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15話
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門番二人がおっさんに気づくと、目を丸くして急に姿勢をただす。
「シルバさま!? どうしてこちらに!?」
「シルバ?」
(おっさんのことか……)
「うむ、今日はこやつをここに連れてくるようにメラから言われていてな。そんなことより、こやつを中へ入れてやってくれんか?」
「メラさまに!? それは、気づかず失礼いたしました。どうかご無礼をお許しください。すぐに門を開けさせます」
門番二人があわただしく門をあけ、おっさんは髭を擦りながら「うむ」と答えている。
変なおっさんとしか思っていなかったが、やはりこのおっさんは凄いらしい。
「じゃあ、メラさんのとこいこうぜ」
「いや、ワシはここまでじゃ」
「は? なんで!?」
「なんでって、修行するのはお主じゃろ?」
門番が俺とおっさんの会話を聴いて眉をひそめていた。無礼なやつだ、と言っているのが聞こえるが気にしない。
「そ、それはそうだけど、じゃあおっさんはこれからなにするんだ?」と素朴な疑問をぶつけてみる。
「そんなことお前さんには関係ないじゃろ。ほれ、さっさといけ」
「急に冷たいな、わかったよ」
あしらわれるようにそう言われた俺は決心をして、門をくぐり建物内にはいる。
「遅い!! なにをしていた!」
中に入ると案の定メラさんの怒りのボルテージが上がっている。怒られたい、とおもうほど今日も刺激的な格好をしている。
「ごめんなさい。ちょっと色々ありまして」
「まぁ、いい。次は燃やすからな」といって、メラさんは思いの外すぐに許してくれたようだった。
「は…… はい」
(燃やされるのを承諾する日がくるとは…… )
「よし、これから貴様のクラスに案内する。ついてこい」
そういわれ、メラさんの後を歩く。
「クラス…… ですか?」
「そうだ。貴様は今日からこの学校で他の生徒同様に訓練を受けてもらう。何か不服か?」
「いや、不服じゃないんですけど、僕まだなにも魔法が使えないんですが」
「ごちゃごちゃうるさいやつだ。いいからこい」
メラさんにつれられ赤いカーペットの敷かれた長い廊下を歩き、いくつかの部屋を通りすぎたあと「ここだ」と足を止める。
「は、はい…… 」
こんな緊張は久々だと考えていると、メラさんが扉を開ける。
「席につけ。貴様らとこれから訓練を受けていくことになった、編入生を紹介する」
ざわざわとしていた教室が静まり、視線が俺に集まった。人数はさほど多くない。だが、この静けさはまるであの日の学校のようだ、と矢鍋に絡まれ教室を飛び出した記憶が浮かぶ。
「は、はじめまして。今日から訓練に参加することになりました、桐島鳳理です。よろしくお願いします」
頭を下げると、「おい!お前外界人だろ? 多少魔力があるようだが、俺にはわかるぜ」
丸太のように太い腕に分厚い胸板、そしてふてぶてしくも男らしい顔つきの男が不服そうにそういった。
「そ、そうだけど…… 」
「俺は外界人が嫌いなんだ。殺されないうちに、消えろ」
「殺されないうちにって…… 外界人は他にいないのか?」
「は? いるわけねぇだろ……」
声をあげていた男の顔つきがかわる。それだけじゃない、クラス全体が重い空気になったのがわかった。
この世界で、外界人が嫌われた存在であることはなんとなくわかっていた俺は、弱々しく思われないために、あえて強気に反応する。
「外界人がいたっていいだろ? なんでそんな事言うんだよ?」
「なに?…… お前それ本気で言っているのか?」
「ゼファルド、やめろ」
メラさんが注意をした。もちろん手には炎がまとっている。
チッと舌打ちをして、静まるが、獣のように鋭い眼光をむけている。
「お前は、あそこにいるマリルの隣にすわれ。ちょうど席もあいている」
メラさんは、最前列の左端を見ていた。毛先の丸まった栗色の髪、頭には星マークの帽子をかぶった女の子が手をふっている。
「は、はい」
指示通り、席につくとマリルは笑顔で歓迎してくれた。近くで見ると、目鼻立ちをハッキリとさせ、小さい顔をしている。まるでお人形さんみたいだ。
「新人君よろしくね」
久々に人の笑顔を見た気がした。緊迫した日常が続いていたせいか、その笑顔が今の俺には凄く嬉しい。
「よ、よろしく。マ、マリルさん」
「マリルでいいのだよ、新人君。気を楽にしたまえ、君が思うよりもここは厳しいとこだよ」
「厳しいんですね、なおさら気を抜けないです」
あはは、とマリルは笑う。
トリケラトプスによく似た恐竜のぬいぐるみをフワフワと浮かせ、俺の顔を角でつついている。
「それと、君と私はクラスメイトだ! 敬語はやめたまえ」
「よろしくマリル。話せてちょっと気が楽になったよ。ありがとう。それより、さっきから角…… 刺さってるよ」
なんとか笑顔をつくりそう言うと、「トキシーも君を歓迎しているのだよ」とトキシーと名付けられたぬいぐるみを今度は俺の目の前で浮かせている。
「あ、ありがとう。トキシー」
マリルの第一印象は優しく、笑顔の可愛い子だ。そして…… かなり変わった子だ。
「シルバさま!? どうしてこちらに!?」
「シルバ?」
(おっさんのことか……)
「うむ、今日はこやつをここに連れてくるようにメラから言われていてな。そんなことより、こやつを中へ入れてやってくれんか?」
「メラさまに!? それは、気づかず失礼いたしました。どうかご無礼をお許しください。すぐに門を開けさせます」
門番二人があわただしく門をあけ、おっさんは髭を擦りながら「うむ」と答えている。
変なおっさんとしか思っていなかったが、やはりこのおっさんは凄いらしい。
「じゃあ、メラさんのとこいこうぜ」
「いや、ワシはここまでじゃ」
「は? なんで!?」
「なんでって、修行するのはお主じゃろ?」
門番が俺とおっさんの会話を聴いて眉をひそめていた。無礼なやつだ、と言っているのが聞こえるが気にしない。
「そ、それはそうだけど、じゃあおっさんはこれからなにするんだ?」と素朴な疑問をぶつけてみる。
「そんなことお前さんには関係ないじゃろ。ほれ、さっさといけ」
「急に冷たいな、わかったよ」
あしらわれるようにそう言われた俺は決心をして、門をくぐり建物内にはいる。
「遅い!! なにをしていた!」
中に入ると案の定メラさんの怒りのボルテージが上がっている。怒られたい、とおもうほど今日も刺激的な格好をしている。
「ごめんなさい。ちょっと色々ありまして」
「まぁ、いい。次は燃やすからな」といって、メラさんは思いの外すぐに許してくれたようだった。
「は…… はい」
(燃やされるのを承諾する日がくるとは…… )
「よし、これから貴様のクラスに案内する。ついてこい」
そういわれ、メラさんの後を歩く。
「クラス…… ですか?」
「そうだ。貴様は今日からこの学校で他の生徒同様に訓練を受けてもらう。何か不服か?」
「いや、不服じゃないんですけど、僕まだなにも魔法が使えないんですが」
「ごちゃごちゃうるさいやつだ。いいからこい」
メラさんにつれられ赤いカーペットの敷かれた長い廊下を歩き、いくつかの部屋を通りすぎたあと「ここだ」と足を止める。
「は、はい…… 」
こんな緊張は久々だと考えていると、メラさんが扉を開ける。
「席につけ。貴様らとこれから訓練を受けていくことになった、編入生を紹介する」
ざわざわとしていた教室が静まり、視線が俺に集まった。人数はさほど多くない。だが、この静けさはまるであの日の学校のようだ、と矢鍋に絡まれ教室を飛び出した記憶が浮かぶ。
「は、はじめまして。今日から訓練に参加することになりました、桐島鳳理です。よろしくお願いします」
頭を下げると、「おい!お前外界人だろ? 多少魔力があるようだが、俺にはわかるぜ」
丸太のように太い腕に分厚い胸板、そしてふてぶてしくも男らしい顔つきの男が不服そうにそういった。
「そ、そうだけど…… 」
「俺は外界人が嫌いなんだ。殺されないうちに、消えろ」
「殺されないうちにって…… 外界人は他にいないのか?」
「は? いるわけねぇだろ……」
声をあげていた男の顔つきがかわる。それだけじゃない、クラス全体が重い空気になったのがわかった。
この世界で、外界人が嫌われた存在であることはなんとなくわかっていた俺は、弱々しく思われないために、あえて強気に反応する。
「外界人がいたっていいだろ? なんでそんな事言うんだよ?」
「なに?…… お前それ本気で言っているのか?」
「ゼファルド、やめろ」
メラさんが注意をした。もちろん手には炎がまとっている。
チッと舌打ちをして、静まるが、獣のように鋭い眼光をむけている。
「お前は、あそこにいるマリルの隣にすわれ。ちょうど席もあいている」
メラさんは、最前列の左端を見ていた。毛先の丸まった栗色の髪、頭には星マークの帽子をかぶった女の子が手をふっている。
「は、はい」
指示通り、席につくとマリルは笑顔で歓迎してくれた。近くで見ると、目鼻立ちをハッキリとさせ、小さい顔をしている。まるでお人形さんみたいだ。
「新人君よろしくね」
久々に人の笑顔を見た気がした。緊迫した日常が続いていたせいか、その笑顔が今の俺には凄く嬉しい。
「よ、よろしく。マ、マリルさん」
「マリルでいいのだよ、新人君。気を楽にしたまえ、君が思うよりもここは厳しいとこだよ」
「厳しいんですね、なおさら気を抜けないです」
あはは、とマリルは笑う。
トリケラトプスによく似た恐竜のぬいぐるみをフワフワと浮かせ、俺の顔を角でつついている。
「それと、君と私はクラスメイトだ! 敬語はやめたまえ」
「よろしくマリル。話せてちょっと気が楽になったよ。ありがとう。それより、さっきから角…… 刺さってるよ」
なんとか笑顔をつくりそう言うと、「トキシーも君を歓迎しているのだよ」とトキシーと名付けられたぬいぐるみを今度は俺の目の前で浮かせている。
「あ、ありがとう。トキシー」
マリルの第一印象は優しく、笑顔の可愛い子だ。そして…… かなり変わった子だ。
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