健多くん

ソラ

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番外編

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風呂から上がるとすぐに鳴人が入れ替わりに入ってきた。

「ちゃんと髪乾かしとけよ」

「・・・わかってる」

また親みたいなことを言ってくる。

バスルームから出ると、部屋の隅に荷物が置いてあるのに気づいた。

僕が風呂に入ってる間に持ってきてもらったんだろう。

鳴人を待っている間テレビをつける気にもならなくて、何気なく自分の荷物をひっくり返してみる。

確か補習の問題集も一緒に入れておいたはずだから、暇な時間を使って少しでも進めておこうと思ったのだ。

ボストンバックのチャックを開くために鳴人の荷物を少し脇に避けると、その上に黒い箱が置かれているのに気づいた。

カラフルなリボンのかけられたソレは、どう見てもプレゼント。

「これ・・・」

その箱を見た瞬間に、さっきまでの鬱々とした気持ちが吹っ飛んだ。

勘違いなんてことないよな・・・だって明日は僕の誕生日で、鳴人は今日僕の誕生祝いにこの部屋をとってくれたわけだし。

「なにが入ってるんだろ・・・」

好奇心がムクムク湧いてくる。

本当は今すぐ開けて中身を見たい。けど、まだ鳴人の荷物だから開けるのは気が引けるし・・・。

それでもやっぱり気になって、とりあえず箱を手に取ってみる。

意外と軽い。カタカタと音がするから生モノではないみたいだ。

大きさは僕の顔くらいで、軽いモノ。

・・・・さっぱりわからない。

カチャ。

「健多、お前シャワー熱すぎ・・・」

「うわぁッ!?」

いきなりバスルームの扉が開いて、僕と同じバスローブを羽織った鳴人が出てくる。

驚いた僕は思わず持っていた箱を足元に落としてしまった。

毛足の長い絨毯に音もなく箱が着地する。

「えっと、あの、勝手に触ってごめん!」

とりあえず箱を拾ったものの、気まずくて後ろを振り返れない。

「ああ・・・それな」

箱を持ったままその場に固まっていると、鳴人のため息混じりの声が近づいてきた。

「お前に似合うと思って買った。でも考えてみたら本当に喜んでくれるかどうかわからなくなった。だから・・・渡すのが悪いと思って言い出せなかったんだよ」

そんな。

鳴人がそんなこと気にしてたなんて全然わからなかった。

・・・そっか。いつもと違う態度だったのもそのせいだったんだ。

本当に僕を喜ばせたいと思ってくれてる。

そう思うだけですごくあったかい気持ちになった。

「鳴人・・・鳴人からもらうものが嬉しくないはずない」

俯いたままの鳴人の袖を掴むと、鳴人は嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ、ちょっとコレつけてみてくれるか?」

「うん」

鳴人が箱を受け取って僕にリボンを解かせる。

細いリボンは軽く結んであっただけで、あっさりとほどけた。

被せてあった上蓋に手をかけて引っ張り上げる。

「大丈夫だって絶対似合うから。鳴人センスだけはい・・・・・い・・・・・・・・」

箱の中に入っていたモノが目に飛び込んできた。

・・・・・・・・・・・・・・ナニ、コレ?

僕は自分の目を疑った。
いや、自分の頭を疑った。

それくらい衝撃的で、それくらい受け入れがたいモノが見えたからだ。

「そうだな。心配して損した。こう見るとやっぱりお前によく似合う」

鳴人は箱の中身と僕を交互に見ながら満足げに頷く。

僕はまた違う理由で頭がクラクラしてきた。

「えっと、あの・・・・・・・鳴人サン?この箱に入っているモノはナンデスカ?」

黒くて艶があってふわふわでもふもふで、それでいて大きな真っピンクのシリコンのついたコレは。

「なにって・・・見ての通り、猫耳と首輪としっぽバイ、」

「ッざけんなーーーーッ!!!」

僕は箱を鳴人の手からはたき落とした。それも力いっぱい。

考えるのも恐ろしい箱の中身が一直線に絨毯の上に落ちる。

「おい、お前せっかくのプレゼントを」

鳴人が落ちたソレ等を拾い上げ、埃を叩くマネをする。

「なにがプレゼントだコラァ!!完全にアンタの趣味だろうが!!!」

「嬉しくないって?」

「当たり前だ!!」

「俺からのプレゼントでも?」

「だからッ・・・!」

「コレつけてくれたら、さっき店で言ったみたいにお前の好きなように死ぬほど可愛がってやるって言っても?」

ピク。

僕の思考が一瞬停止した。

それを見たいやらしく鳴人が笑う。

鳴人の表情はさっきまでの優しいものとは打って変わって、わが意を得たりとばかりに爛々と輝いていた。

可愛がる・・・死ぬほど・・・・
可愛がる・・・。

・・・・・い、いやいやいや騙されるな松森健多!

そんな手にひっかかるなんて可愛がってほしいって言ってるようなものだ!

そうだ。お前にだって男のプライドがあるだろ。

それを受け入れたらお前も立派な変態だぞ松森健多!!

「・・・もし、つけないって言ったら?」

あくまで強気に出る僕に鳴人は鈴のついた首輪をくるくると指で回す。

チリチリと高い音をたてるその首輪は明らかに人間用の大きさと装飾をされていた。

「せっかくの誕生日を迎える夜にこの部屋で一人で過ごすことになるな」

「くッ・・・・・・・・卑怯者ッ!」

僕だけ残して自分は帰る気か。

信じられない。

知ってたけど・・・コイツが変態だって知ってたけど!!

「ほら、選択肢は2つ。猫耳、首輪、しっぽバイブをつけて一晩中俺に可愛がられるか・・・それともここで1人寂しく眠るか。好きな方を選べ」

ぐ、と腰を抱かれて首輪を喉元につきつけられる。

金色の鈴が天井のライトを反射する眩しさに僕は目を閉じてがっくりと項垂れ、いつもどおりこんな変態に出会ってしまった自分の不幸を呪ったのだった。
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