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シャル・ウィ・ダンス

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「きゃああぁー!!」

叫び声を上げる九条杏珠さん

「え?ちょっと待って?えっ?え?どういう事!」

その瞬間、俺は一気に酔いから覚めてしまった
まるで夢でも見ていた気分だ

「いっやぁあああああああああああー!!」

バッチィ――――――ン!!

「ぎゃふっ」

「たっ、助けて!橘!!」

「杏珠様!!」

彼女のビンタを喰らって宙に舞う俺

(あんた絶対何かの武術に覚えがあるだろ!?)

腰の入ったビンタを喰らって口から血が出た

ドサッ・・ズザザザー

「うっ・・げほっげほ」

床に叩きつけられて息が苦しい、一体何がどうなっているんだ?
ダンスホールの中央には多数のギャラリーが集まって来た

ガシッ!ドサドサ!ドサッ!ベタッ!

「むぎゅっ・・うぅ」

橘って呼ばれた人と黒服連中に一斉に取り押さえられる俺
最後には顔を床に押し付けられた
解せぬ!俺、被害者だよね???

いや痴漢していた俺に責任が・・で、でも彼女が俺を誘っていたんだよ
頭の整理がつかない、ひょっとして何かの罠じゃないのか?

もろ出しになっていた俺のチンコは黒服たちに押さえつけられたお蔭で
他の人の目に触れる事は無かった

だが近くにいた人達が俺を蔑んだ目で見降ろす視線に
あぁ、終わったんだなって・・・現実に引き戻された
そして・・頭から布をかぶせられて黒服達に連行されたんだ・・・

真っ白になった頭で取り敢えず状況を確認する

俺は舞風 広志 22歳 彼女いない歴=年齢 童貞だ

高校を卒業して大手電機メーカー縄門電気の子会社に就職して3年
去年、親会社に欠員が出たことで移籍できたのは奇跡だった

結果、21歳で本社の新入社員になる事が出来た。
まぁ同じ部門に配属されたから親会社の人は知った人が多いんだけどね。

再就職となって東京本社のある学園都市のマンションに引っ越してきた
メゾン常葉、5階建てで全20部屋の内5部屋を社宅として借りてあるそうだ
俺の部屋は2階の205号室、角部屋だった。

異変に気付いたのはこっちで働き始めて半年が過ぎた頃だ

現場でマシニングを操作している時に隣のフロアから
製品部の御堂主任が横に来て話しかけて来た

「こんにちは、頑張っているわね、舞風君」
「もうこっちでの仕事は慣れたのかしら?」

「あっ、こんにちは御堂さん」
「そうですね、向うで使っていたマシニングと同じ機種だったんで助かりました」

製品部主任 御堂響子さん 33歳 既婚
狼カットで出来る女ってイメージなんだよね
凛としていて部下からの信頼も厚い人だ
いい女はとっくに売れているって見本だな
でもまだ子供はいないって話だ

「んん?~私の顔に何か付いてる?」

おっといけない、思わず顔をまじまじ見てしまった

「あはは‥目とか鼻とかw」

「ふふ、言うわねえ舞風君も。そういうとこ好きよ」
「今日さ、ちょっと仕事終わったら付き合って欲しいのだけど大丈夫かしら?」

「えっ!ええ・・・」

思わず顔が赤くなる

「可愛いわねぇ~ふふふ、襲ったりしないから安心して」
「そっ、そんなんじゃ、ありませんってw」

(俺って顔に出やすいのかな?)

いや、襲って欲しい・・・と思ってしまったのは内緒だ。

でもまぁ修羅場は嫌だからそれは有り得ないんだけどね・・・
俺は普段からネットで情報を漁るのが趣味だ
夫婦やカップルの浮気や修羅場とかもいっぱい読んで知っている
そういうのは事案にならないように注意しなきゃ身の破滅なんだよ。

「少しばかり、とある仕事の件で頼みたいことがあるんだけど」
「えっと・・・俺で良いんですか?」

「ん~、というか・・・舞風君でないと駄目かな。」
「わ、分かりました、じゃあ今日は定時って事でいいですか?」

「おk~ありがとう」
「課長には話し通しとくから17時過ぎに西門の駐車場で待っていてちょうだい」

「は・・はい、了解しました御堂さん」

その返事を聞いたら、足早に製品部フロアに戻っていった

「よっしゃあ~今日は久々に定時かぁ~ラッキィ♪」

だけど周りを見ると同じ班の人達が・・・

・・・サッ
・・・ササッ
・・・サササッ

何だろうこの反応?急にみんな俺と目を合わせなくなったような・・・

(気のせいかな???)

「あの・・佐藤班長?」

・・・ササササッ

(何なんだ・・?)ショボーン

ジリリリリィィィーン♪

17時になった

「お疲れ様で~す、お先に失礼します」

1人着替えを済ませて駐車場に向かうと御堂さんは車の前で待っていた

「舞風君、こっちよ」

タッタッタッ

慌てて駆け寄った

「す、すみません、早いんですね御堂さん」

「ふふふっ、女にはいろいろ準備があるものよ」

ドキッ

確かに・・・・きっと早めに切り上げたんだろうな。
御堂さんは何処かのOLさんって見た目になっていた。
製品部の作業服は白衣で主任でもノーメイクが基本だから意識してなかったけど

化粧した御堂さんはブラウスにカーディガン、下は膝まである若草色のスカート
口紅は真っ赤だけど嫌味じゃなくて大人の女って雰囲気になっている。

「じゃあ直ぐに中に入って」
「凄い、フェアレディzじゃないですか?」
「いいでしょ?乗り心地も最高なのよ♪」

ゴクリ・・・

「はっ、はい、いいなぁ~」

女性に真顔で言われたら別の意味想像しちゃうじゃないか
免疫ないから深読みしちゃうよ・・・

パタンッ

スポーツカーで色はガンメタ、高級感が漂っている
ピカピカしていて、めっちゃ、高そうだ・・・・
俺も車の免許持っているけどこっちでは電車通勤だから必要ない
地元で乗っていたのは軽だったけどね。

ブロロロロォーッ

シートベルトを締めると車が発進した

この地区は政府の推進する次世代ロボット研究開発用に作られた学園都市だ
複数の大学と企業、国が出資する関連施設が多く立ち並んでいる
特にエリート養成の私立校も多い為、若者の街ともなっている

「あのう、それで仕事の件って何の話なんですか?」
「そうね、ちょっと着くまでこれ読んでいて貰えるかな」

ポンッ。

そう言うとA4サイズの茶封筒を渡された

「はい?」

ギョッ!

手渡されて横を見た時、目を疑った
御堂さんもシートベルトを閉めているんだけど
薄いブラウスだからか胸の形が、むっくりと出ている

(主任ってこんなに胸大きかったっけ?)

シートベルトを挟んで、おっぱいが浮き出てる。
ブラジャーは着けているんだろうけど、や・・・柔らかそう

ゴックン

やべ、生唾呑み込んじゃった・・・聞こえたかな?

「舞風君?」

「あっす、すいません、これ読むんですよね?」

まずい・・・一瞬固まっていた
ヘソの位置で封筒を開ける

助かった。でも
おっぱいの形、想像して思わずチンコが勃起っちゃったよ
車内も香水の香りがしていて女性と密室二人っきりなんて初めての経験だ
これは不可抗力だよね?俺だって健全な男なんだ

自然とお尻を座席の後ろに押し付けて前屈みになった
股間の膨らみバレませんように。
脇見運転は駄目ですよ、御堂さん。

「えと、九条グループ決算資料?」

中には九条グループの四半期決算報告書が入っていた

「縄門電気が九条グループの関連企業って事は知っているわよね?」
「はい勿論です」
「四半期・3ヶ月毎にうちからも社長と役員が総会に出席しているんだけど」
「各部署からも持ち回りで担当者が資料の補佐として出席しているのよ」
「・・・はい」

「本決算が次の次で、丁度半年後がうちの部署の担当になっているの」
「あっはい、そうなんですか・・・」

何か嫌な予感がする

「心配しなくても良いわ、舞風君に参加して欲しいのは総会の後のダンスパーティーだから」
「ダンスパーティー?」

「そう、グループ同士の親交を深める目的でね新人を各企業からそれぞれ参加させているの」
「このパーティーには株主は参加しないわ。」
「純粋に企業活動におけるグループ内の親睦が目的なのよ」

「まさか・・それって俺が参加するんですか?」

コクッ

自分を指さして尋ねると御堂さんは黙って頷いた

「いやいや俺、ダンスなんて学生時代のフォークダンスしか知りませんよ」
「ぷっ、あはは、何でも切掛けって必要なのよねぇ」

「あのう?」
「実を言うとね~これって社長命令なの・・分かるかしらw」
「・・・あ・・」

俺には拒否権がない事を理解した・・・

キキー

20分位して車が、とあるビルの隙間にある駐車場に入った

聞けば御堂さんは大学時代にダンスサークルに入っていたらしく
インストラクターの資格まで持っているそうだ
高卒の俺には別の世界の話だな・・・

カランコロン♪

ビルのエレベーターを降りて3階にあるお洒落なドアを開ける御堂さん、俺もそれに続いた

「やほぉ~権藤さん元気してた~?」

スタスタスタ......

「あらぁ~ん。いらっしゃい響子ちゃん、おっ久しぶりねぇん♪」
「どれどれ、その子が新しい受講生なのね~?」
「そうよ、舞風広志君、週一回だけど半年で仕上げられるかしら?」
「うふふ、私とあなたが組めばどうって事ないわよん♪」
「ふふ、そうね」

「紹介するは舞風君、ここのダンススクールの先生、権藤龍三さんよ、よろしく」
「は、初めまして舞風広志と言います、この度は、よろしくお願いします」

普段着のままだけど取り敢えずお辞儀して丁寧に挨拶した。

「は~い、よろしくねぇん♪広志ちゃんって言うのね」
「私、可愛い男の子って好きよ~やさしく教えてあ・げ・る♪」

ジロリッ

思わず御堂さんを睨んだ

「あはは、心配しないで、悪い人じゃないから」

苦笑いの御堂さんだ・・

そりゃ睨むだろ!奥から出て来た男は身長180cmはある角刈り
頬に傷のあるどこかの若頭だ。
で、何でこんなお方がオネエなんだよ!
世の中何か間違っているぞ

教室に入ると中は広くて、やや年配の上品そうな人達が10人、
それぞれカップルでダンスを踊っていた。

みんな流石にうまいな

「広志ちゃんはしばらく生徒さんの踊るダンスを見ていてね」

「はい」

「社交ダンスはねぇ基本、男性が女性をエスコートする踊りなの」

「特に足運びとステップに注意して見ていてごらんなさい」

はい、123 123 123 456 123

ステップからのターン そして12・・・

(っていうか社交ダンスって、あんなに密着するんだな・・・)

ドキドキドキ・・・・

完全に真正面から抱き合っている格好じゃん
おっぱいとか完全に当たっているよね?
後ろから支えている格好は腰を掴んでお尻に股間当てているじゃん

ギンギンギン・・・

なんか見ていてムラムラしてきた

「広志ちゃんってば身長ってどれ位あるのかしら?」
「ええと173㎝ですかね、高校で一気に伸びたので」
「そうなのね、腕力の方はどうかしら?」
「まぁ普通位はあるかなって、思っていますけど・・・」

「ダンスはね女性が男性を信じられないと安心して踊れないの」
「変な羞恥心や恥ずかしさがあるならそんな感情は今お捨てなさい」
「腰が引けた動きをすればパートナーに怪我させる事に繋がるのよ」
「お互いが息を合わせて踊るのがコツよ」

権藤さんがそう言ったときに一組のカップルがオーバーアクションから
女性がのけ反って、両手を伸ばしたまま床面すれすれまで頭を反るポーズを決めた

「す、凄~い・・・」

男性は女性の腰を力いっぱい掴んで腰を密着させている
少しでも腰が引けていたら大変な事になるのは素人でもわかる・・・

「む、難しそうですね」
「大丈夫よ♪、じゃあ響子ちゃん一緒に広志ちゃんの教育始めちゃう?」
「ふっふ、ふぅ~そうね、権藤さん」

なんか2人からヤバイ、オーラ―が出ているのが見えるぞ

「ひっ、ひゃーーー」

それから始まったのは完全にスパルタ教育だった

はい!タンッ、タンッ、タンッ そこでターン!繰り返し!
123 123 123 456 もう一回、ターン

「もう一回、そこで腰を引いたら意味ないわよ!」
「はっ、はい!」
「左手は私の腰をしっかり掴んで。右手は背中に回して全体を支えるの!」
「はいっ」
「広志ちゃんそこで後ろからターンして手を繋いで一回、回って」
「はいっ」

権藤さんが俺の後ろを支えながら御堂さんの踊りに合わせる
休みなしで1時間ぶっ続けを2回・・・
終わった頃には全身が汗びっしょりとなっていた。
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