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ルリナはふかふかベッドで誘惑される
昨日は王宮へ来るようにと言われていたからなんとかなった。
だが、今この時間が過ぎたら私はどこへ行けばいいのだろう……。
そう考えたらなぜか涙がこぼれてきてしまった。
「わかりま……せん」
「そうか……」
そのとき、ニルはポケットの中から布切れを出してきて、それで私の涙をそっと拭いてくれた。
「どうやら私たちが騙されていたのかもしれぬな……」
「はい?」
「いや、こちらの話だ。いずれ答えも出るだろう。ところで、きみが良ければだが、しばらくこの王宮で居候……、いや、王宮で寝泊りをしてもかまわぬぞ」
「え……でも……」
ニル以外の人たちがこわい。
私の変な発言や行動によって変な目で見られたりしたら、ニルにも迷惑をかけてしまうのではないだろうか。
「隣の部屋は空き部屋だ。そこでしばらく閉じこもっているくらいでも構わぬが」
「うーん……」
閉じこもっているということは誰とも接触しないですむのかもしれない。
だとしたら私としては嬉しい。
気持ちが少し揺れてきた。
「私が……いつでもきみに会いにいく」
「う~~ん……」
ニル相手だったらなんとか慣れてきた。
ニルに言葉遣いとか教えてもらえたら嬉しい。
気持ちがまぁまぁ揺れてきた。
「ナツメちゃんといつでも会えるぞ?」
「よろしくお願いします!!」
「はぁ……、本当に私の心が傷がつくよ……」
元気になったナツメちゃんをもう少し見ていたい。
気持ちが一瞬で固まった。
「ともかく、ひとまず部屋の準備をさせよう。荷物は……ないのだろう?」
「あ、これだけ持ってます」
ドレスのポケットに入れていた木の実を出した。
すると、ニルはなんだこれはと言わんばかりの表情をしていた。
「まさか食べるつもりでいたのか?」
「これは美味しいですよ。よかったらニルにあげます」
「いや……遠慮しておく」
このあとの生命線だ。
だがニルが食べるのならあげてもいいと思った。
いらないと言うし、私は大事にポケットの中へ収納した。
「風呂に関しては今日だけは我慢してもらうかもしれない。父上にもまだこのことは報告していないからな……」
「ふろってなんですか?」
「もうよい……。概ねわかった。夜と翌朝には食事を部屋に届けるように指示しておく。部屋の中でゆっくりしてくれたまえ」
「え!?」
「なにか変なことでも言ったか?」
「夜も食事があるんですか!?」
「……なるほど……。これは私の想定よりも重大かもしれんな。王族ともなると朝、昼、そしておやつ、そのあと夜に食事がある。このことをきみが知らないということは訳ありだよくわかった」
ご飯が一日に四回もあるなんて……。
ふと、ナツメちゃんのほうを振り向いた。
『ピッピッピーーー!!』
「言っておくがナツメちゃんの餌は常に用意してある。あいつは自由気ままに食べたいときに食べるからな」
「優しい飼い主に育てられてよかったねーー」
私はナツメちゃんに向かってそう言った。
ニルがまたしてもフッと笑みをこぼしていた。
♢
しばらくニルと会話したあと、隣の部屋へ案内されたのだが、なにをしたら良いのか全くわからない。
ひらひらしたスカートを履いているメイドと呼ばれた人がペコリとお辞儀をしてきた。
「ルリナ様が滞在中の案内役として仕えるツバキと申します」
「案内役?」
「はい。食事の提供から部屋の掃除、その他ルリナ様のお世話をするメイドのようなものです」
「あ、えぇと、よろしくお願いします?」
「まず、そちらがベッド……。えぇ、ごろんと横になって寝る場所になります」
寝る場所まで決まっているらしい。
さっそくベッドに向かってごろんと寝転がってみたが、なんなのだこれは!
「ふっかふか~♪」
「向こう側に用を足す場所と簡易水浴び場、食事用のテーブルがこちらです。なにかあれば申し付けください」
「王宮ってものすごいですね」
「いえ……本来はこれが普通です……」
私にとっては普通どころの話ではない。
天国そのものである。
ひとまず、お言葉に甘えてベッドでゴロンゴロンしてふかふかを楽しんだ。
そして、いつのまにかふかふかの居心地良さで魔法にかけられたかのように寝てしまった。
私はかつてない幸せを経験している気がしていた。
だが、今この時間が過ぎたら私はどこへ行けばいいのだろう……。
そう考えたらなぜか涙がこぼれてきてしまった。
「わかりま……せん」
「そうか……」
そのとき、ニルはポケットの中から布切れを出してきて、それで私の涙をそっと拭いてくれた。
「どうやら私たちが騙されていたのかもしれぬな……」
「はい?」
「いや、こちらの話だ。いずれ答えも出るだろう。ところで、きみが良ければだが、しばらくこの王宮で居候……、いや、王宮で寝泊りをしてもかまわぬぞ」
「え……でも……」
ニル以外の人たちがこわい。
私の変な発言や行動によって変な目で見られたりしたら、ニルにも迷惑をかけてしまうのではないだろうか。
「隣の部屋は空き部屋だ。そこでしばらく閉じこもっているくらいでも構わぬが」
「うーん……」
閉じこもっているということは誰とも接触しないですむのかもしれない。
だとしたら私としては嬉しい。
気持ちが少し揺れてきた。
「私が……いつでもきみに会いにいく」
「う~~ん……」
ニル相手だったらなんとか慣れてきた。
ニルに言葉遣いとか教えてもらえたら嬉しい。
気持ちがまぁまぁ揺れてきた。
「ナツメちゃんといつでも会えるぞ?」
「よろしくお願いします!!」
「はぁ……、本当に私の心が傷がつくよ……」
元気になったナツメちゃんをもう少し見ていたい。
気持ちが一瞬で固まった。
「ともかく、ひとまず部屋の準備をさせよう。荷物は……ないのだろう?」
「あ、これだけ持ってます」
ドレスのポケットに入れていた木の実を出した。
すると、ニルはなんだこれはと言わんばかりの表情をしていた。
「まさか食べるつもりでいたのか?」
「これは美味しいですよ。よかったらニルにあげます」
「いや……遠慮しておく」
このあとの生命線だ。
だがニルが食べるのならあげてもいいと思った。
いらないと言うし、私は大事にポケットの中へ収納した。
「風呂に関しては今日だけは我慢してもらうかもしれない。父上にもまだこのことは報告していないからな……」
「ふろってなんですか?」
「もうよい……。概ねわかった。夜と翌朝には食事を部屋に届けるように指示しておく。部屋の中でゆっくりしてくれたまえ」
「え!?」
「なにか変なことでも言ったか?」
「夜も食事があるんですか!?」
「……なるほど……。これは私の想定よりも重大かもしれんな。王族ともなると朝、昼、そしておやつ、そのあと夜に食事がある。このことをきみが知らないということは訳ありだよくわかった」
ご飯が一日に四回もあるなんて……。
ふと、ナツメちゃんのほうを振り向いた。
『ピッピッピーーー!!』
「言っておくがナツメちゃんの餌は常に用意してある。あいつは自由気ままに食べたいときに食べるからな」
「優しい飼い主に育てられてよかったねーー」
私はナツメちゃんに向かってそう言った。
ニルがまたしてもフッと笑みをこぼしていた。
♢
しばらくニルと会話したあと、隣の部屋へ案内されたのだが、なにをしたら良いのか全くわからない。
ひらひらしたスカートを履いているメイドと呼ばれた人がペコリとお辞儀をしてきた。
「ルリナ様が滞在中の案内役として仕えるツバキと申します」
「案内役?」
「はい。食事の提供から部屋の掃除、その他ルリナ様のお世話をするメイドのようなものです」
「あ、えぇと、よろしくお願いします?」
「まず、そちらがベッド……。えぇ、ごろんと横になって寝る場所になります」
寝る場所まで決まっているらしい。
さっそくベッドに向かってごろんと寝転がってみたが、なんなのだこれは!
「ふっかふか~♪」
「向こう側に用を足す場所と簡易水浴び場、食事用のテーブルがこちらです。なにかあれば申し付けください」
「王宮ってものすごいですね」
「いえ……本来はこれが普通です……」
私にとっては普通どころの話ではない。
天国そのものである。
ひとまず、お言葉に甘えてベッドでゴロンゴロンしてふかふかを楽しんだ。
そして、いつのまにかふかふかの居心地良さで魔法にかけられたかのように寝てしまった。
私はかつてない幸せを経験している気がしていた。
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