「魔眼持ちは不気味だ!」と家を追い出されましたが新国王も魔眼持ちに決まったようです〜戻ってこいと言われても……もう王宮にいるから手遅れです〜

よどら文鳥

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第一章

開眼と信用

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「気になってたんだけどアンタ、髪の毛で隠している左眼……ひょっとして魔眼?」
「──っ!?」

 髪の毛で隠しているつもりだったが、あっさりと魔眼だとバレてしまった。
 いやでも、よく見なければ気づかないはずだ。
 思わず身構える。

「そ……そうです」

 不安そうに答えた俺に、直ぐにフィリム様は言葉を返してくれた。

「別に責める気は無いわよ。魔眼に対しての偏見はないわ」

 そう告げたフィリム様の後ろには、静かにうなずく執事や使用人たちの姿がある。
 その温かい態度が俺を救ってくれる。
 こんな環境を作り上げたフィリム様になら、魔眼のことも、この先の目的も正直に話しても良いかもしれないと思えた。
 そのためには実際に見せるのが一番早いだろう。

「俺は空間干渉に関する魔眼が使えます。危害を加えるものではありませんので、実際にお見せしたいのですが……」
「危害……良いわよ。発動してみなさい」

 マジックボックスを使った力なら問題ないだろう。
 書庫から持ち出した本を大量に出した。

「先程捕まえた指名手配犯も、目の前にガラクタをマジックボックスから出現させて転ばせました」
「へぇー、なかなか便利そうだし良い魔眼ね」
「ありがとうございます!」

 俺の魔眼が誉められたことが嬉しかった。

「それだけ便利な魔眼を持っているのに、監禁生活を強いられてしまうなんて、家族とそんなに仲悪かったの?」
「魔眼を特に忌み嫌う両親でしたから。母も実の親ではありませんから余計に仕打ちは酷かったかもしれません」
「魔眼を持っているだけで、そこまでされるなんて……私のお母様は……」
「はい?」
「いえ、何でもないわ」

 急にフィリム様の声が小さくなって聞き取れなかった。

「アンタを産んだお母様も魔眼を忌み嫌っているの?」
「いえ、そんな事はありません。母様は俺の唯一の心の拠所でした」
「でした? 今は違うの?」
「母様はもう……」
「そう……」

 暫く無言が続いた。今までは悪い話ばっかりしていたから、俺の方から母様の良かった話をしてみた。
 それにこれは、俺がこの王都に来た目的の話につながるから。

「母様は、俺の魔眼にも肯定的でした。いつの日かきっと魔眼も好かれる世の中になって欲しいと願っていました。最後に俺がお母様から聞いた言葉も、俺の魔眼で、綺麗な世界を作ってね、と」

 フィリム様は椅子から立ち上がり、俺の目の前まで来て両手を俺の肩に乗せてきた。

「良いお母様じゃない! その願い、聞き届けてあげるわ」
「え?」
「世界、とまではいかなくても、今まさにこの国を綺麗にするために動いてるやつがいるの。そいつのところに連れて行ってあげるわ」

 同じような事を考えている人がいるのか。
 俺はその人に会ってみたいと思った。

「誰ですか? その人は」
「新国王に決まった、ヨハネスよ!」
「──!?」

 まさかヨハネス第四王子様の名前が出てくるとは……!

「実は……母様との約束を果たすために、考えもなしに新国王のもとに行きたいと思っていたところでした」
「そう。丁度いいじゃない」

 こともなげにそう言い放ち、フィリム様が笑う。

「……良いんですか? 今日出会ったばかりの得体の知れない俺が、いきなり王子とお会いさせていただけるなんて……」
「新国王が魔眼持ちなのは知ってるわよね? ヨハネスの魔眼は偽りを見抜く【真贋鑑定】。あの能力の前に行きたいというのなら、それだけでもうあんたは得体の知れない男じゃないわ」

 フィリム様が笑いながら話を続けた。

「私だって初対面のアンタの事を全て信じているわけではなかったのよ?」

 それをこうして直接言ってしまうところが、フィリム様の人となりを表している。

「仮にアンタが嘘つきだったらその場で消えてもらって二度と関わらないでしょうし、でも、言っていることが本当なら、私も嬉しいから……」

 何が嬉しいのかは分からないが、俺も嬉しかった。

「寝床無いんでしょ? 今日は客間空いてるから泊まって良いわよ。寝て起きて、朝食を食べたら向かうわよ」
「あ……ありがとうございます!!」

 その後も豪華な食事を堪能させてもらう。
 料理の味がさっきまでより美味しく感じたのはきっと、気のせいではないだろう。

 ♢

「お嬢様。私は失礼ながら、今夜は彼の見張りは続けようかと思いますが」
「話していた感じでは大丈夫だとは思うけど……セバスがそう言うなら。でも、セバス? 無理しないこと」
「お気遣いありがとうございます、お嬢様。ですが国王就任までの間、慎重にならねばならない時期でもあります故」
「そうね……」

 フィリムがうつむきながらこう言う。

「万一の時はで何とかするわ……」
「お嬢様……」

 オッドアイになっている右目を押さえながら、フィリムは静かに決意を固めていた。
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