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番外編
②
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手早くシャワーを浴びて自分をラッピングするなんて一度もやったことないことに悪戦苦闘しながら、それでもなんとかリボンを巻き終わる。
恥ずかしすぎるから自分の姿がうつるようなものは一切見ないで、急いで大きめのガウンを羽織った。
耳まで真っ赤になってソファの上で鳴人が帰るのを待つ。
暖房はきかせてあるけど、火照った素肌に触れる光沢のあるリボンと冬の空気が冷たい。
小さく震えながら、鳴人にどんなお祝いの言葉を送ろうか考えていた。
しばらくして鍵が挿しこまれる音。
重たいマンションの扉が開いて、遠くから肌に刺さるんじゃないかってくらいの冷気が。
「健多?」
靴を見て僕がいるのがわかったのか、呼びかける声がする。
この頃にはもう僕の心臓はバクバクで、本当に口から飛び出てしまうんじゃないかってくらいだった。
鳴人がこの格好を見て引いちゃったらどうしよう。
呆れたら?怒ったら?
こんなどっかの少女マンガみたいなこと、嫌いだったら・・・?
ぎゅっとガウンの端を握りしめて、鳴人が姿を現すのを待っていると。
「え?健多くんいるの?じゃあ私お邪魔だったかな」
・・・・・・・・・・・・・!!!??
こっ、この声は!!
今まで何度か聞いたことのあるその可愛らしい声に、僕の心臓が一瞬で凍りついた。
「ああ。今日の夜は健多の家に行くつもりだったんだけどな。おい健多」
こんなガウン一枚の格好を、鳴人ならともかく夏帆さんに見られるわけにはいかない。
絶対に返事なんかできない。
「いないのか・・・買い物にでも行ってるのかもな」
近づいてくる足音が2つ。
ひとつは鳴人・・・もうひとつは。
「夏帆、すぐにアレ探すからちょっとリビングで待ってろ」
「ッ・・・!!」
思わず叫び出しそうになったのを必死で抑え、僕はソファから飛び降りた。
玄関からは死角になってる背もたれの後ろに飛び込んだ瞬間、向こうから夏帆さんと鳴人の姿が。
危なかった・・・いや、今も危なすぎる!!
ソファと壁の間で息を殺して縮こまる。
悲しいかな小柄な僕はそれだけですっぽりと姿を隠すことができた。
「ホント、いないね」
頭上から夏帆さんの声がする。
どうやらバレてないみたいだ。
聞き慣れた鳴人の足音が寝室の方に消えて、部屋には僕と夏帆さんだけになった。
もちろん隠れてる僕は夏帆さんの様子を見ることはできないし、いつ見つかってしまうかわからないからドキドキする。
すると突然、背中を預けてるソファが動いた。
「!」
びっくりして振り返れば花のような優しい香りが鼻をくすぐる。
小さな後頭部が見えて、夏帆さんがソファに座ったんだとわかった。
さっきよりも小さくなって見つからないことを祈る。
耳だけすまして様子を伺うと、彼女は何やらガサガサ音がするものを触っていた。
それがなんなのかわからないうちに鳴人が帰ってきた気配がした。
「コレだろ?お前の言ってたヤツ」
「え?あ、うんうん。ありがと」
なんだか慌てた様子の声。
鳴人もそれを不思議に思ったようだ。
「どうした?挙動不審だな」
「そんなことないけど」
「言いたいことがあるならはっきり言えよ。それに渡したいものがあるなら、さっさと渡せ」
「・・・ホント鳴人って昔から変わってない。普通そういうことはわかってても黙ってるもんでしょ?」
恥ずかしすぎるから自分の姿がうつるようなものは一切見ないで、急いで大きめのガウンを羽織った。
耳まで真っ赤になってソファの上で鳴人が帰るのを待つ。
暖房はきかせてあるけど、火照った素肌に触れる光沢のあるリボンと冬の空気が冷たい。
小さく震えながら、鳴人にどんなお祝いの言葉を送ろうか考えていた。
しばらくして鍵が挿しこまれる音。
重たいマンションの扉が開いて、遠くから肌に刺さるんじゃないかってくらいの冷気が。
「健多?」
靴を見て僕がいるのがわかったのか、呼びかける声がする。
この頃にはもう僕の心臓はバクバクで、本当に口から飛び出てしまうんじゃないかってくらいだった。
鳴人がこの格好を見て引いちゃったらどうしよう。
呆れたら?怒ったら?
こんなどっかの少女マンガみたいなこと、嫌いだったら・・・?
ぎゅっとガウンの端を握りしめて、鳴人が姿を現すのを待っていると。
「え?健多くんいるの?じゃあ私お邪魔だったかな」
・・・・・・・・・・・・・!!!??
こっ、この声は!!
今まで何度か聞いたことのあるその可愛らしい声に、僕の心臓が一瞬で凍りついた。
「ああ。今日の夜は健多の家に行くつもりだったんだけどな。おい健多」
こんなガウン一枚の格好を、鳴人ならともかく夏帆さんに見られるわけにはいかない。
絶対に返事なんかできない。
「いないのか・・・買い物にでも行ってるのかもな」
近づいてくる足音が2つ。
ひとつは鳴人・・・もうひとつは。
「夏帆、すぐにアレ探すからちょっとリビングで待ってろ」
「ッ・・・!!」
思わず叫び出しそうになったのを必死で抑え、僕はソファから飛び降りた。
玄関からは死角になってる背もたれの後ろに飛び込んだ瞬間、向こうから夏帆さんと鳴人の姿が。
危なかった・・・いや、今も危なすぎる!!
ソファと壁の間で息を殺して縮こまる。
悲しいかな小柄な僕はそれだけですっぽりと姿を隠すことができた。
「ホント、いないね」
頭上から夏帆さんの声がする。
どうやらバレてないみたいだ。
聞き慣れた鳴人の足音が寝室の方に消えて、部屋には僕と夏帆さんだけになった。
もちろん隠れてる僕は夏帆さんの様子を見ることはできないし、いつ見つかってしまうかわからないからドキドキする。
すると突然、背中を預けてるソファが動いた。
「!」
びっくりして振り返れば花のような優しい香りが鼻をくすぐる。
小さな後頭部が見えて、夏帆さんがソファに座ったんだとわかった。
さっきよりも小さくなって見つからないことを祈る。
耳だけすまして様子を伺うと、彼女は何やらガサガサ音がするものを触っていた。
それがなんなのかわからないうちに鳴人が帰ってきた気配がした。
「コレだろ?お前の言ってたヤツ」
「え?あ、うんうん。ありがと」
なんだか慌てた様子の声。
鳴人もそれを不思議に思ったようだ。
「どうした?挙動不審だな」
「そんなことないけど」
「言いたいことがあるならはっきり言えよ。それに渡したいものがあるなら、さっさと渡せ」
「・・・ホント鳴人って昔から変わってない。普通そういうことはわかってても黙ってるもんでしょ?」
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