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ホーリー大穴 一層
新しい仲間
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5歳のお使いと言うのは、山にある炭焼き小屋に行って冬用の炭を取りに行くことだ。家の手伝いができるようになって、始めて、村長の家で、読み書きを教えてもらえる。おれは、あの、ハリケーンドラゴンを倒す旅の1カ月間で、無理やりだが、何種類かの言語と、エルフ、ドワーフ、人の世界の読み書きを魔法で詰め込まれた。精神感応とか言っていたかな、その時、旅の仲間の過去も少し流れてきた。みんないいやつばかりだった。
今年、村で5歳になるのはおれだけ。おれの村はそうだが、隣村に女の子がいるそうだ。炭焼き小屋は、その村との唯一の接点。この巨大な縦穴周辺に人族の村があるので、実際は、子供でも、他の村に行けるようになっている。隣村に行けるようになるのは、7歳から。とにかく、会ったことが無い隣村の子に会いたいと村長に言うと、向こうと日にちを合わせてくれた。
じいちゃんが行けって言うから、村長に会いに行くと、じいちゃんと変わらないぐらい色々教えてくれた。
「炭焼き小屋で、昼飯を食うのじゃ。向こうもそうする。その子と友達になれ」
「女の子だろ、いいのか」
「ませたことを言いおって、同じ人族じゃぞ。仲良くせんでどうする」
「分かった。母さんに、旨いもの作ってもらう。おかず交換したい」
「オビトよ、元気に育ったな」
「それよりじいちゃんに聞いたんだ。エルフに会ったら、魔法を教えてくれるって。それができるようになったら、大穴の一層に行っていいか。うちは、じいちゃんがぎっくり腰で、行ける者んが、いないんだ」
「ばかたれ、道を外れたら、お使いにならんだろうが。そうじゃのう、炭焼き小屋の裏山に上がってみい。あるいは、そこからお前を心配してエルフ様が見守っているかもしれん。じゃが、おらんかったら諦めろ」
「村長、ありがとう」
おれは、大喜びで村長の家を飛び出した。その後、家の奥から、村長の孫が、心配そうな顔をして出てきて、おれを見送った。
「あんな約束してよかったのか」
「毒消しの魔法は、覚えて、損はないじゃろ」
「そうだが、もう一つの方は、無理だぞ。しばらくの間は、うちで、魔石収入を肩代わりしてやろう」
「それじゃあオビトは、納得せんじゃろ」
「子供に、何、遠慮する」
「逆じゃ、期待しとるのよ。お前は、あの子の魔力を感じられんからわからんじゃろうが、綺麗な魔力じゃぞ」
「そんなもんなのか。じじいの好きにするといい。成功するといいな。オレに可愛い弟子ができる」
「すぐに抜かれるなよ」
「なんだよ、それ」
おれは隣村の女の子と友達になりたいから、旨い弁当を作ってくれと、母さんに頼んだ。
5歳のお使いの日が来た。
朝早く炭の背負子を背負って出かける。弁当のおかずは、倍入れてもらった。村長の家に挨拶に行くと、孫のカイも出てきて、頑張れと励まされた。どうやら、村長から、エルフの話を聞いたようだった。
「カイのあんちゃん!」
「オビト、おまえ、女の子を裏山に行こうと誘うなよ」
「誘う、仲間外れは、かわいそうだ」
「オレが、伝言役なんだがなー。絶対魔法を覚えろよ」
「覚えてあんちゃんと一緒に、第一層に行く」
「そん時は、オレの事を師匠と呼べ」
「いやだ。仲間にする。その時は、カイって呼びたい」
「仕方ない、行け」
「ほっ、ほっ、ほっ。カイは、オビトに甘いのう」
「あいつ、ウサギをどうやってか、素手で捕まえただろ。その時から、一目置いているんだ」
村長とカイは、オビトを見えなくなるまで見送った。
炭焼き小屋は、山を一つ越える。つまり、村が見えなくなる。子供だと、ここで不安になるだろう。これが、5歳のお使いの気もだ。
おれは、その反対。
「視覚強化、聴覚強化、嗅覚強化。まだいけるか。鋭気功、硬気功、剛気功。鷹の目、ウサギの耳、犬の鼻」
「おう、サーチ範囲が広がった。おやっ、イノシシに追われている二本足のトカゲ発見。おれぐらいの身長しかないけど、恐竜か?こっちに向かってくる」
・・・、まずいな、こっちに向かってくる。ドラゴンとは結構殺し合ったけど、恐竜には助けてもらってバッカだったんだよな
小さな恐竜は、カーム、カームと泣いている。あれは、助けてだ。原始種族だと思う。人間の原始種族がチンパンジーの様に、恐竜にも、そう言う種族がいるのだ。三畳紀の恐竜は、大きくてもキリン、重くてもカバとか像ぐらいしかなかった。あの小さなのは、とても軽そうで細長いタイプ。大きくなっても50~70キロぐらいしかない。飛べない鳥タイプの恐竜だ。
…………、……・・ドドドドドドドド
「イー、イーノ。カーム、イギア、ホギャーーー」
「なんだって!イノシシに追われているって!。こいつ、原始種族じゃない。知恵持ちか!」
炭を縛る綱を恐竜が通る通り道の木に結んで、もう片方を緩く木に巻き付けた。
来たっ!
カームカーム、キーー、カームカームカームカーム
あれはディノニクスか。よし通り過ぎた。綱を思いっきり強く張った。だけど、5歳の力じゃたかが知れている。
「能力向上、筋力強靭、プロテクト」
これでだめなら手を放そう。
ブヒヒーーーン
イノシシは、綱にけつまずいて、見事転がった。驚いたイノシシは、当たりをきょろきょろ見ている。
「『声拡声』!ウワーーーーーー」
動物は、大きな音に敏感に反応する。驚いたイノシシは、来た道を突進して逃げた。
「ふぃー、大丈夫か?」
きゅい、きゅい
「親から離れたのか?気をつけて帰れよ」
クンクン
「犬か、お前」
この恐竜の子供は、炭の背負子を珍しそうに突いている。
カーク、カーク
「ついてくるな。お前!、分かった。おれの弁当狙いだろ。やらないからな」
きゅうん
小枝を振り回して追い返そうとしたが、おれの弁当を諦めきれないらしい。遠目についてくる。隣村の女の子に、どう説明したものかと、小枝を振りながら炭焼き小屋に到着した。
女の子は、もう、炭焼き小屋に着いていて、おれを待っていた。
「ミの村のサイカよ。あなたは?」
「ヒの村のオビトだ」
「あれは?」
カーク
「知らん」
カーク、カーク、カーク
「カークだってよ」
フン!
カークが胸を張った。
「お友達?」
「違う。おれの弁当を狙ってんだ」
「うらやましいなー。私、みんなと年が離れているの」
「さっきの話、聞いてたか?。カークとは、さっき会ったばっかりだ。うらやましいんなら、今、友達になればいいだろ」
「どうやって?」
「あいつ、腹減ってんだ。弁当を半分やれば喜ぶだろ。今日、おれの母さんは、おかずを倍入れてくれた。一緒に食べよ」
「私もいっぱい持ってきたよ。じゃあ、カークもこっちに来て」
カーーー
カークが、ひょこひょこやって来た。サイカが、半分弁当をカークにやるので、おれもそうした。弁当の蓋に半分飯を入れて半分の半分を二人で分けて食べた。おれは、今日、二人も一度に友達ができた。
「カーク、お前、おれの飯を食ったから友達な」
「カーク、私もよ」
カカーーーー
「こいつ、喜んでるよ」
「ほんと」
「カークは、羽毛タイプの恐竜ね。触っていい?」
かーー
「すっごい気持ちいい」
「おれもいいか」
カッ…‥
「いやならいいよ。お前、オスだな。二人が仲良くなったんならいいか。おれは、これから裏山に行く。お前ら、ここで遊んでいていいぞ」
「何しに行くの」
「エルフに会いに行く。魔法を教えてもらうんだ」
「私も行きたい」
カカーーーー
「いいけど、大人しくしていろよ。おれん家は、父ちゃんが旅に出ていない。大穴の一層で、稼がないといけないんだ」
「分かったけど、私も魔法を覚えたい」
カーウンカーウン
「そりゃ好きにすればいい。でも、最初は、おれな」
もう、さっきみたいにスキルを使っていないのに分かる。それぐらい裏山のエルフの気が強かった。
裏山は、はげ山だ。見晴らしがいい。気を探ると、その気の強い男の後ろに2人。その二人も、今まで感じたことのない強い気だった。
「二人とも順番守れよ。ここで待っていてくれ」
「うん」
カウ
おれは、あまりの懐かしさに、自分の気を膨らませてしまった。
「ルイン、元気にしてたか」
「お前、名無しか」
「今は、オビトだ。今度の名は気に入ってる。前は、貴族の長ったらしい名でな、実は、そのもう一つ前の人生が、おれのベースだよ。姫は、無事救出できたか?」
「…………、そうか。あそこで死んだんだったな。聖なる魔力を持った者が。5歳になったから見に来たのだ。それなのに、私に近づくたびに人間臭くなる。あれは、ライナ姫の魔力だったか、どうりで」
「何の事だ」
「お前、姫にキスされてただろ。ドラゴンスレーヤーだと聞いていたのに、それでも、ライナ姫は、勇者だと思った。あれは、魔力を渡してくれたのだ。あの時魔法を使ったか?」
「使ってない、いつもの戦いだった。魔力込めは、脳天の突きぐらいかな。後は、ジャクスソードに頼った戦い方をした。じゃあ、あの禁忌魔法を撃っていれば勝てたのか」
「そうかもな」
「あの後どうなった。なぜ人族は、絶滅の危機にある」
「魔王は、ライナ姫を諦めた。だが、人族を脅威と認識した。おまえは、タイフーンドラゴンの龍玉に致命の一突きを与えていたのだ。魔法を込めたのなら、あの死の町で発動した消滅魔法だろ。消滅した龍玉は、元に戻らなかった。奴は、その後、人狩りを始めたんだ。結局、プロトンドラゴン様は、人族を守るために、魔王と戦ったよ。魔王が弱っていたとはいえ、それなりの部下がいる。300年前の戦いは、そりゃ酷かった」
「あれから、300年経ったのか。すまん、後ろにいる子供たちに、毒消しの魔法を教えてくれ、長話が過ぎた」
「お前も子供だろ。オビトだったか。呼びやすくなって助かるよ」
そう言ったかと思うと、後ろの一人が、サイカとカークの所に行ってくれた。
「それで、あの縦穴はなんだ。ダンジョンなんだろ。入りたいぞ」
「人族を助けるために、多くの竜が、天使になったのだ。天使は、癒しと守りが得意だったからな。天使の最大魔法は、ホーリーだ。あれは、多人数詠唱のホーリーの後だよ。たまたま地下の大空洞までそれが届いた。敵数千匹は、あのがれきの下だ。オビトの龍玉への一撃が雌雄を決していたんだな。プロトンドラゴン様が勝たれ魔王は死んだ。だが消滅していない。タイフーンドラゴンが復活するとき、その眷属も復活するだろう。悪いがオビトの種族には、その前触れを感知する役目を担ってもらっている。もちろん、我々が命懸けで守る」
「なるほど、その何千と言う恐竜の魔気に当てられて、強いモンスターが地下に行くほどいるんだな。面白い。巨大な縦穴に日が入っているからな。明るいダンジョンは初めてだ」
「オビトの種族をカナリアのように使っているのは咎めないのか」
「ルインが守ってくれるんだろ。なら安心だ。とにかく、おれに毒消しの魔法を教えてくれ。前に約束したろ。魔法を教えてくれるって」
「相変わらずだ。カジカには、会わないでいいのか」
「カジカは人だ。あれから300年経ったんだろ」
「カジカは、オビトの為に、バンパイアになった。まさか、本当に転生するとは恐れ入った。カジカは、あの時の美しいままだぞ」
「5歳で会っても、あいつだと拉致されそうだ。言っただろ、今の名前が気に入っているって。名前を付けてくれた両親を愛している。しばらく、黙っていてくれ。おれは、ダンジョンにもぐる。それで、あの縦穴は、何って名前のダンジョンなんだ」
「ホーリーだ。あの中には、聖なる魔力も結晶化している。見つけたら保護してくれ。そこまで行けたらだけどな。とにかく、我がエルフ族が作った風障壁をすり抜ける魔法を覚えろ。それ以外に入る道はない」
「解毒魔法だけじゃないのか」
「オビトは、消滅魔法を持っている。風障壁を壊すなよ。大災害になる。これの抜け方は、同じ風障壁のカプセルをまとうことだ。どうする?、覚えるか」
「当り前だ」
裏山のすそ野の方で、サイカとカークが、やはりエルフに魔法を教えてもらっている。あいつらと第一層で会いたい。おれたち3人が、この魔法をマスターするまで修業だなと思った。前だったら、一人で修業したし、一人でダンジョンにもぐったはずだ。あの、旅の仲間との1カ月は本当に楽しかった。
まずは毒消し魔法から。
「キュアは、浄化魔法だ。体の汚れを落としたり服の汚れを落としたりと応用範囲が広い生活魔法だ。これに生命循環系の魔法を付加する。体を活性化させ、体内の汚れも発散させる。キュクスが、風魔法の毒消し魔法だ。出来そうか」
「前いた世界の水魔法のきよめの方が簡単だ。体から、悪いものを流すんだ。でも、キュアは、風呂に入らなくて済みそうだ。教えてくれ」
「風は起こせていたよな。ブローで、髪を乾かしていただろ。それを全身にすると、クリーニングになる」
「水と風のウォッシュブローの簡易魔法だろ。ドライグリーニングだよな。服が綺麗になる」
「これを体全体で出すんだ。皮膚まで綺麗になる。これがキュアだ。そこに生命力をあげて体を活性化させる魔法を付加すると、オビトが言う清めの効果が発動して、悪いものがキュアと共に発散される。それがキュクスだ」
「風魔法だと、段階を踏まないといけないんだな。風障壁の訓練になる。キュクスを先に覚えるよ。それで、風障壁と言うのは?」
「こっちが大変だ。攻撃の鎌イタチを出し続けていたら防御になる。これが、ものすごく細かい鎌イタチになると、まるで、風のカプセルの様に見えるようになる。ここまでになったら、風障壁の完成だ。結界をすり抜けられる」
「そんな大変な結界をずっと張っているのか」
「内緒だが、アイテムがある。それがなくても、おれが肩代わりできるが、戦力の損失だろ。そうなったときは、おれを守ってくれ」
「やだね。そうなる前に、ルインと一緒にアイテムを守るさ」
「そうしよう。では、鎌イタチから始めたのでは、守りのイメージがしにくいだろうから、簡易魔法のホバーからだ。物をずっと浮かせる魔法だ。これを強くすると竜巻になる。竜巻から、小さな鎌イタチを出すイメージをしてみろ。その方が早いぞ。じゃあホバーからな」
簡単なレクチャーを受けた後、おれたちは、村に帰ることになった。子供が、こんなところに長居するわけにいかない。
カークは、エルフに説得されて親の所に帰ってくれた。なんとなく、あいつの言葉が分かる。絶対知った言葉だ。それから、3人で炭焼き小屋に集まって修行するようになった。カークには、毎日同じこの時間にここに来いとエルフに言ってもらった。おれは、しつこくカークと話をして、カークと意思疎通できるようになった。
ルインと久々に会った時から3週間後。おれはカークの言葉をマスターした。
「じゃあなカーク。もう、毎日ここに来なくていいぞ」
「サイカとも話せるようにしてくれるんだろ」
「二人で頑張れ。カークもオレの言葉が理解できるんだろ。サイカも、季節になったら炭を取りに毎日ここに来る。もう少し待てよ。風魔法の方は、サイカの方が覚えているぞ。カークは、そっちを頑張れ」
「わかった」
「おれは、魔法書が読みたいんだ。先に第一層に潜る。必ず来いよ」
カークは、絶対一層に行くと約束してくれた。そうなってからは、時々しか、炭焼き小屋に行かなくなった。おれは風障壁を覚えるために、結界の近くで修業を始めた。
今年、村で5歳になるのはおれだけ。おれの村はそうだが、隣村に女の子がいるそうだ。炭焼き小屋は、その村との唯一の接点。この巨大な縦穴周辺に人族の村があるので、実際は、子供でも、他の村に行けるようになっている。隣村に行けるようになるのは、7歳から。とにかく、会ったことが無い隣村の子に会いたいと村長に言うと、向こうと日にちを合わせてくれた。
じいちゃんが行けって言うから、村長に会いに行くと、じいちゃんと変わらないぐらい色々教えてくれた。
「炭焼き小屋で、昼飯を食うのじゃ。向こうもそうする。その子と友達になれ」
「女の子だろ、いいのか」
「ませたことを言いおって、同じ人族じゃぞ。仲良くせんでどうする」
「分かった。母さんに、旨いもの作ってもらう。おかず交換したい」
「オビトよ、元気に育ったな」
「それよりじいちゃんに聞いたんだ。エルフに会ったら、魔法を教えてくれるって。それができるようになったら、大穴の一層に行っていいか。うちは、じいちゃんがぎっくり腰で、行ける者んが、いないんだ」
「ばかたれ、道を外れたら、お使いにならんだろうが。そうじゃのう、炭焼き小屋の裏山に上がってみい。あるいは、そこからお前を心配してエルフ様が見守っているかもしれん。じゃが、おらんかったら諦めろ」
「村長、ありがとう」
おれは、大喜びで村長の家を飛び出した。その後、家の奥から、村長の孫が、心配そうな顔をして出てきて、おれを見送った。
「あんな約束してよかったのか」
「毒消しの魔法は、覚えて、損はないじゃろ」
「そうだが、もう一つの方は、無理だぞ。しばらくの間は、うちで、魔石収入を肩代わりしてやろう」
「それじゃあオビトは、納得せんじゃろ」
「子供に、何、遠慮する」
「逆じゃ、期待しとるのよ。お前は、あの子の魔力を感じられんからわからんじゃろうが、綺麗な魔力じゃぞ」
「そんなもんなのか。じじいの好きにするといい。成功するといいな。オレに可愛い弟子ができる」
「すぐに抜かれるなよ」
「なんだよ、それ」
おれは隣村の女の子と友達になりたいから、旨い弁当を作ってくれと、母さんに頼んだ。
5歳のお使いの日が来た。
朝早く炭の背負子を背負って出かける。弁当のおかずは、倍入れてもらった。村長の家に挨拶に行くと、孫のカイも出てきて、頑張れと励まされた。どうやら、村長から、エルフの話を聞いたようだった。
「カイのあんちゃん!」
「オビト、おまえ、女の子を裏山に行こうと誘うなよ」
「誘う、仲間外れは、かわいそうだ」
「オレが、伝言役なんだがなー。絶対魔法を覚えろよ」
「覚えてあんちゃんと一緒に、第一層に行く」
「そん時は、オレの事を師匠と呼べ」
「いやだ。仲間にする。その時は、カイって呼びたい」
「仕方ない、行け」
「ほっ、ほっ、ほっ。カイは、オビトに甘いのう」
「あいつ、ウサギをどうやってか、素手で捕まえただろ。その時から、一目置いているんだ」
村長とカイは、オビトを見えなくなるまで見送った。
炭焼き小屋は、山を一つ越える。つまり、村が見えなくなる。子供だと、ここで不安になるだろう。これが、5歳のお使いの気もだ。
おれは、その反対。
「視覚強化、聴覚強化、嗅覚強化。まだいけるか。鋭気功、硬気功、剛気功。鷹の目、ウサギの耳、犬の鼻」
「おう、サーチ範囲が広がった。おやっ、イノシシに追われている二本足のトカゲ発見。おれぐらいの身長しかないけど、恐竜か?こっちに向かってくる」
・・・、まずいな、こっちに向かってくる。ドラゴンとは結構殺し合ったけど、恐竜には助けてもらってバッカだったんだよな
小さな恐竜は、カーム、カームと泣いている。あれは、助けてだ。原始種族だと思う。人間の原始種族がチンパンジーの様に、恐竜にも、そう言う種族がいるのだ。三畳紀の恐竜は、大きくてもキリン、重くてもカバとか像ぐらいしかなかった。あの小さなのは、とても軽そうで細長いタイプ。大きくなっても50~70キロぐらいしかない。飛べない鳥タイプの恐竜だ。
…………、……・・ドドドドドドドド
「イー、イーノ。カーム、イギア、ホギャーーー」
「なんだって!イノシシに追われているって!。こいつ、原始種族じゃない。知恵持ちか!」
炭を縛る綱を恐竜が通る通り道の木に結んで、もう片方を緩く木に巻き付けた。
来たっ!
カームカーム、キーー、カームカームカームカーム
あれはディノニクスか。よし通り過ぎた。綱を思いっきり強く張った。だけど、5歳の力じゃたかが知れている。
「能力向上、筋力強靭、プロテクト」
これでだめなら手を放そう。
ブヒヒーーーン
イノシシは、綱にけつまずいて、見事転がった。驚いたイノシシは、当たりをきょろきょろ見ている。
「『声拡声』!ウワーーーーーー」
動物は、大きな音に敏感に反応する。驚いたイノシシは、来た道を突進して逃げた。
「ふぃー、大丈夫か?」
きゅい、きゅい
「親から離れたのか?気をつけて帰れよ」
クンクン
「犬か、お前」
この恐竜の子供は、炭の背負子を珍しそうに突いている。
カーク、カーク
「ついてくるな。お前!、分かった。おれの弁当狙いだろ。やらないからな」
きゅうん
小枝を振り回して追い返そうとしたが、おれの弁当を諦めきれないらしい。遠目についてくる。隣村の女の子に、どう説明したものかと、小枝を振りながら炭焼き小屋に到着した。
女の子は、もう、炭焼き小屋に着いていて、おれを待っていた。
「ミの村のサイカよ。あなたは?」
「ヒの村のオビトだ」
「あれは?」
カーク
「知らん」
カーク、カーク、カーク
「カークだってよ」
フン!
カークが胸を張った。
「お友達?」
「違う。おれの弁当を狙ってんだ」
「うらやましいなー。私、みんなと年が離れているの」
「さっきの話、聞いてたか?。カークとは、さっき会ったばっかりだ。うらやましいんなら、今、友達になればいいだろ」
「どうやって?」
「あいつ、腹減ってんだ。弁当を半分やれば喜ぶだろ。今日、おれの母さんは、おかずを倍入れてくれた。一緒に食べよ」
「私もいっぱい持ってきたよ。じゃあ、カークもこっちに来て」
カーーー
カークが、ひょこひょこやって来た。サイカが、半分弁当をカークにやるので、おれもそうした。弁当の蓋に半分飯を入れて半分の半分を二人で分けて食べた。おれは、今日、二人も一度に友達ができた。
「カーク、お前、おれの飯を食ったから友達な」
「カーク、私もよ」
カカーーーー
「こいつ、喜んでるよ」
「ほんと」
「カークは、羽毛タイプの恐竜ね。触っていい?」
かーー
「すっごい気持ちいい」
「おれもいいか」
カッ…‥
「いやならいいよ。お前、オスだな。二人が仲良くなったんならいいか。おれは、これから裏山に行く。お前ら、ここで遊んでいていいぞ」
「何しに行くの」
「エルフに会いに行く。魔法を教えてもらうんだ」
「私も行きたい」
カカーーーー
「いいけど、大人しくしていろよ。おれん家は、父ちゃんが旅に出ていない。大穴の一層で、稼がないといけないんだ」
「分かったけど、私も魔法を覚えたい」
カーウンカーウン
「そりゃ好きにすればいい。でも、最初は、おれな」
もう、さっきみたいにスキルを使っていないのに分かる。それぐらい裏山のエルフの気が強かった。
裏山は、はげ山だ。見晴らしがいい。気を探ると、その気の強い男の後ろに2人。その二人も、今まで感じたことのない強い気だった。
「二人とも順番守れよ。ここで待っていてくれ」
「うん」
カウ
おれは、あまりの懐かしさに、自分の気を膨らませてしまった。
「ルイン、元気にしてたか」
「お前、名無しか」
「今は、オビトだ。今度の名は気に入ってる。前は、貴族の長ったらしい名でな、実は、そのもう一つ前の人生が、おれのベースだよ。姫は、無事救出できたか?」
「…………、そうか。あそこで死んだんだったな。聖なる魔力を持った者が。5歳になったから見に来たのだ。それなのに、私に近づくたびに人間臭くなる。あれは、ライナ姫の魔力だったか、どうりで」
「何の事だ」
「お前、姫にキスされてただろ。ドラゴンスレーヤーだと聞いていたのに、それでも、ライナ姫は、勇者だと思った。あれは、魔力を渡してくれたのだ。あの時魔法を使ったか?」
「使ってない、いつもの戦いだった。魔力込めは、脳天の突きぐらいかな。後は、ジャクスソードに頼った戦い方をした。じゃあ、あの禁忌魔法を撃っていれば勝てたのか」
「そうかもな」
「あの後どうなった。なぜ人族は、絶滅の危機にある」
「魔王は、ライナ姫を諦めた。だが、人族を脅威と認識した。おまえは、タイフーンドラゴンの龍玉に致命の一突きを与えていたのだ。魔法を込めたのなら、あの死の町で発動した消滅魔法だろ。消滅した龍玉は、元に戻らなかった。奴は、その後、人狩りを始めたんだ。結局、プロトンドラゴン様は、人族を守るために、魔王と戦ったよ。魔王が弱っていたとはいえ、それなりの部下がいる。300年前の戦いは、そりゃ酷かった」
「あれから、300年経ったのか。すまん、後ろにいる子供たちに、毒消しの魔法を教えてくれ、長話が過ぎた」
「お前も子供だろ。オビトだったか。呼びやすくなって助かるよ」
そう言ったかと思うと、後ろの一人が、サイカとカークの所に行ってくれた。
「それで、あの縦穴はなんだ。ダンジョンなんだろ。入りたいぞ」
「人族を助けるために、多くの竜が、天使になったのだ。天使は、癒しと守りが得意だったからな。天使の最大魔法は、ホーリーだ。あれは、多人数詠唱のホーリーの後だよ。たまたま地下の大空洞までそれが届いた。敵数千匹は、あのがれきの下だ。オビトの龍玉への一撃が雌雄を決していたんだな。プロトンドラゴン様が勝たれ魔王は死んだ。だが消滅していない。タイフーンドラゴンが復活するとき、その眷属も復活するだろう。悪いがオビトの種族には、その前触れを感知する役目を担ってもらっている。もちろん、我々が命懸けで守る」
「なるほど、その何千と言う恐竜の魔気に当てられて、強いモンスターが地下に行くほどいるんだな。面白い。巨大な縦穴に日が入っているからな。明るいダンジョンは初めてだ」
「オビトの種族をカナリアのように使っているのは咎めないのか」
「ルインが守ってくれるんだろ。なら安心だ。とにかく、おれに毒消しの魔法を教えてくれ。前に約束したろ。魔法を教えてくれるって」
「相変わらずだ。カジカには、会わないでいいのか」
「カジカは人だ。あれから300年経ったんだろ」
「カジカは、オビトの為に、バンパイアになった。まさか、本当に転生するとは恐れ入った。カジカは、あの時の美しいままだぞ」
「5歳で会っても、あいつだと拉致されそうだ。言っただろ、今の名前が気に入っているって。名前を付けてくれた両親を愛している。しばらく、黙っていてくれ。おれは、ダンジョンにもぐる。それで、あの縦穴は、何って名前のダンジョンなんだ」
「ホーリーだ。あの中には、聖なる魔力も結晶化している。見つけたら保護してくれ。そこまで行けたらだけどな。とにかく、我がエルフ族が作った風障壁をすり抜ける魔法を覚えろ。それ以外に入る道はない」
「解毒魔法だけじゃないのか」
「オビトは、消滅魔法を持っている。風障壁を壊すなよ。大災害になる。これの抜け方は、同じ風障壁のカプセルをまとうことだ。どうする?、覚えるか」
「当り前だ」
裏山のすそ野の方で、サイカとカークが、やはりエルフに魔法を教えてもらっている。あいつらと第一層で会いたい。おれたち3人が、この魔法をマスターするまで修業だなと思った。前だったら、一人で修業したし、一人でダンジョンにもぐったはずだ。あの、旅の仲間との1カ月は本当に楽しかった。
まずは毒消し魔法から。
「キュアは、浄化魔法だ。体の汚れを落としたり服の汚れを落としたりと応用範囲が広い生活魔法だ。これに生命循環系の魔法を付加する。体を活性化させ、体内の汚れも発散させる。キュクスが、風魔法の毒消し魔法だ。出来そうか」
「前いた世界の水魔法のきよめの方が簡単だ。体から、悪いものを流すんだ。でも、キュアは、風呂に入らなくて済みそうだ。教えてくれ」
「風は起こせていたよな。ブローで、髪を乾かしていただろ。それを全身にすると、クリーニングになる」
「水と風のウォッシュブローの簡易魔法だろ。ドライグリーニングだよな。服が綺麗になる」
「これを体全体で出すんだ。皮膚まで綺麗になる。これがキュアだ。そこに生命力をあげて体を活性化させる魔法を付加すると、オビトが言う清めの効果が発動して、悪いものがキュアと共に発散される。それがキュクスだ」
「風魔法だと、段階を踏まないといけないんだな。風障壁の訓練になる。キュクスを先に覚えるよ。それで、風障壁と言うのは?」
「こっちが大変だ。攻撃の鎌イタチを出し続けていたら防御になる。これが、ものすごく細かい鎌イタチになると、まるで、風のカプセルの様に見えるようになる。ここまでになったら、風障壁の完成だ。結界をすり抜けられる」
「そんな大変な結界をずっと張っているのか」
「内緒だが、アイテムがある。それがなくても、おれが肩代わりできるが、戦力の損失だろ。そうなったときは、おれを守ってくれ」
「やだね。そうなる前に、ルインと一緒にアイテムを守るさ」
「そうしよう。では、鎌イタチから始めたのでは、守りのイメージがしにくいだろうから、簡易魔法のホバーからだ。物をずっと浮かせる魔法だ。これを強くすると竜巻になる。竜巻から、小さな鎌イタチを出すイメージをしてみろ。その方が早いぞ。じゃあホバーからな」
簡単なレクチャーを受けた後、おれたちは、村に帰ることになった。子供が、こんなところに長居するわけにいかない。
カークは、エルフに説得されて親の所に帰ってくれた。なんとなく、あいつの言葉が分かる。絶対知った言葉だ。それから、3人で炭焼き小屋に集まって修行するようになった。カークには、毎日同じこの時間にここに来いとエルフに言ってもらった。おれは、しつこくカークと話をして、カークと意思疎通できるようになった。
ルインと久々に会った時から3週間後。おれはカークの言葉をマスターした。
「じゃあなカーク。もう、毎日ここに来なくていいぞ」
「サイカとも話せるようにしてくれるんだろ」
「二人で頑張れ。カークもオレの言葉が理解できるんだろ。サイカも、季節になったら炭を取りに毎日ここに来る。もう少し待てよ。風魔法の方は、サイカの方が覚えているぞ。カークは、そっちを頑張れ」
「わかった」
「おれは、魔法書が読みたいんだ。先に第一層に潜る。必ず来いよ」
カークは、絶対一層に行くと約束してくれた。そうなってからは、時々しか、炭焼き小屋に行かなくなった。おれは風障壁を覚えるために、結界の近くで修業を始めた。
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