眷属ノート・名前を書かれた女は俺の物  これ使ってお金を稼ぐのは悪用ですか? *** 魔人誕生編 ***

岩鬼 倫

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覚醒

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(光徳銀行京都支店)

【  店内  】

「まことに申し訳ありません、お客様、本店は15時で営業の方は終了ですので」

カウンター窓口のお姉さんが中から出て説明してきた

キョロキョロッ

(・・・琴宮さんの姿がない)

「すいません、ここに琴宮さん、琴宮美樹香さんはいませんか?」

ザワザワ・・・

行員達は俺の質問を聞くと、互いに目を合わせて気まずそうな表情になった

「どこかに出掛けたんでしょうか?お、俺、彼女の友人なんです!」
「どこに行ったか誰か教えてもらえませんか!」

「琴宮さんは、一時間ぐらい前にルナ・プレシャスってホテルの・・」

「こら!!何を言っているんだね、君は!個人情報だぞ!」

カツッカツッカツッカッカッカッカッ!!

「支店長・・・」

ズィ!

「誰だね、君は!既に営業時間は終わっているのだよ!」
「一般の人間が何時までも中にいるなら通報させてもらう事になるよ」

「えっ・・・・あ?」

せっかく窓口のお姉さんが説明してくれていたのに突然
奥から態度のデカそうなオヤジが出て来た
ズイっと俺の前に立つと上から睨みつけて威圧するような態度だ。

名札には支店長 亜沼 純次の名前があった
見るからにエリート面で見下している

「あ、あんたが 亜沼 純次かよ?」
「失敬だな、君は!社会の常識も知らんのかね?」

「どっちが!お客さんに向かってその態度が支店長のとる態度かよ?」

ピクピク・・・

「・・・きっ、君がお客様だとして今の時間に何の用があるというんだね?」
「既に営業時間外、なんだけどねっ!」
「いや、俺、琴宮さんの友人だから」
「琴宮君の?彼女は丁度3時からある人と大事な打ち合わせがあるんだ!?」

「ん?あっ!そうか君だね?不埒な手紙を彼女に送ったマヌケは」
「確か、まか。かま?」
「舞風です」
「あー!そうそう、舞風、舞風だwww」

パンッパンッパンッパンッ

何故かいきなり手を叩き始めやがった

「あーっはっはっは。こいつは傑作だぁ~」
「何が・・・可笑しい?」
「まったく、これは愉快だ、くっ、くくくく」

「君、完全に手遅れ~あーはっはっは!」
「もう3時過ぎているから今頃はもう彼女の方からお楽しみ中だよ」

スーッと俺の全身の血の気が引いていくのが分かる
だけど不思議と逆に冷静になって来るんだ・・・・・

「・・・・あんた、さ。琴宮さんの家族嵌めたよね?」
「何を言っているんだね、人聞きの悪い、君さぁ~名誉棄損で訴えるよ」
「ほらっ」

フィッ

顎で合図された。その方向を見るとそこには監視カメラがこっちを向いていた

(だが知った事ではない。)

もう俺の我慢は限界を超えている
胸の中心で魔核が大きく波動を広げているのがわかる

「お姉さん、琴宮さんのいるホテルの番号知りませんか?」
「・・ル、ルナ・プレシャス 7階の717ルームよ」

「君!何を言っているんだね!馬鹿なのか!」
「ありがとう、お姉さん、」

ズグッ!!!バシュッ!!

ブワシャアアアアアアアアアアアアア!!

突然の・・・一瞬だった。

亜沼の内臓と肉片が飛び散り銀行のロビーが鮮血に染まった
静止した時間・・・誰も身動き一つとれない、理解に追いつけないのだ
目の前のお姉さんは真面に血を浴びてしまって固まっている

言葉が終わる瞬間、目の前の亜沼の腹目掛けて右手で手套を放った
ただ俺の右手は肘から先は人間の物ではなくなっていた
それは、歪で、どす黒い筋肉で覆われて・・鋭利な爪を生やした悪魔の腕だ
手套は腹を貫いて背中に貫通している

「ゴバッ・・ゴボッグエェェ・・・・ェ・・ェェ」

口からドボドボと血を吐き出す亜沼
ピクピクと全身が痙攣している、まるで蛙のようだ

グイグイッグイ

俺は無表情のまま貫通した右腕を上下に揺らす

亜沼の血まみれの顔が引きつった表情で逆に青白くなっていく
股からは失禁した小便が漏れていて・・・臭い

こうなっても亜沼は死なない、死ねないのだ
それが魔人から攻撃を受ける事の意味だった

脳が破壊されるまで死ぬことが許されず、
神経が剥き出し状態で無限の苦痛を味合う
更に脳が破壊されようと幽体と魂は解放される事が無い。
魔人の手によって直接殺された魂の運命は別の理に支配される

本来、魔素があり魔力が共有される異世界であれば
魔人に殺されようと魂は霊界へと昇る
しかし魔素が無く魔力すら持たない人間の魂は
魔人に対する一切の抗う術を知らないのだ

これはこの世界の神の怠慢である

それの意味するところは死後に霊界どころか地獄へ落ちて
やり直す事すら許されない旅路の始まりである
魔界での永劫に渡る奴隷の魂、復活と消滅を唯延々と繰り返す餌
魔人に対して地球人は余りにも無知、純粋にして無抵抗すぎる

それは兎の群れにライオンを放つ例えでも甘すぎる
魔人にとって地球人はヒヨコ程の存在でしかなかった。

ましてや魔界男爵、”イレギュラー”

故に・・・・・

グワシャッ・・・・バァーーーーーーーン!!

左腕も魔人化し亜沼の頭をぶち抜いた
そして頭が吹き飛んだ、まるで熟れたトマトの様に脳みそや眼球がボトボトと弾けた
次に腹を貫いた右腕が首を失った胴体を放り上げた瞬間、空中で爆散した

銀行内の床、壁、至るところに亜沼の血と肉片、骨の残骸が飛び散った
監視カメラのレンズにも赤い血が飛び掛かった
それを睨みつける舞風の赤く光る眼球がそれを見ていた監視員すらも震え上がらせた

銀行員たちは非常用ブザーを押す事も、いや悲鳴を上げる事さへ
出来ずにいた。
人間は恐怖に駆られれば助けを呼ぶために悲鳴を上げるものだ
だが前提として助けを呼べば助けてもらえる希望が僅かでもあればの話だ

一切の絶望、気分を害せば瞬殺される、誰にも抗う事のできない悪魔
人間としてではなく動物としての本能、全ての動物がそうであるように
天敵に対しては全てを諦めてジッと身を潜めるしかないのだ。

「ふぅ~・・ルナ・プレシャス 7階の717ルームか」
「ありがとうお姉さん」

セカンドバッグを拾って振り返ってその場を後にした。

ダッ

問題ない・・・ちゃんと覚えている
でも全然怖くなかった、むしろ楽しかった
人間って・・・なんて殺すのが簡単なんだろう・・・
あぁ、この感情、俺ってもう人間じゃないのかも・・・

監視カメラに取られた?別にいいじゃん、おもしろい
俺は別に隠さないし隠れない、俺を敵と認定するなら攻撃してくればいいんだよ
敵なら全て皆殺しにすれば良いと思うんだ
別に俺にその気が無くても降りかかって来る火の粉なら情けを賭ける必要なんてない
それに・・・多分・・・・

シュタッ。

「ここか?ホテル、ルナ・プレシャス」

ロビーに入ってエレベータに向かう

何ということでしょう~さっき魔人化して敗れた服の腕とか
返り血で真っ赤だったのが魔人化解いたら元に戻っていた
笑える、これって眷属ノートの物理現象リセットと同じ効果かな?

ジロジロ・・・

ははは・・・何か高級ホテルには場違いな格好だよな
まぁ普段着だし・・・
でも今は一刻を争うんだ、頼むから俺に構わないでくれ
多分、今声かけられたら誰だろうと一瞬で殺してしまいそうだ

ガー・・・エレベータが開いて7階へ急ぐ。

もし、もし琴宮さんが竜巳とSEXしている場面だったらどうする?
嫌だ・・考えたくない・・・でももし、今はその可能性が高いんだぞ・・

俺は自分を抑える自信がない、ひょっとしたら琴宮さんまで・・
・・まてまて、落ち着け、そこまで人間やめるな、俺!
最悪の場面だったら琴宮さんに謝って藤堂竜巳を殺して帰ろう、他に考えるな。

チンッ

ガァーーー

7階に着いた

717号室の前、ドアの前に立つ

ドキドキドキドキ・・・・

静だ・・中の音は外に漏れてないけど・・・今この中では。

(だ、駄目だ!どうしても最悪の状況を想像してしまう・・・)

ゴクリ・・・

ガチャッ

ドアノブに手を掛け・・・・・開いた

ビクッ!!

「・・・・あ・・・・」

ドアを開けた瞬間ベッドの横の椅子に座る琴宮さんが顔を上げる
青褪めた顔と目が合った、まるで処刑台にでも上るような表情だ
化粧しているのが意味がないほど・・それは悲痛に見えた

膝まであるロングスカートにリボンのついたシャツ、
お洒落なカーディガンで決めているのにそんな表情じゃ台無しだよ・・・

「だ・・・れ?・・・」
「ひょっとして・・・舞風くん?」

「間に合った?琴宮さん・・・」

ツツゥーー

琴宮さんの頬を涙が伝う
考えてみれば彼女とは高校卒業して4年も会ってないんだった

タタタッ

「舞風くん!」

駆け寄って両腕で胸を庇うように俺にもたれ掛かる琴宮さん

ズキューーーン

(何なんだ、この攻撃力は!やべぇーーー)

「・・・・来て・・くれた・・」
「・・・・・・・・・・・」

俺は安堵感で掛ける言葉も見つからなかった

小刻みに震える琴宮さん・・・
俺は優しく・・そっと肩を抱いた
この時・・
スッポリと俺の中に納まった彼女を限りなく愛しいと思った

「・・・・帰ろう」
「・・・うん・・・・」

・・・・彼女が泣いている
彼女の髪にも涙が落ちる
あぁ・・なんだ・・・これ・・俺の涙だった・・・・・・・。
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