健多くん

ソラ

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逆らえない。②★

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「なにすんだよっ!?」

「うるさい」

藍崎のマンションに着いた途端、僕はソファに押し倒された。

本当に不機嫌な藍崎を見るのは初めてで、湧き上がる不安と恐怖でカラダが思うように動かない。

「やめ、ろっ!」

あっという間にシャツを剥がれる。

藍崎のまだ濡れた髪から水滴が飛び散り、僕の裸の胸にかかった。

その冷たさに小さくカラダが跳ねる。

「なんで、こんな……」

「わかんないか?」

「わかんないよっ!」

なんで怒ってるんだ。僕はむしろ被害者じゃないか。

必死に抵抗すると、藍崎の手が止まった。

目が、怖い。

いつもの比じゃないくらい。

「……アイツらと一緒にいたかったのか」

「え……?」

アイツら、というのがさっきのお姉さんたちを指しているのはわかる。

でも、なぜそんなに怒るのかがわからない。

「声かけられて嬉しかったのか?」

「ちっ、違う!困ったけど……嬉しくなんか……」

まぁ、本当は少しだけ嬉しかった、ですけど。

でも藍崎だっていっぱい声かけられてたし……なんか不公平な気がする……

そんな不満げな僕に気づいたのか、藍崎が小さくため息をついた。

「……お前の教育を間違ってたな………あんなヌルいやり方じゃ駄目だった」

「どういう、意味?」

「これからはもっと、お前は俺のモノだってことをわからせてやらないといけない、ってことだ」

昨夜とは反対の、氷のように冷たく欲情した目がそこにあった。





「なにこれっ……やだ!とってよ!」

広いソファの上で僕は後ろ手に手錠をかけられていた。

藍崎が買ってきたあの黒い紙袋から取り出したものだ。

拘束部分にはゴムが使われているものの、しっかりとした造りのそれはいくら引っ張ろうとまったく千切れない。

そういえば藍崎に最初に犯されたときも、こうして自由を奪われた。

忘れかけていたあの恐怖が一気に蘇る。

「いたっ……痛いっ!」

手を繋がれたまま背もたれに押しつけられ、力任せに両脚を開かれる。

いわやるM字開脚というやつだ。

ジーンズはもうとっくに剥がされていて、僕の下肢を覆うものはなにもない。

恥ずかしい所が床に膝をつく藍崎の前にすべて晒され、羞恥に憤死してしまいそうだ。

自分で脚を開かされたことはあっても、こんなに無理矢理されたことはなかった。

純粋な恐怖で涙が溢れた。

「………泣くなよ。気持ちいいことして欲しいんだろ……?」

「いやっ!……とってよ、お願い……」

こんなにひどいことをしているくせに、藍崎の僕を撫でる手は優しい。

頬を撫で、胸の中央に指を滑らせていく。

そして僕の股間へ指を這わせた。

「あっ………ぁ……」

恐怖に縮こまっているペニスを優しい指先がくすぐる。

自分の意志とは関係なく、直接的な刺激に内腿が震える。

「ここも………今日はたっぷり苛めてやる……お前のカラダが俺無しじゃいられなくなるくらい、たっぷり……」

「はっ、あっ……やぁっ……」

爪の先の愛撫で少し頭をもたげた僕のペニスを、今度は手のひらを使って擦りあげる。

必死に抵抗すれば脚だって閉じられたはずなのに、僕の体は動かない。

さっきからある一言が頭の中を駆け巡っているから。

『お前は俺のものだ』

そんな傲慢な言葉がなぜか離れない。

それが自分の境遇に対する絶望によるものなのか、それとも別のなにかなのかもわからない。

「ふぅんっ……あ、あん……」

僕の性器がほぼ天を向いてきたとき、藍崎はまたあの黒い袋の中から何かを取りだした。

パッケージの中から現れたそれは、いくらそういう経験の少ない僕にもわかる。

ローター。ピンク色の親指サイズの。

「待って!それ、なんでっ」

「買ってきたんだよ。いつか使おうと思ってな。コレだけじゃない。バイブも、リングも、媚薬入りのローションも」

そう言って次々と袋から取りだしたものを床に並べていく。

それらのあまりに卑猥な色に、目眩がしてくる。

「言ったろ?今日はたっぷり苛めてやるって……」

さすがに腰を捩って逃げようとするが、ペニスを強く握られて動けなくなる。

そしてその勃ちあがったペニスに真新しいリングが填められた。

「あっ!」

「まずはローターかな」

手にとったローターに繋がったコードの先にコントローラーがある。

藍崎がそれを押した。

ヴィイイイイイイイイ………

強い羽音のような耳障りな音が聞こえ、目には見えないほどの細かさでローターが振動する。

そしてそれは無情にも、ソファの上で必死にカラダを反らす僕の乳首に押し当てられた。

「あっ!あっ!やっ、やだっ!!」

予想もしなかったほどの強い刺激に腰が跳ねる。

激しく振動するローターは僕の固くしこった乳首を震わせ、今度は赤く膨らんだ先端だけを掠るように当てられる。

チッ、チッ、と乳首を弾く小さな音がいやらしい。

「ひんっ!あんっ!ふあっ………あ、ああっ!」

動けないカラダは少しも快感を逃がしてはくれない。

コリコリとローターが縦横無尽に乳首を責め、跳ねるカラダに合わせてペニスがぷるぷる揺れる。

ローターで責められていない方の乳首は藍崎の指が弄び、爪で弾かれる。

「んんっ!ふんうっ!」

「声、出せよ。気持ちいいんだろ?」

「ふんんっ!」

ブンブン首を振る。

こんな玩具で弄ばれて感じるなんて認めたくなかった。

そんな僕に藍崎は笑い、乳首からローターを離す。

そして卵のようなそれをゆっくりと舌で舐ると、反対の手で僕のペニスを握り、軽く濡らしたローターをその先端に押し当てた。

「ひいいっ!!ぁああああっ!!」

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ………

跳ね上がる腰はそのままに、握った肉茎だけはしっかりと固定し、どんどん蜜を溢れさせる鈴口をローターで掻き回す。

それは神経が焼き切れそうなほどの快感で、僕は飲み込みきれない涎が口元を伝うのがわかっても、口を閉じることができなかった。

「すごいな……まだ溢れてくる」

僕の乱れように藍崎も興奮したのか、掠れた声で耳元に囁かれた。

ローターは窪みを掻き回し、ゆっくりと裏筋を往復して、根元に揺れる左右の陰嚢を転がした。

袋を刺激されれば、吐き出せない精液がぐるぐると暴れてツラい。

それを繰り返されれば僕のペニスはまったく精液を吐き出していないにも関わらず、滲み出てくる先走りでびしょびしょになった。

「先っぽ気持ちいいか……?おちんちん苛められて嬉しいだろ?」

「うっ……あああっ!!はぁんっ!!」

そんなことないと言いたいのに、だらしなく開ききった口から漏れるのは喘ぎ声だけ。

根元から先端までをローターが往復し、敏感な粘膜が現れた亀頭をグシュグシュと掻き回す。

脚がビクビク跳ね上がり、革のソファに打ちつけられる音がする。

しばらくそうやって苛められ、受け止めきれない快楽に僕の意識が朦朧としてきた頃、今度は先走りの流れ込んだ後孔の入り口を撫でられた。

「んんぅ………ふっ……あんっ」

自分でもその入り口がヒクヒクしているのがわかる。

僕のカラダはもう前だけの刺激には耐えられなくなっているのだ。

いつの間にかローターは僕のペニスから離され、ぐしょぐしょに濡れたまま床に転がっていた。

「ココもこんなに欲しがって……可哀想に」

「……ぃひんっ!!」

完全に弛緩した穴に、いきなり指が二本入れられた。

ちゅぽちゅぽといやらしい音をたてて嬉しそうに穴が指を呑み込んでいく。

やがてその指はすっかり覚えた僕の前立腺を挟みあげ、コリコリと揺さぶった。

リングで射精を止められたままソコを弄られれば、もう僕は抵抗することすら忘れてひたすら精液を出したいと乞うしかない。

「ふああっ……おね、ああっ、おねが、いっ……!」

呑み込んだ指を前立腺に当てようと腰をくねらせて懇願するも、藍崎はまるで聞いていない様子でまた何かを手に取った。

次に現れた物を見て、僕は恐怖に震え上がった。

「いっ、いやあっ!そんなの、入らないっ……!」

「さんざん俺の銜えてんだ。入るに決まってんだろ」

クスクスと無慈悲に笑う藍崎のその手には、目を覆いたくなるほどグロテスクなピンクのバイブが握られていた。

「これくらいの大きさがないと、淫乱なお前は満足できないだろ?」

カチッ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ…

無数の瘤で覆われたバイブの亀頭部分が、藍崎が持ち手のスイッチを入れた途端にブルブルと激しく震えだす。

あんなもので気持ちいいところを擦られたら……

僕は想像しただけでカラダの奥が痺れていくのを感じた。

「そんなに期待した顔して……安心しろ……気が狂うくらい気持ちよくしてやるよ」

「っぁ……!」

ひくつく蕾に押し当てられたバイブの先端をくちゅくちゅと揺らされ、無意識にソレを呑み込もうと呼吸が深くなる。

そんな僕のカラダを嘲笑うように、藍崎は一気にバイブを突き入れた。

「いっ…きゃああああっ!!」

「………力、抜け」

「やっ!だ、だめぇ……!」

ずっ、ずっ、と冷たい無機物が穴を犯していく。

力を抜こうと努力していた僕の後孔は、何度目かの突き入れで根元までバイブを受け入れてしまった。

「入った…」

満足そうに藍崎が呟く。

そして切っていたスイッチをためらいなく入れた。

ヴジュジュジュジュジュジュ!

「ひぁやああぁああ、んあああっ、あ、あ、あああ……!」

前立腺を擦りあげ、瘤のついた亀頭部分が中をめちゃくちゃに掻き回す。

あまりに激しい振動に痛みすら感じてもおかしくないはずなのに、僕の内壁は快感だけを貪欲に拾い上げる。

頭の中が真っ白になって、締められたままのペニスの先から精液が少しずつ噴射し始めた。

もう声は意味をなさず、ただ息を吸うだけで精一杯。

やがて持ち手部分を掴んでいた藍崎の手がバイブを前後に抜き差しし始めると、縛られた手首の先で十本の指がソファにきつく爪をたてる。

怖い。この強すぎる快楽と藍崎が怖い。

バイブは今度は回転するように中を蹂躙し、前立腺をめちゃくちゃに押し潰す。

続いて穴から抜けてしまうのではないかと思うほど引っ張り出され、僕が息を吐いた途端にまた最奥まで突き入れられた。

「きゃあああああっ!?」

終わりのない快楽に意識が薄れていく中で、次第にある想いだけが頭の中を浸蝕していく。

タリナイ。

ネツガ、タリナイ……!

途切れ途切れの息の合間に、僕は必死に口を開いた。

「んううっ!あっ…な、あ、な、る……ひ…!」

「どうした、健多……」

バイブで責める手を休めずに藍崎が僕の口元に耳を寄せる。

「こ、コレ……と…め…!」

泣きながら願うと、やっと僕を苛んでいたバイブのスイッチが切られた。

「んっ、はっ、はあっ、ふぅんっ、んっ」

「お望み通り切ってやったぜ?……ほら、何か言いたいんだろ?」

………藍崎はきっとわかってる。

僕が、何を望んでいるかを。

そしてきっと、僕にそう言わせるのが目的だったに違いない。

そう頭ではわかっていても、僕はもう他にこの衝動を抑える術を知らなかった。

「………の……て」

「聞こえない」

グジュッ!と突き刺され、僕の口から小さく悲鳴が上がる。

「あ、ああっ……鳴人のっ……うっ…お、ちんちん……いれ、て……!おねが…ほしいの……なるひと、が、ほしい…!」

こんな冷たい機械じゃなくて、あの熱いモノが欲しい。

狂ってしまうくらいの熱で溶かして。

恥ずかしくて死にそうで。

でも藍崎がどんな顔をしているか気になって、ゆっくりと目を開ける。

すると。

「いくらでも、くれてやるよ……俺だけを……お前は俺だけ受け入れろ」

優しい目の奥の、激しく欲情した光。

ゾクッ、と体中に鳥肌がたった。

こんなに激しい独占欲が自分に向けられている。

それは、恍惚。

まるでこの男のすべてが自分に捧げられたような、そんな錯覚。

「………なるひと」いつも藍崎にそうされるように、甘く名前を呼ぶ。

初めて意識して、この男を煽る。

僕の声に、藍崎が一瞬息をのみ、一気にカラダの中からバイブが引き抜かれた。

「はぁうっ!」

急激な排泄感に腰が跳ねたが、ぽっかりと空いたその穴に、今度は藍崎の熱いモノが容赦なく突き刺さった。

「ぅああああっ!!」

「くっ……!」

途轍もない充足感。

藍崎は僕の開いた太ももを力強く掴むと、さらにソファに押し付けながら体を進めてくる。

バイブで解された蕾は藍崎からすべてを搾り取ろうと収縮する。

前立腺だけじゃない。内壁全体が藍崎を感じて震える。

僕は何度も藍崎の名を呼び、藍崎も譫言のように僕の名前を繰り返す。

パン、パンとお互いの肌が打ちつけられる音にすら耳を犯され、やがてどちらからともなく唇が合わせられた。

「んっ!んんっ!ぁっ……んう、ふ、ん!」

離れてはまた重なる。

あふれる唾液が互いの唇から伸びて落ちる。

藍崎の手が僕のペニスに伸び、じんじんと脈打つソレからじらすようにゆっくりとリングを外す。

そしてそのまま、僕たちは互いを激しく貪り合った。

穴から広がる快楽と擦れる肌と熱とで思考がとろけ、お互いが何度目かの射精をしたとき、僕は意識を手放したのだった。







目が覚めるともう陽は落ちていて、そこはベッドの上だった。

ふと指先に温もりを感じて目を向けると、隣に僕の手を握った藍崎の姿があった。

「なに、してんの……?」

「ん?……別に」

少し笑いながら言う顔は普段とはまるで別人で、反応に困ってしまう。

「健多」

「………なに」

「ごめんな」

「………え?」

それは初めての謝罪。

その瞳はとても寂しそうで。

「なに、謝ってんの……いまさら」

茶化すように言うしかなかった。

その謝罪はさっきの行為に?

それとも、今までのすべてに?

「いまさらだけど。謝りたかった」

きっと謝罪することに慣れていないのだろう。

その不安そうな表情に、怒りなんてどこかにいってしまう。

僕は気づいてしまった。

少なくとも僕のカラダは、藍崎を受け入れ始めているということ。

そして、いま感じた。

カラダだけじゃなく、少しだけ……ほんの少しだけ心も奪われたんじゃないか、と。

こんな気持ちになるのは初めてで、恥ずかしさのあまり悶死してしまいそうだ。

………………でも。

不安そうな藍崎の顔を見ていたら。

「…………よ」

「ん?」

藍崎が聞き返す。

「責任、とれよ!!」

「……………」

思い切って叫んだ僕に、藍崎が沈黙した。

その間がいったいなんなのかわからず、こっちまで困惑する。

「な……なんとか言えよ」

こっちは死ぬほど恥ずかしい思いして言ったのに………

しかし次の瞬間、ヤツの口元がいつものようにいやらしく歪んだ。

後悔したときにはもう遅い。

藍崎は僕の熱い頬に手を添え、息がかかるほど近くで囁いた。

「……責任、とってやるよ。俺のせいで淫乱になったお前が満足するまで、ずっと可愛がってやる」

………………………………もしかしたら僕は、早まったのかもしれない。





Fin.


逆らえない力。
逆らえない声。
逆らえない、気持ち。




続く。
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