50 / 88
本編
49.自覚・前(side.タツ)
しおりを挟む
毎年うちの居酒屋は、大晦日になると客がいなくなる。
客層が中高年だからだろう、常連客のほとんどは家族と過ごすらしい。
一応営業はしているものの今日はもう暖簾をしまっても良いのかもしれない。
そんなことを思っていると、店内に突如明るい声が響いた。
「あ、竜也さんいんじゃん! ラッキー!」
「え……、あれ芳樹? 何だお前、実家帰ってないのか?」
「いやあ、研究終わんなくて帰ってる場合じゃなくてさ……アハハ、もう辛い」
「大変だなー、大学院生も。ほら、何飲む?」
「生で! 後は……んー、何が良いかな……」
「つくねあるぞ?」
「あ、それがいい!」
「了解! ちょっと待ってな。今持ってくるから」
やつれた顔で入ってきたのは、うちでは珍しい学生の常連である芳樹だ。
実家が飛行機で行くような距離にあるこいつは、犬のように人懐っこくさびしがり屋で、だが頭は大層良いらしい。
まあ、そうじゃなきゃ国立の大学院生なんかやってないだろう。
たまに後輩も連れてきてくれる可愛い奴だった。
どうにも俺に懐いてくれたらしく、暇と金ができればよくここへとやって来てくれる。
ちなみに料理なんて全くできなかった頃の俺の実験台をやってくれたのもこいつだった。
それももう3年ぐらい前の話だが。
「ああ、なんか騒がしいと思ったら犬っころまたいんのか」
「犬っころって! オーナー酷い! 俺一応客!」
「あれまー、ワンちゃん今日も来てくれたのかい? ありがとうね」
「あ、ママさん! 聞いてよ、オーナーってば俺のこと犬っころって言うんだよ」
「……ワンちゃんは良くて犬っころは嫌なのか」
ケンさんも雅さんも嬉しそうに構うあたり、こいつはやっぱり愛されキャラなんだろう。
静まり返っていた店内が途端に華やぐ。
釣られるように俺もまた笑っていた。
弟のような、そんな存在なのかもしれない。
「……うるさいのがいる」
「なんだシュン、お前も来たのか! 一緒に飲もうぜ、お前もう成人してんだよな?」
「……まあ、いいけど」
「可愛い奴め、兄さんが奢ってやる」
「……学生が奢れるほど金あるのか?」
「お前も学生だろーが、任せろよ。家庭教師って結構儲かるんだぜ?」
口数の少ないシュン相手でも構わず巻き込む芳樹。
シュンもシュンで芳樹のことを嫌いではないらしく大人しく横の席に座る。
本当、一気に賑やかになったな。
そう思いながらジョッキを芳樹の前に出すと、なぜか今度は俺がケンさんから頭を叩かれた。
「いった、何? 何かあった?」
「お前も座れ」
「は? でも」
「客なんざこの犬っころだけなんだ。お前、芸音祭見るんだろ」
「いや、録画してるし。第一いま仕事中……」
「良いっつの。こんな時まで真面目に仕事すんな」
「……真面目に働くなって言う雇い主そうそういないよな」
よく分からないケンさんの理屈に首を傾げる。
しかしこう言い出した時のケンさんが頑固であることを知っているから、言われるがままカウンターに腰を下ろした。
すると横で座る芳樹が嬉しそうに笑う。
……可愛い奴め。
思わず頭を撫でそうになった。
「やっぱり芸音祭チェックしてんだな、竜也さん。今年はどんなのが流行ってんの?」
にこにこと笑いながら俺に合わせた話題を持ってくる芳樹。さぞかしモテるだろうなとどうでも良いことを考えながら、今年の音楽業界を振り返る。
芳樹自体はテレビを見ないタイプの人間だ。
大学生になってからは研究やらネットやらで忙しく興味もそんなに湧かないと言っていた。
俺がアイドルをしていた時こいつは19歳なりたてで、だからアイドル時代の俺を芳樹は知らない。
流石にフォレストと言う名前くらいは知っていたらしく、俺が昔そこにいたのだと教えると驚いていたくらいだ。
それまではただ音楽を趣味でやる兄さんくらいの認識しかなかったらしい。
「今年はP-LINKってアイドルとあと雫葵ってシンガーソングライターの曲がヒットしたな」
「うへえ、何か昨年は違うアイドル流行ってなかった? 流れはやっ、俺ついてけないわ」
素直な芳樹の言葉に苦笑してしまった。
流れのはやい芸能界の中でも特にアイドルは激動だ、芳樹の言うことも最もだろう。
かつての仲間たちがいる世界は相変わらず生存競争が激しい。
その中で堂々とトリを務めるのだから流石だ。
……本当、随分と遠くに行ってしまった。
追い付けるだろうか、ここからでも。
弱気になりそうになる自分に、首を振る。
いや、そうじゃなかった。
追い付いてやる。俺は、大丈夫だ。
清々しくそう思えている自分の変化が少し誇らしい。
「……あと奏。今年が初だったと思う」
声が届いて、一瞬何のことかと顔を上げればシュンがぽつりとテレビを見ながら焼酎を飲んでいた。
……渋いな、酒の選択が。
そんなことを思いながらも前後の会話を思い出し、「ああ」と俺も同調する。
「あれ、でも初だっけ? なんか随分前から騒がれてるから2回目くらいに思ってたわ」
「ああ、奏なら俺も知ってる! 好きな奴が同じ研究室にいるんだよ、あとドラマ好きな奴も」
「ドラマ……ああトクカだっけ」
「そう、それそれ。俺今年覚えた曲それくらいかも。めっちゃ流行ったよな」
どうやら芳樹も奏のことは知っていたらしい。
確かに今年の売れ方はすごかったもんなと思い返す。
元々人気のあるアーティストではあった。
2人組のユニットとは聞いていたが、表に出てくるのはチトセという少年だけ。
相方のちぃという人物は名前だけが独り歩きしている状態だ。
デビュー当時は久々に本格派の大型新人が来たと騒がれていたと思う。
『こいつそこまで飛びぬけて上手くはねえが、この歳でよくここまで音を理解してんな』
前に一度チトセを見てケンさんがそう言っていた。
音楽に関してだけは異様にシビアなケンさんが一目で誉め言葉を言うなんて珍しいから覚えている。
正直俺からしたらチトセの歌は十分すぎるほど上手く感じたが。
十代であれだけの歌唱力と器用さがあるのだ、そりゃ売れて当然だろう。
しかしケンさんの目から見るチトセは、また違ったようだ。
チトセの歌はそこまで上手いというようなものではない。
ただ曲に対する理解が深く、曲自体も本人の声質や性格によく合っている。
世界観が出来ているから馴染みが良いのだと。
『ほら、よくあんだろ。そんなに上手くもないのに、そいつ以外が歌うと何か違和感あるような時。表現力ってよく言われてるがな、案外ないがしろにする奴多いんだよな。こいつはそこのとこよく分かってる』
だから売れてんだなと、そうケンさんは言っていた。
ケンさんが興味をもって特定のアーティストを語るなど滅多にしないから、印象に残っている。
「お、奏出てきてんじゃん! 音量上げて良い?」
「はは、珍しいな芳樹がそうなるのも。ほら、リモコン」
「やった!」
話題に上った後で酒の力も手伝い芳樹は陽気にテレビの音量を上げていく。
本当に素直な奴だなと笑いながら、つられるよう俺も視線をテレビへ向けた。
そうして流れてくるのは、今年大ヒットを飛ばした奏の曲だ。
「え……」
思考が停止したのは、次の瞬間だった。
思わず声も漏れていただろう。
信じられない思いでテレビの向こうを見つめる。
「……そういうことか」
気付いたのは、シュンも同じだったようだ。
ひどく納得したように呟き、細く息を吐き出している。
「え、なにどうしたの2人共」
芳樹が分からないとばかりに俺達を見ているが、構う余裕がなかった。
あまりに衝撃的で、しかし耳に届いてくるその音に納得してしまって、言葉がもつれる。
『私、頑張りますから。だから、見てて下さい』
思い出したのは、少し前に聞いたその言葉。
あんなに緊張して、気合をいれて、俺達に告げたあの子の言葉。
その意味を、やっと俺は理解する。
チトセの後ろにいるフワフワな髪の女性。
アップで映るチトセの陰に隠れおまけに横を向いてピアノを弾いているから顔なんてよく見えない。
それでも音を聴けば分かるのだ。
一度だけではあったが、その音を確かに俺は聴いていたから。
あの瞬間を忘れることなど、できない。
「チエ……?」
耳に届いたのは、紛れもなく彼女の奏でる音だった。
ピアノの音の違いなんてそんなに分かる方じゃないのに、こればかりははっきりと分かる。
あの子の心のこもった音は真っ直ぐに届く。
一生懸命、そして天才的に曲を盛りたてるあの子のピアノの音。
忘れるはずがない。
時も忘れてテレビに神経を集中させる俺達。
曲は中盤、サビに入るところ。
すると今度はピアノだけじゃなく声も届いてきた。
それは今まで誰も聴いたことのない奏のコーラスだ。
「……すげぇ」
一番音楽と縁遠い芳樹が思わずといった形で呟いた。
……それほど圧倒的だったのだ。
テレビ越しだと言うのに、あまりに圧が強くて目が離せない。
その場の全てを今、奏が支配している。
今までだって、奏は十分すごかった。
コーラスなんてなくても、チトセの歌ひとつでも多くのファンを魅了してきたのだ。
一切手抜きなしで力強く魅力的なステージを見せてきたチトセ。
しかしそんな今まですらも霞むほどの歌を今見せている。
ハモリひとつ加わるだけで格が違うとそう思わされるほどの違いだった。
チトセってこんなにすごかったのかと、思わず二度見してしまうほど。
「チエが、押し上げているのか」
チトセの相方として。ちぃとして。
頭の理解が、そこでようやく現実に追い付く。
どうやら俺らがライバル宣言した相手は、とんでもない金の卵だったらしい。
ただただテレビ越しで繰り広げられる圧巻のパフォーマンスに、俺達は言葉を失っていた。
客層が中高年だからだろう、常連客のほとんどは家族と過ごすらしい。
一応営業はしているものの今日はもう暖簾をしまっても良いのかもしれない。
そんなことを思っていると、店内に突如明るい声が響いた。
「あ、竜也さんいんじゃん! ラッキー!」
「え……、あれ芳樹? 何だお前、実家帰ってないのか?」
「いやあ、研究終わんなくて帰ってる場合じゃなくてさ……アハハ、もう辛い」
「大変だなー、大学院生も。ほら、何飲む?」
「生で! 後は……んー、何が良いかな……」
「つくねあるぞ?」
「あ、それがいい!」
「了解! ちょっと待ってな。今持ってくるから」
やつれた顔で入ってきたのは、うちでは珍しい学生の常連である芳樹だ。
実家が飛行機で行くような距離にあるこいつは、犬のように人懐っこくさびしがり屋で、だが頭は大層良いらしい。
まあ、そうじゃなきゃ国立の大学院生なんかやってないだろう。
たまに後輩も連れてきてくれる可愛い奴だった。
どうにも俺に懐いてくれたらしく、暇と金ができればよくここへとやって来てくれる。
ちなみに料理なんて全くできなかった頃の俺の実験台をやってくれたのもこいつだった。
それももう3年ぐらい前の話だが。
「ああ、なんか騒がしいと思ったら犬っころまたいんのか」
「犬っころって! オーナー酷い! 俺一応客!」
「あれまー、ワンちゃん今日も来てくれたのかい? ありがとうね」
「あ、ママさん! 聞いてよ、オーナーってば俺のこと犬っころって言うんだよ」
「……ワンちゃんは良くて犬っころは嫌なのか」
ケンさんも雅さんも嬉しそうに構うあたり、こいつはやっぱり愛されキャラなんだろう。
静まり返っていた店内が途端に華やぐ。
釣られるように俺もまた笑っていた。
弟のような、そんな存在なのかもしれない。
「……うるさいのがいる」
「なんだシュン、お前も来たのか! 一緒に飲もうぜ、お前もう成人してんだよな?」
「……まあ、いいけど」
「可愛い奴め、兄さんが奢ってやる」
「……学生が奢れるほど金あるのか?」
「お前も学生だろーが、任せろよ。家庭教師って結構儲かるんだぜ?」
口数の少ないシュン相手でも構わず巻き込む芳樹。
シュンもシュンで芳樹のことを嫌いではないらしく大人しく横の席に座る。
本当、一気に賑やかになったな。
そう思いながらジョッキを芳樹の前に出すと、なぜか今度は俺がケンさんから頭を叩かれた。
「いった、何? 何かあった?」
「お前も座れ」
「は? でも」
「客なんざこの犬っころだけなんだ。お前、芸音祭見るんだろ」
「いや、録画してるし。第一いま仕事中……」
「良いっつの。こんな時まで真面目に仕事すんな」
「……真面目に働くなって言う雇い主そうそういないよな」
よく分からないケンさんの理屈に首を傾げる。
しかしこう言い出した時のケンさんが頑固であることを知っているから、言われるがままカウンターに腰を下ろした。
すると横で座る芳樹が嬉しそうに笑う。
……可愛い奴め。
思わず頭を撫でそうになった。
「やっぱり芸音祭チェックしてんだな、竜也さん。今年はどんなのが流行ってんの?」
にこにこと笑いながら俺に合わせた話題を持ってくる芳樹。さぞかしモテるだろうなとどうでも良いことを考えながら、今年の音楽業界を振り返る。
芳樹自体はテレビを見ないタイプの人間だ。
大学生になってからは研究やらネットやらで忙しく興味もそんなに湧かないと言っていた。
俺がアイドルをしていた時こいつは19歳なりたてで、だからアイドル時代の俺を芳樹は知らない。
流石にフォレストと言う名前くらいは知っていたらしく、俺が昔そこにいたのだと教えると驚いていたくらいだ。
それまではただ音楽を趣味でやる兄さんくらいの認識しかなかったらしい。
「今年はP-LINKってアイドルとあと雫葵ってシンガーソングライターの曲がヒットしたな」
「うへえ、何か昨年は違うアイドル流行ってなかった? 流れはやっ、俺ついてけないわ」
素直な芳樹の言葉に苦笑してしまった。
流れのはやい芸能界の中でも特にアイドルは激動だ、芳樹の言うことも最もだろう。
かつての仲間たちがいる世界は相変わらず生存競争が激しい。
その中で堂々とトリを務めるのだから流石だ。
……本当、随分と遠くに行ってしまった。
追い付けるだろうか、ここからでも。
弱気になりそうになる自分に、首を振る。
いや、そうじゃなかった。
追い付いてやる。俺は、大丈夫だ。
清々しくそう思えている自分の変化が少し誇らしい。
「……あと奏。今年が初だったと思う」
声が届いて、一瞬何のことかと顔を上げればシュンがぽつりとテレビを見ながら焼酎を飲んでいた。
……渋いな、酒の選択が。
そんなことを思いながらも前後の会話を思い出し、「ああ」と俺も同調する。
「あれ、でも初だっけ? なんか随分前から騒がれてるから2回目くらいに思ってたわ」
「ああ、奏なら俺も知ってる! 好きな奴が同じ研究室にいるんだよ、あとドラマ好きな奴も」
「ドラマ……ああトクカだっけ」
「そう、それそれ。俺今年覚えた曲それくらいかも。めっちゃ流行ったよな」
どうやら芳樹も奏のことは知っていたらしい。
確かに今年の売れ方はすごかったもんなと思い返す。
元々人気のあるアーティストではあった。
2人組のユニットとは聞いていたが、表に出てくるのはチトセという少年だけ。
相方のちぃという人物は名前だけが独り歩きしている状態だ。
デビュー当時は久々に本格派の大型新人が来たと騒がれていたと思う。
『こいつそこまで飛びぬけて上手くはねえが、この歳でよくここまで音を理解してんな』
前に一度チトセを見てケンさんがそう言っていた。
音楽に関してだけは異様にシビアなケンさんが一目で誉め言葉を言うなんて珍しいから覚えている。
正直俺からしたらチトセの歌は十分すぎるほど上手く感じたが。
十代であれだけの歌唱力と器用さがあるのだ、そりゃ売れて当然だろう。
しかしケンさんの目から見るチトセは、また違ったようだ。
チトセの歌はそこまで上手いというようなものではない。
ただ曲に対する理解が深く、曲自体も本人の声質や性格によく合っている。
世界観が出来ているから馴染みが良いのだと。
『ほら、よくあんだろ。そんなに上手くもないのに、そいつ以外が歌うと何か違和感あるような時。表現力ってよく言われてるがな、案外ないがしろにする奴多いんだよな。こいつはそこのとこよく分かってる』
だから売れてんだなと、そうケンさんは言っていた。
ケンさんが興味をもって特定のアーティストを語るなど滅多にしないから、印象に残っている。
「お、奏出てきてんじゃん! 音量上げて良い?」
「はは、珍しいな芳樹がそうなるのも。ほら、リモコン」
「やった!」
話題に上った後で酒の力も手伝い芳樹は陽気にテレビの音量を上げていく。
本当に素直な奴だなと笑いながら、つられるよう俺も視線をテレビへ向けた。
そうして流れてくるのは、今年大ヒットを飛ばした奏の曲だ。
「え……」
思考が停止したのは、次の瞬間だった。
思わず声も漏れていただろう。
信じられない思いでテレビの向こうを見つめる。
「……そういうことか」
気付いたのは、シュンも同じだったようだ。
ひどく納得したように呟き、細く息を吐き出している。
「え、なにどうしたの2人共」
芳樹が分からないとばかりに俺達を見ているが、構う余裕がなかった。
あまりに衝撃的で、しかし耳に届いてくるその音に納得してしまって、言葉がもつれる。
『私、頑張りますから。だから、見てて下さい』
思い出したのは、少し前に聞いたその言葉。
あんなに緊張して、気合をいれて、俺達に告げたあの子の言葉。
その意味を、やっと俺は理解する。
チトセの後ろにいるフワフワな髪の女性。
アップで映るチトセの陰に隠れおまけに横を向いてピアノを弾いているから顔なんてよく見えない。
それでも音を聴けば分かるのだ。
一度だけではあったが、その音を確かに俺は聴いていたから。
あの瞬間を忘れることなど、できない。
「チエ……?」
耳に届いたのは、紛れもなく彼女の奏でる音だった。
ピアノの音の違いなんてそんなに分かる方じゃないのに、こればかりははっきりと分かる。
あの子の心のこもった音は真っ直ぐに届く。
一生懸命、そして天才的に曲を盛りたてるあの子のピアノの音。
忘れるはずがない。
時も忘れてテレビに神経を集中させる俺達。
曲は中盤、サビに入るところ。
すると今度はピアノだけじゃなく声も届いてきた。
それは今まで誰も聴いたことのない奏のコーラスだ。
「……すげぇ」
一番音楽と縁遠い芳樹が思わずといった形で呟いた。
……それほど圧倒的だったのだ。
テレビ越しだと言うのに、あまりに圧が強くて目が離せない。
その場の全てを今、奏が支配している。
今までだって、奏は十分すごかった。
コーラスなんてなくても、チトセの歌ひとつでも多くのファンを魅了してきたのだ。
一切手抜きなしで力強く魅力的なステージを見せてきたチトセ。
しかしそんな今まですらも霞むほどの歌を今見せている。
ハモリひとつ加わるだけで格が違うとそう思わされるほどの違いだった。
チトセってこんなにすごかったのかと、思わず二度見してしまうほど。
「チエが、押し上げているのか」
チトセの相方として。ちぃとして。
頭の理解が、そこでようやく現実に追い付く。
どうやら俺らがライバル宣言した相手は、とんでもない金の卵だったらしい。
ただただテレビ越しで繰り広げられる圧巻のパフォーマンスに、俺達は言葉を失っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
【完結】元恋人と、今日から同僚です
紗和木 りん
恋愛
女性向けライフスタイル誌・編集部で働く結城真帆(29)。
仕事一筋で生きてきた彼女の前に、ある日突然、五年前に別れた元恋人が現れた。
「今日から、この部署に配属になった」
そう告げたのは、穏やかで理性的な朝倉。
かつて、将来や価値観のすれ違いから別れた相手だ。
仕事として割り切ろうと距離を取る真帆だったが、過去の別れが誤解と説明不足によるものだったことが少しずつ見えてくる。
恋愛から逃げてきた女と、想いを言葉にできなかった男。
仕事も感情も投げ出さず、逃げずに選び直した先にあるのは「やり直し」ではなく……。
元恋人と同僚になった二人。
仕事から始まる新しい恋の物語。
ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]
麻沙綺
恋愛
ごく普通の家庭で育っている女の子のはずが、実は……。
お兄ちゃんの親友に溺愛されるが、それを煩わしいとさえ感じてる主人公。いつしかそれが当たり前に……。
視線がコロコロ変わります。
なろうでもあげていますが、改稿しつつあげていきますので、なろうとは多少異なる部分もあると思いますが、宜しくお願い致します。
幸せのありか
神室さち
恋愛
兄の解雇に伴って、本社に呼び戻された氷川哉(ひかわさい)は兄の仕事の後始末とも言える関係企業の整理合理化を進めていた。
決定を下した日、彼のもとに行野樹理(ゆきのじゅり)と名乗る高校生の少女がやってくる。父親の会社との取引を継続してくれるようにと。
哉は、人生というゲームの余興に、一年以内に哉の提示する再建計画をやり遂げれば、以降も取引を続行することを決める。
担保として、樹理を差し出すのならと。止める両親を振りきり、樹理は彼のもとへ行くことを決意した。
とかなんとか書きつつ、幸せのありかを探すお話。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
自サイトに掲載していた作品を、閉鎖により移行。
視点がちょいちょい変わるので、タイトルに記載。
キリのいいところで切るので各話の文字数は一定ではありません。
ものすごく短いページもあります。サクサク更新する予定。
本日何話目、とかの注意は特に入りません。しおりで対応していただけるとありがたいです。
別小説「やさしいキスの見つけ方」のスピンオフとして生まれた作品ですが、メインは単独でも読めます。
直接的な表現はないので全年齢で公開します。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる