった~と思いながら灰を払い落とした。

「何やってんだろ俺」

タバコの火を消すとともに、こんな状況になっている自分自身が馬鹿らしく感じた。一々、他人の成績を気にしている俺はなんとも俺らしくない。

「………真面目に仕事しよ」

ごちゃごちゃと物事を考えたくなかった。
だから俺は眠気を噛み締めながら、無心になって資料をまとめていくことにした。

………
……


「な、なんとか終わった…」

やはりというか、資料作りにはかなりの時間がかかった。5時間以上は没頭していたのではないだろうか。ぐっと背伸びをして設置された時計を見る。
時刻は午前4時半過ぎ。外の見える窓があれば、きっと鳥がチュンチュン囀っているであろう時刻だ。
とりあえず眠い、眠すぎる。今から寝れば2時間は寝れる。少しでも寝なくては。
椅子から立ち上がってそのままベッドに飛び込む。柔らかく肌触りの良い布団が俺を優しく迎え入れてくれた。
そうなればどうなるかなんて簡単に予想できるだろう。そう俺は10秒も経たずに気絶するように深い眠りへと落ちていった。



***



「頭いてぇ…」

俺は寝坊することもなくしっかりと職場に着いて、先生の監視も子供のお守りもすることなく空き部屋でサボっていた。資料は朝イチで俺に命令してきた研究員に押し付けてきたのでそこも問題ない。
とにかく頭がガンガンして気持ち悪い。この痛みは絶対寝ないと治らないやつだ。

「どうせ誰もこないし…ちょっとだけ寝るか…」

携帯端末で1時間のタイマーをつけて、ベッドで横になる。するといとも容易く俺の体は眠っていった。



さらさらと誰かが俺の髪の毛を触る。
何かを確かめるように優しく俺の頭を撫でるその手はとても小さく感じた。いつもなら撫でる手を掴んで辞めさせるのだが、それよりも寝たいという気持ちが強く俺はされるがままになっている。
何度も何度も優しく撫でられるのは気持ちが良い。一定のリズムで触られて不思議と安心した。
俺はその心地良さを子守唄代わりにしてゆっくりとまた眠りに落ちた。




「…ぁ…れ…ぃらな…」

誰かの声と共に意識が一気に浮上する。
先ほどまでの心地よさはどこかに消え、寒気と謎の揺れが俺に襲いかかった。

不快。

その一言に尽きる状況にすぐさま俺は瞼を開く。
そして、目の前の光景に声を失った。

何故か俺の下半身は丸出しで、両足を彰に持ち上げられていた。着ていたシャツも半端にはだけさせられ、どこぞのAVの途中か?みたいな格好だ。

「は?」

あまりのことに頭が追いつかない。少しの睡眠では治らなかった頭の痛みも相まって、今の事態を理解できなかった。ただ肛門に違和感があることに気づいた俺は頭で考えるより先に、足元にいた彰を蹴飛ばしていた。

「うぐっ」

呻き声を上げてベッドから床に倒れ込む彰を見て事態をやっと飲み込む。彰の下半身には勃起ちんこがそそり立っていた。
まさか…こいつ、こいつ!やりやがった!!
俺はちんこをなすりつけられたであろう肛門に触れる。ねちょという粘着音と共に粘り気のある何かが手についた瞬間、倒れている彰の腹を踏みつけた。

「おぇッ」

彰が嘔吐いたが無視だ。こいつはクソガキがやるイタズラの範疇を越えた、絶対に許さない。俺はこの怒りをぶつけるように、踏みつけていた彰を何回も蹴り上げる。その度に彰の口から「ぐっ…うっ…ッ…」と小さな悲鳴が聞こえた。

「がはっ」

最後に1番強く彰を蹴り付ける。すると彰は蹴られた腹を必死に抑え、怯えたような顔でこちらを見た。
何でお前が被害者ヅラしてんだよ、泣きたいのは俺の方だよ。
睡眠不足・ニコチン不足の状態で、今だに気持ち悪い感触のするケツが俺のイライラを加速させた。
こいつ今殺しても問題ないだろ、こんな性犯罪者なんて将来終わってんだから。
頭の中で彰への殺意を募らせていたが、つい今日の朝までまとめていた資料を唐突に思い出した。
彰は『成績80点、実験結果A+』という結果を残している。…そんな最高の実験体を俺個人の恨みで殺したりなんかしたら、俺の方が消されてしまうのではないか。いやまず根本的に殺しは犯罪か。

俺は何度か呼吸を繰り返し、自分自身の感情を抑えた。
俺の気分は全く晴れていない。でもこいつに制裁を加えても、俺の立場の方がヤバくなる。
………ならばそうだ、この状況を利用すればいいんだ。

「お前さ、結果も残してないのにご褒美がもらえると思ってんの?」
「え?」 

俺の唐突な変わりように、彰はポカンと口を開ける。その間抜けヅラを見て、俺は少し溜飲が下がった。

「研究員の俺を喜ばせる結果を残せたらやってやるよ」
「や、やるって何を…?」
「見たんだろ、理人と俺のやりとり」

こいつが変な行動を取り出したのは俺と理人が疑似セックスをした時からだ。多分見てたんだろうな、その場面を。だからこのエロガキは勘違いしたんだ。この俺とセックスできるって。
ならそれを利用させてもらうしかないな。

彰の顔を跨ぐように立ち、俺は自分の肛門を片手で割り開いて、彰がつけたであろうカウパーをケツの中に塗り込む。
………どうだ?下から眺めているお前にとっては絶景だろ。お前が入れたくてたまらないところにお前の体液が入ってんだからな。
ごくりと唾を飲んだ彰を見下ろしながら、俺は足で彰の股間を踏みつけた。

「ッ」
「お前がこの研究で一番の成功者になったら、あの時の本番をしてやるよ」

グリグリと彰のちんこを踏みつけていると、さらに大きくなった気がした。靴下越しとはいえ気持ち悪いので、早々に足を離す。この靴下最近履いたばかりだったけど捨てなきゃな…。
彰が放心状態で動かないことを良いことに、俺は乱れた服を整えて、逃げるように入り口の扉に手をかけた。
最近似たようなことをやったな……デジャヴか。なんて能天気なことを考えながら彰の方に振り返り、理人の時とは違う意地の悪い笑顔を向ける。

「じゃあ俺のために頑張ってね、彰くん」

そして、俺は彰が立ち上がるより早く扉を閉めてその場から逃げた。

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